SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイトです。ページの先頭です。

SUSTAINABLE BRANDS JAPAN のサイト

ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Life Media, Inc.)

発足10年を迎えシンポジウム開催―PRI責任投資原則

機関投資家ら350人がシンポジウムに参加した

国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した責任投資原則(Principles for Responsible Investment)は、発足して10年を迎えた。PRIは2006年、コフィー・アナン前国際連合事務総長が金融業界に対して提唱したイニシアティブで、機関投資家の意思決定プロセスにESG (環境、社会、ガバナンス) 課題を組み込んだものだ。

日本企業は2015年7月時点で、約30社以上が署名している。2015年9月には年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が署名し話題になった。

11月9日、PRI事務局日本ネットワークは、機関投資家、企業などに向けた責任投資原則(PRI)のシンポジウムを都内で開催した。挨拶に立った金融庁総務企画局の古澤知之審議官は「ソフトローを見直す場として、PRIについての議論に期待している」と話した。

セコム企業年金基金の八木博一顧問は「企業年金基金からみる日本のESG投資」と題して講演した。企業年金基金自体が疲弊している中で、これまでのやり方でよいのだろうかと 疑問を持った時、答えのひとつとしてPRIのESG投資があったという。それまでの短期的運用投資でなく、社会課題解決に目を向け、長期的な運用スタンスを実現することが重要であり、企業年金のステークホルダーに説明することで「持続性」が保たれる、と話した。

セコム企業年金基金は2011年にPRIに署名、2014年日本版スチュワードシップコードに賛同し、2015年には投資ポートフォリオのCO2排出量を毎年測定し情報公開するモントリオール炭素公約(Montreal Carbon Pledge)に賛同を表明している。八木顧問は「世界の状況を把握し、勉強、理解しないと取り残されるだろう」と話した。

学校法人上智学院 財務担当理事補佐を務める引間雅史・上智大学特任教授は、「今までPRIのシンポジウムは海外ゲストが多かったが、今日はオールジャパンのゲストで嬉しい」と話し、日本のPRIの認知度が上がり投資状況が変わりつつあることを示唆した。

「大学年金基金の立場からESG投資に期待すること」と題し、大学基金の経営状況は大変厳しく、18歳人口が激減する「2018年問題」や貧困率が高くなってきていることを危惧していると話した。経営状態が悪ければ、教育パフォーマンスに影響する。その上、気候変動で経済・社会インフラに打撃があれば、経済面へ悪影響があり、社会への不安が募る。結果、日本を担う高度な人材が減る、という中長期の負のスパイラルに陥るのではないかと、危機感を抱いているという。

それらを打破できるのはESGを意識した「ユニバーサルオーナーシップ」の考え方で、欧州でSDGs(持続可能な開発目標)が浸透している根拠だという。「アセットマネージャーに危機感を共有してほしい」と引間教授は話し、企業も同様に危機感を持ち、ユニバーサル投資の理念が浸透しているかどうかがカギになると話した。

年金基金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の水野弘道 理事 兼CIOは、GRIFをアセットオーナーとして直接運用していない「利益相反がない特殊な立場」だと紹介した。運用資金は140兆円で、日本の年金基金の10%ほどだという。

「インベストメントチェーンにおけるWin-Win環境の構築を目指して―スチュワードシップ責任とESGの観点から―」と題して、インベストメントチェーンは5000社ほどあり、ネガティブな企業活動を吸収してしまうこと、長期になればリスクはあることなどを話した。その上で、GRIFは投資先企業と運用受託企業のエンゲージメントを促進し、中長期的な企業価値の高まりと高リターンを期待した「Win-Win」の連鎖を目指しているという。

今年7月に公募した、国内株式を対象とした環境・社会・ガバナンス指数の応募結果に触れ、27のインデックスが提案あり、インデックスを設定することで、日本企業はESGへの取り組みが遅れている、という評価を解消したいと意気込みを語った。

国連グローバルコンパクトの有馬利男・代表理事は「企業のESGへの取り組みとグローバルコンパクト」について講演した。投資家の考え方や消費者のエシカル、フェアトレードへの意識が企業に影響を及ぼすようになり、パラダイムシフトが起きていると話した。

東西冷戦が終わり、グローバリゼーションが始まり、社会全体が発展したが、一方で環境破壊や児童労働が横行した。グローバリゼーションの「光と影」と言われるが、ダボス会議でアナン前事務総長がこのままでよいのだろうかと疑問を呈した。そこから国連や行政だけでは解決できない課題には企業が必要である、という考えが浸透し始めたという。

SDGsは事業活動における「北極星のようなもの」だという。SDGsの企業行動指針となるガイドライン「SDG Compass」に触れ、インサイドアウトだけでは社会課題解決に不十分であり、アウトサイドインで、社会側からみて収益をあげることが必要であるとした。社会課題にあったビジネスモデルになっていなければ、会社は持続しない、と締めくくった。

  • Twitter
  • Facebook
松島 香織 (まつしま・かおり)

企業のCSRや広報・IR部署を経て、SDGs、働き方改革(ダイバーシティ)、地方創生などをテーマに取材中。