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LGBTを巡るトイレの問題、日米で機運高まる

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(C)Torbakhopper rainbow flags : sanfrancisco 2013
レインボーフラッグはLGBT尊重のシンボル

体と心の性が一致しないLGBTの人々に関するトイレ問題に関して、このほどオバマ大統領が、自身が認識する性のトイレ使用を許可する指針を全米の学校に通達した。この問題は、州により対応が異なり全米で議論が過熱していた。日本でもLGBTにおけるトイレ使用についての課題が、LIXILとNPO法人虹色ダイバーシティ(大阪市淀川区)の共同調査で明らかになった。

オバマ大統領が通達「自身が認識する性のトイレ使用を」

米国がLGBT(性的マイノリティ)の人々をめぐるトイレの問題で揺れている。発端は、公共の施設で出生と異なる性別のトイレを使うことを禁止する内容が盛り込まれた州法、いわゆる「トイレ法」が3月ノースカロライナ州で制定されたことに始まる。

オンライン決済サービスを行う大手企業ペイパルは、この法案に意を唱え、同州で展開しようとしていた新たな事業の中止を発表。そのほか、80を超える企業が州知事に対し法律の撤回を求めた。しかし、ミシシッピ州やジョージア州でも同様の法律が制定された。

これに対してニューヨーク州やコネティカット州などは、こうした州への職員の公用出張を原則禁止して反対の立場を示し、LGBTに差別的な州法として反対するなど、議論が過熱している。

この問題を重く見たバラク・オバマ大統領は、5月13日、米司法省と教育省の連名で全米の公立学校区と大学に対し、体と心の性が一致しないトランスジェンダーの生徒に、自身が認識する性と一致するトイレを使用許可するよう求める指針を送った。この通達に法的拘束力はないが、従わない場合は訴訟、または連邦政府の助成金打ち切りの可能性もあるという。

一方、LGBTの人たちに配慮したトイレを推進する都市もある。シアトル、バークリー、サンタフェ、フィラデルフィアといった諸都市では誰でも利用できるトイレを「全てのジェンダー用」として設置することを義務付けている。そのため学校のみならず、美術館、レストラン、ホワイトハウスでさえも、これまで使っていた男女別トイレの表記を見直している。

多様化する性に対応するトイレをどうすべきか、米国でもそのあり方が模索されている。

(C)Jess Andrews
米国でトイレ表記は変わりつつある(カリフォルニア州)

LGBTに配慮した公共トイレ必要」--LIXIL調査から

日本においても、文科省は4月30日、性的マイノリティの子供について配慮を求める通達を全国の小中高校などに出した。行動指針の多様性におけるテーマとして、LGBTへの配慮を含める企業も拡大している。

このような背景から、LIXILではNPO法人虹色ダイバーシティと共同で性的マイノリティを対象に、職場や学校など公共施設のトイレに関するウェブ調査を実施した。

LIXILでは、これまでも車椅子ユーザーや乳幼児連れ、高齢者などさまざまなユーザーのニーズに応える配慮施策を検討し、誰もが使いやすい公共の場にあるパブリックトイレの提案を行ってきた。しかし、性的マイノリティを対象としたトイレに関する悩みをとらえた調査はこれまでなかった。

今回の調査は、10代以上のLGBTを対象に、メーカーの名前を伏せて行ったことで、リアルな声を拾い上げている。

例えば、出生時の性別と性自認が一致しないトランスジェンダーは、使いたいトイレの性別表記と戸籍上の性別が一致しない場合も多く、6割以上が職場や学校のトイレ利用に対してストレスを感じていることが明らかになった。

「他の利用者から不審な目でみられたことがある」と答えた人も5割以上。もし自由にトイレが選べるのであれば、性別の区分けの無い「だれでもトイレ」を利用したいと回答するトランスジェンダーは4割近い。

トイレ利用に対するストレスから、トランスジェンダーの4人に1人が排泄障害を経験したことがあると答え、健康面での影響も否定できない。

LIXILでは今回の調査から浮かび上がったLGBTのニーズをとらえ、誰もが安心して、快適に利用できるパブリックトイレ空間を目指したいとしている。

2020年の東京五輪に向けて、グローバルな視点で多様な性に対応した公共のトイレの開発が急がれる。

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箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。

http://gogreen.hippy.jp/