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細田悦弘のサステナブル・ブランディング スクール

第42回 トラベルナースが示唆する!企業のQOL

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SB-J コラムニスト・細田 悦弘

連続ドラマ『ザ・トラベルナース』が人気です。スーツケースひとつで渡り歩く優れた資格を持ったフリーランス看護師であるトラベルナースが、令和の医療現場を改革するクールで痛快なストーリーです。劇中の決めゼリフに、サステナビリティ時代の企業のあり方と相通ずるものがありそうです。

トラベルナースの『決めゼリフ』

テレビ朝日系列の連続ドラマ『ザ・トラベルナース』が好評です。主人公は、一定レベルの診断や治療などを行うことができる看護資格「NP(ナース・プラクティショナー)」を持ち、アメリカを転々としながら医療活動に従事してきた、岡田将生さん演じるフリーランス看護師・トラベルナースです。

日本に帰国して病棟に勤務することになり、アメリカとは異なる看護師の待遇、慢性的な人手不足、院内のヒエラルキーなどに直面します。
そうした状況に対し、同時期に入職した男性のスーパーナースとともに、同僚や患者に影響を与えていくストーリーです。その絶妙なバディ役とおぼしき中井貴一さん扮するスーパーナースが、主人公に対して柔和な笑みを浮かべながら、次のフレーズを言い放ちます。

◎「医者は病気を見つけて病気を治し、ナースは人を見て人を治す」
ナースの誇りと矜持がにじみ出る『決めゼリフ』です。

患者にとって病気の治療は第一義ですが、それに加えて、生活の質や人生の質、そして何を幸せとするかといった視点が大事になってきており、上記のようなメッセージは重みを増しています。

QOLと企業のあり方

医療の世界では近年、「QOL」という考え方に関心が高まっています。QOLはQuality of lifeの略で、通常「人生の質」または「生活の質」と訳されます。この概念は歴史的には、ソクラテスの「なによりも大切にすべきは、ただ生きることでなく、よく生きることである」という哲学や、プラトンの「善き生(good life)」の追求等までさかのぼることができるようです。

現代において、QOLに注目が集まってきたのは1970年代頃で、技術の進歩によって物が豊富に手に入るようになったため、生活の豊かさを評価する基準が、物の量ではなく、質の良さになってきたことがきっかけといわれています。つまりQOLとは、「より多く」よりも「より良く」という価値観であり、物質的な豊かさに満たされた生活ではなく、毎日が充実し心身が満たされた生活に焦点をあてた考え方といえます。量的指標よりも質的指標で生活の豊かさを判定することへの関心の高まりです。保健医療の分野においても、医療評価を従来の治癒率や生存率等の量的指標に基づいた判定から、患者自身の主観的評価を重視する方向へと変化してきています。

こうした時代の価値観や考え方は、企業経営のあり方にも反映し相通じるものがあります。
財務業績も大事ですが、社会の中で企業がどうありたいか、どう持続可能性を高めることができるかの観点がますます重要になっています。企業の『生きざま』が問われるようになりました。

スーパーナースの至言が示唆する!これからの「良い会社」

スーパーナースの至言:「医者は病気を診て病気を治す。ナースは人を観て人を治す」
これを企業に当てはめてみると、
「これまでの経営は、短期を見て、企業本位で財務業績拡大を志向。これからの経営は、中長期を見て、ステークホルダー本位で持続的成長・企業価値向上を目指す」といった文脈が導き出せます。

企業は今日に至るまで、経済活動の規模と範囲を大きく拡大させ続けた結果、環境面及び社会面の「持続可能性」を阻害することになり、さまざまな課題に直面しています。現代においては、社会的価値を毀損しながら経済的価値を向上させることは御法度(ごはっと)です。そこで、サステナビリティ(Sustainability)を企業経営の中核にビルトインすることが主流になってきています。

「サステナビリティ」という言葉はこれまで、企業活動を行うにあたって「地球」を大事にするという趣旨で使われる傾向にありました。それが現在では、企業活動を進めるにあたって地球や社会を大切にすれば、企業もまた持続的に成長させてもらえるという脈絡で語られるようになりました。

企業は地球環境や社会を前提に存在していることは自明です。したがって、今日の経営にあたっては、「盤石な地球」と「健全な社会」があってこそ、将来にわたってのビジネスが円滑に展開できるという認識に基づく企業姿勢が強く求められています。社会(ステークホルダー)をおもんばかり、地球をケアすれば、企業のQOLを高めることにつながります。

目先の利益はもちろん大事。ただ目先の利益を続けたければ、「サステナビリティ経営」が必須です。これからの「良い会社」は、いかに現代社会において『自社らしく』存在意義を発揮できるかを念頭に、まわり(ステークホルダー)に配慮しながらコーポレート・ブランドを高め、持続的成長・中長期の企業価値向上を目指すことが大事です。

ビジネスとサステナビリティを融合させ、自社の存在意義の発露である『らしさ』を発揮し、競争優位を創り出す戦略メソッドがサステナブル・ブランディングです。

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細田 悦弘
細田 悦弘  (ほそだ・えつひろ)

公益社団法人 日本マーケティング協会 「サステナブル・ブランディング講座」 講師
一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 メーカー系マーケティング会社 入社。営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、企業や大学等での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとして活躍中。サステナビリティ・ブランディング・コミュニケーション分野において、豊富な経験を持ち、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。 聴き手の心に響く、楽しく奥深い「細田語録」が魅力の一つである。

一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、経営品質協議会認定セルフアセッサー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員、 Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。


◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史

◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)、一般社団法人日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号) / (2021.4月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~)など。

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