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欧米に並ぶ気候変動のリーダー国になるために、日本は2030年温室効果ガス削減目標を最低50%以上に

SB-J コラムニスト・古野 真

4月22日に予定されているバイデン米大統領の気候リーダーズサミットに先立ち、日本が2030年の温室効果ガス排出量削減目標を26%から最大45%(2013年比)に引き上げることを検討しているとの報道がありました。一方で、米国は2030年の温室効果ガス排出量削減目標を50%以上(2005年比)に引き上げることを検討していると報じられています。

45%という数字が、これまでの日本の2030年温室効果ガス削減目標を大幅に上回るものであることは間違いありません。また、気候変動の深刻な影響をできるだけ防止し、2050年のカーボンニュートラル目標を達成するために、日本が真剣に取り組んでいることを世界に示すものでもあります。しかし、日本はパリ協定に基づく国際的な義務を果たすためにさらなる努力をすべきであり、気温上昇を産業革命以前のレベルより1.5℃以下に抑えるために科学者たちが必要だと言っている行動を実行しなくてはなりません。

国連によれば、地球温暖化を1.5℃以下に抑えるためには、2030年までに世界の二酸化炭素排出量を45%(2010年比)減少させる必要があります。日本の新たな目標は、一見すると国連の要求を満たしているように見えます。しかし、日本の排出量は2010年から2013年にかけて増加しているため、日本の新目標(45%となれば)は2010年比で41%程度の削減にとどまり、必要とされる世界平均の削減量を下回ることになります。さらに、世界平均での目標達成は、パリ協定の重要な要素である「公平性」の概念を無視しています。各国は「共通でありながらも、それぞれの責任と能力に応じた削減目標」を約束すべきです。日本のような先進国は、世界の排出量を削減するための役割を果たすために、世界平均を上回る努力をしなければなりません。

独立系シンクタンクであるClimate Action Trackerは、科学者の意見を反映し、産業革命以前の平均気温に比べて世界の気温上昇を1.5℃に抑えるために、日本は2030年までに国内の温室効果ガス排出量を62%削減すべきだとしています。また、別の調査報告書によると、他国が日本の2013年比45%削減(2010年比約41%削減)を基準とする場合、今世紀の世界の平均気温は産業革命前と比べて2.7℃上昇するとされています※1

2030年までに2013年比で45%削減するという日本が検討する目標を、欧州連合(EU)、米国、英国の目標と比較すると、各国が2013年以前の基準年に基づいて目標を設定しているため、日本の新たな目標は、ほぼすべての時間軸で削減率が低いことがわかります。EUは国連気候変動枠組条約が締結された2年前の1990年を基準にしてマイナス55%の目標を設定しており、米国は2005年を基準にしているのに対し、日本は国の排出量が最も多かった2013年を基準にしています。すべての条件を揃えるのであれば、先進国は1990年を基準にすべきで、この基準年が世界の排出量削減に対する各国の貢献度を比較する上で最も適切な時間枠となるはずです。

各国の2030年目標と基準年の排出量(1990年、2005年、2010年、2013年)の相対的な変化率を示すデータをまとめました※2

1990年をベースラインとした場合、日本の削減目標はわずか39%にすぎません(EUは55%、英国は68%)。

一方、日本がEUと同等の1990年比55%削減を達成するためには、2013年をベースラインとした場合、61%の削減が必要となります。

世界の温暖化対策を先導するEUは2005年に欧州連合域内における主要な経済活動に伴う二酸化炭素排出量に対して排出量取引制度を導入するなど、より早い段階で経済全体の排出量削減に取り組んできたため、日本が同じ時間軸で2030年までに経済を脱炭素化することはより困難な課題であることは明らかです。

しかしながら、米国のような石油・ガス産出国が、トランプ元大統領の下で環境政策が逆行した後も、2030年までに50%の排出量削減を約束できるのであれば、日本が2005年比40%台削減という目標を掲げるとすればそれを正当化することは難しいでしょう。日本が米国の2005年比50%削減目標と同レベルの努力をすることは、2013年比で51%削減するということです。日本のグリーン技術や安定した政治、官民の協力体制などを考慮すれば、日本は「オールジャパン」で米国よりも高い目標を掲げ、EUの55%(日本は2013年比で61%)削減に近づけることができるはずです。

今後、各省庁や担当大臣の間で活発な議論が展開されると思いますが、今こそ日本は世界の舞台で存在感を示し、ネット・ゼロ・エミッションに向けた世界的な産業競争を真にリードするとともに、米国、EU、英国と連携し、G7では気候危機の解決とSDGsの達成に向けて一致団結した姿勢を示すべきです。

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古野 真
古野 真 (ふるの・しん)

気候変動に関するアジア投資家グループ(Asia Investor Group on Climate Change)のプロジェクトマネージャーとして2020年1月に活動を開始し、投資家の立場から投資先企業及び政府機関とのエンゲージメントを担当。ESG 投資家・気候変動専門家として活動しながら、ESGに関するブログ・情報サイト「ThinkESG.jp」の編集長も務める。現職に就任前は国際環境NGO350.orgの東アジアファイナンス担当を努め、350.orgの日本支部350Japanを2015年に立ち上げた。NGOセクターに携わる前にはオーストラリア政府の環境省で課長補佐として気候変動適応策を推進する国際協力事業を担当。気候変動影響評価・リスクマネジメントを専門とする独立コンサルタントとして国連開発計画(UNDP)、ドイツ国際協力公社(GIZ)や一般社団法人リモート・センシング技術センターのプロジェクトに参加。クイーンズランド大学社会科学・政治学部卒業(2006),オーストラリア国立大学気候変動修士課程卒業(2011)

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