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僕たちがつくる、次世代の人事モデル

定年の概念を乗り越える、人生100年時代のシニア雇用

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SB-J コラムニスト・西村 英丈

“定年”という考え方をなくさなければ、本当の意味での改革は進まない~エイジレス社会の構築~

One HRではこれまでに、100年続く個人と組織の関係を創るためのHR版SDGsを策定、公開し、多くの賛同者を集め、それを社会に実装するために、経産省だけでなく大企業・スタートアップ・外資の人事担当者及び経営者、SDGs推進者、人材サービサーとともに、次世代人事部モデルを策定してきた。他方、定年退職後から健康寿命までの期間の雇用システムについては、次世代の人事部機能の中でも喫緊の課題としてテーマアップしていたが、企業内の人事を考えるだけでは手の付けようがない課題である。

そこで気付いたのが、シニア世代の雇用システムの在り方そのものを検討することの必要性だ。企業の人事担当者が信頼してご紹介ができ、シニア世代も安心かつ成長できる新たな仕組み・雇用の場を提供するために、一企業内だけでなくマクロな視点でシステム自体について考えたい。

これまでは1つの企業だけで働くスタイルで日本の雇用システムは完結していた。しかし今日、人生100年時代と言われるように人の寿命が延び、日本の雇用は65歳まで延長された。今後は70歳まで働く時代になるだろう。しかしながら、高齢者が定年後に職探しをする市場は成熟していないのが実状だ。政府の成長戦略を以下に示す。

政府が発表した「高年齢者雇用安定法」改正案の内容は、希望する高齢者の定年を70歳まで延長するだけでなく、他企業への再就職の実現や起業支援も促し、企業は努力義務としてそれらに取り組まなければならなくなるというものだ。

65歳から70歳まで働けるようになると、もちろん60歳代の就業率が上がる。それに伴う経済効果も期待できるだろう。しかし政府の調査では、65~69歳の高齢者の65%が「仕事をしたい」と感じている一方で、実際にこの年齢層で就業している人の割合は46.6%にとどまっている。

この約20パーセントの差を埋めることが企業の社会的使命であり、喫緊の課題である。

エイジレス社会構築に向けた具体的なアクションと検証

安倍首相は「元気で意欲のある高齢者の経験や知恵を社会で発揮してもらえるように、法改正をめざす。それぞれの高齢者の特性に応じ多様な選択肢を準備する」とコメントをしている。企業が取り組む選択肢の7項目のうち、いわゆる内部労働市場として同じ企業内で雇用を継続するための方策は以下の3つだ。

(1)定年延長
(2)定年廃止
(3)契約社員や嘱託などによる再雇用

他方、外部労働市場として、社外でも就労機会を得られるように支援するための方策は、以下の3つである

(4)他企業への再就職支援
(5)フリーランスで働くための資金提供
(6)起業支援

一律に70歳までの雇用を義務付けられると、企業にとって負担増になるとの懸念があるため、政府はこれらを「努力義務」としているわけである。

将来的には義務化される可能性も示唆し、併せて公的年金の受給開始年齢を70歳以降でも可能にして、その分、受給額を増やす仕組みとし、高齢者の就労を促す効果を見込んでいるようだが、現時点で定年を70歳まで引きあげたり定年制を撤廃する企業は非常に少ない。

定年引き上げや定年の廃止・再雇用をして、これまで通り内部労働市場での雇用拡大を目指すべきか、あるいは、内部労働市場から外部労働市場へとつなぐ仕組みを構築していくか。この2択になるわけだが、外部労働市場へとつなぐ際には環境変化が起こるため、とりわけシニア世代では、大きく分けて以下の2つの課題が壁となるケースが多々ある。

(1)マインドチェンジの必要性
(2)スキルマッチング上のリカレント教育の必要性

逆に言えばこれら2つの課題さえ克服すれば、労働人口減少に悩む地方の地方創生であったり、成長フェーズのスタートアップ企業など、マクロでみたときにマンパワーの不足に悩むステージのすべてが、実際に経済生産を押し上げる真水市場として浮かび上がる。

令和時代には、「シニアインターン」という言葉が当たり前な社会に

65歳以上のシニア世代がスタートアップ企業で活躍する。そのような仕組みを作る必要があると私は考えている。これまでどちらかというと、企業側のリストラ施策の一環として捉えられていたセカンドキャリア支援を「シニアインターン」として社内、社外、成長著しいスタートアップ企業、地方創生につながる地方優良企業、NPO法人、さまざまな選択肢広としての就業先が、広げていかなくてはならない。具体的なステップは以下の通りである。

このステップを踏むことでシニアの良さが存分に生かされるのだが、実はこれは映画「マイインターン」のストーリーそのものだ。映画の内容を簡単に紹介しよう。

会社人生を終え、社会との繋がりを持ちたいと思いつつ、なかなか叶わないベン(ロバート・デ・ニーロ)は偶然、「シニア インターン」の募集を見つける。Youtubeを利用して履歴書を応募するなど、70歳には少々高いハードルをくぐり抜け、ベンはスタートアップのファッション会社にシニアインターンとして入社する。

そこで出会うCEOのジェールズ(アン・ハサエウェイ)は、エクササイズのために自転車でオフィスを駆け巡るような今時の女社長だった。ジェールズは当初、高齢のベンのことを煙たがる。しかし彼の物腰の柔らかさや仕事のきめ細やかさに、ジェールズだけでなく、社内全員が徐々に信頼を置くようになる。若手社員も人生経験豊かなシニアに助言を求め、さらにシニアも自分の持ち味を出していくのだ。

一方ベンのほうも、ジェールズの仕事ぶりに触れて彼女の良さを理解し始め、双方が求めあっていくというストーリーである。

定年退職後から健康寿命までの雇用システムの中で65歳以上も活躍しているケースの事例を収集し、成功ケースの分析を通じて、エイジレスに働ける人材のモデルと育成モデルを策定していくことが、これから必要だろう。その先にはマインドチェンジやリカレント教育を実現し、課題を克服しうる、モザイク型就労の考え方などを取り入れた新たな雇用システムを構築していくべきではないだろうか。

そのために、シニア人材がどういった分野に貢献できるかというタグ付けをする仕組みを構築し、その流れを加速させたいと考えている。

東京大学の研究グループが示す、モザイク型就労モデルも参考になろう。

(以下、「『高齢者クラウド』の研究開発」より抜粋)
個々の時間や能力を組み合わせてバーチャルに一人分の働きをこなす仮想労働者を構成することで柔軟な就労と安定した労働力の供給の両立が可能となってくる。下図に示すように、複数人の高齢者、さらには若者それぞれの得意分野を組み合わせることで、仮想的にパーフェクトな労働力を合成する。

(抜粋ここまで)

年齢はナンバーにすぎない

以上のようにOne HRでは、一般社団法人日本セカンドライフ協会とも連携して「定年退職後から健康寿命までの雇用システム」、つまり、エイジレスに働ける雇用システムを作っていきたいと考えている。

年齢も性別も国籍も異なっても、仕事で理解しあえる瞬間がある。また、年齢を重ねることで包容力と威厳をもって問題に立ち向かうことができる。会社引退後の活躍を見据えた“シニアインターン”が当たり前の社会を実現したいと考えるのは、そういったことを大切にしたいという思いからだ。

今日、長寿化の潮流として、2050年までに日本の100歳以上人口は100万人を突破、2007年に日本で生まれた子供のうち半分は、107年以上生きることが予測されている。

あの葛飾北斎は、88歳まで絵を描き続けた。

いつの時代も意志があるところに道が開けていけるものだと思う。年齢はただのナンバーにすぎないのだ。シニア世代はもっと若々しく生きられる。そして日本には「親の背中を見て育つ」という言葉があるように、大人がいかに楽しんで仕事しているかが子どもたちの人格形成の上でも非常に大事になってくる。 仕事が楽しければ、人生も愉しい。そんな価値観を持つ人がこの世の中に増えれば、と考える。

なお第一回の次世代雇用研究会を2020年2月7日(金)19時より、東京大学本郷キャンパス小島ホール5Fに於いて開催予定なので、ご興味がある読者の方は是非、One HRまでご一報頂きたい。

今回は「人生100年時代のシニア雇用、シニア世代の活性化」といったテーマに焦点を当てた。次回は再びSDGsの切り口で、サステナブルなHRについて纏めたい。

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西村 英丈
西村 英丈(にしむら・ひでたけ)

One HR共同代表、一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム理事、一般社団法人シニアism.理事、インタープレナー研究会プロジェクト代表

東京理科大学卒業後、約70ヶ国/地域で事業展開をするグローバルカンパニーへ入社。アジアリージョン統括人事(シンガポール駐在)として5年にわたり、新興国市場の人材マネジメントを推進。HR版SDGsを策定し、次世代人事部モデルとしてメディアにも取り上げられる。そのほか、定年退職後のライフスタイル構築を応援する(一社)シニアism.を立ち上げ、HR分野のデータ活用の推進をする(一社)HRテクノロジーコンソーシアム理事、インタープレナー研究会プロジェクト代表に就任し、現在に至る。その他、(一社)日本バングラデシュ協会理事、東京ビエンナーレのエリアディレクターなども務めてきており自身としてもインタープレナーとして活躍中。

著書に『トップ企業の人材育成力』(さくら舎・共著)、『弁護士・社労士・人事担当者による 労働条件不利益変更の判断と実務ー新しい働き方への対応ー』(新日本法規・共著)がある他、数多くの登壇、執筆実績がある。

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