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サステナビリティ 新潮流に学ぶ

グリーンからソーシャルへ:持続可能な消費が企業に問うこと

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SB-J コラムニスト・古沢 広祐

【サステナビリティ 新潮流に学ぶ 第16回】大量生産・消費の社会は、地球環境問題を契機に、大きな変革を迫られています。成長第一主義で進んできた生産システムですが、消費の側からの批判によって生産内容の見直しが促されはじめました。(SB-Jコラムニスト 古沢 広祐)

出典:環境省、環境ラベル等データベースhttps://www.env.go.jp/policy/hozen/green/ecolabel/f01.html

環境の消費からエシカルな消費へ

その発端は、グリーン・コンシューマリズム(環境を重視する消費)の動きです。グリーン・コンシューマリズムの台頭は、見た目や表面的な豪華さに重きを置くのではなく、環境に及ぼす影響など商品の背後にある価値や質を問う新しい消費者意識ないし価値観の形成を内在させたものでした。それは消費者の狭い利己的な欲望を脱皮して、新たな社会意識と価値・文化の形成への動きと捉えられます。

歴史的経緯は、英国で1988年に『グリーン・コンシューマー・ガイド』が出版されてすぐ30万部を突破するベストセラーになり、小売業界に大きなインパクトを与えました。時を同じくして、アメリカでも経済優先度評議会(CEP)が『ショッピング・フォア・ベターワールド:よりよい世界への買物』を出版し、数年間で100万部をこえる売行きをみせたのでした。

当時1989年3月にアラスカ沖でエクソン社の石油タンカー「バルディーズ」号が座礁事故で深刻な海洋汚染を起こし、企業の社会的責任を問う動きが急速に広がった時期でした。市民団体により企業が守るべき「バルディーズ原則」が提起され、その後CERES(環境責任をはたす経済の連合)ができてセリーズ原則(企業の社会的責任の手本)となり、多くの市民団体が企業の社会的的責任(CSR)を問う動きを活発化させたのでした。

グリーン・コンシューマーと同様に消費のあり方を問い直す動きに、エシカル・コンシューマー(倫理的消費者ないし社会的意識をもつ消費者)といった動きも台頭しました。商品が環境面のみならず社会的背景までどんな関わりをもっているのかを問うもので、英国では「エシカル・コンシューマー」の書籍や雑誌が盛んに刊行され、ネットで詳しい情報が提供されています。
http://www.ethicalconsumer.org/

それらの情報を見ると、例えば、チョコレートという商品項目を見た場合、個別の商品名リストと製造元ならびに企業系列が出て、チェック評価項目としては、原料供給元の国の政治体制が市民を抑圧していないか、土地所有の形態は民主的か、労働組合が機能しているか、労賃や労働条件に問題はないか、環境への配慮、軍事との関係、人種差別との関係などが示されます。最終評価項目で問題ありとなると、ボイコットの呼びかけに印がつくことになります。

「good on you」(良かったね!あなたに良い品)

つまり自分たちが消費している商品が、どんな所からどのようにして来ているか、それについて人権や環境面で問題はないかがチェックされ、消費者が商品を選択する際の選択基準にするのです。安全性や環境面、人権や労働条件、軍事・平和問題、政治的・社会的抑圧等といった問題まで視野にいれ、生産から流通・消費に至るまで詳しく点検して評価しようという動きです。

関連した動きとしては、欧米でフェアトレード(公正貿易)運動が大きな広がりをみせてきましたが、こうした社会背景や潮流があったからでした。このようにして、企業活動の社会的責任(CSR)や倫理を問う動きが連鎖的に広がりをみせて、企業のあり方を見直す流れにつながってきました。そして原料の生産から加工・流通・販売・消費までのプロセスについての点検は、サプライチェーン・マネジメントと呼ばれて、すでに紹介した国連新目標(SDGs)の中では、ゴール12(持続可能な消費・生産)として重要な検証対象になっています。

最近の取り組みには、スマートフォンの普及のなかで、商品や製品に関する環境・社会面での評価が簡便にわかるアプリが出回りはじめています。有名なものに、エシカル・コンシューマー・オーストラリアという団体が、「good on you」(良かったね! あなたに良い品)のネットサイトを立ち上げ、2015年にスマホ用にアプリを提供し世界的に普及しています(サイト写真)。アパレル・ファッションのブランドを、人(労働)、地球(環境)、動物(自然保護)について評価して、5段階の格付けが行われています。日本でも、「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク」という団体が、似た試みとして「ぐりちょ」(Green Ethical Choices)を提供し始めています(サイト写真)。

Good on you:世界に害のないファッションを!https://goodonyou.eco/ http://ethicalconsumer.org.au/
消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク:http://cnrc.jp/

オーガニック(有機農産品)、フェアトレード、エコラベルなど、身近な商品に最近はさまざまな認証ラベルが付くようになりました。そうしたマークを通して、私たちが消費する品物と世界との関係について、改めて見直す時代になってきています。

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古沢 広祐
古沢 広祐 (ふるさわ・こうゆう)

國學院大學経済学部(経済ネットワーキング学科)教授。
大阪大学理学部(生物学科)卒業。京都大学大学院農学研究科博士課程(農林経済)研究指導認定、農学博士。
<研究分野・活動>:持続可能社会論、環境社会経済学、総合人間学。
地球環境問題に関連して永続可能な発展と社会経済的な転換について、生活様式(ライフスタイル)、持続可能な生産消費、世界の農業食料問題とグローバリゼーション、環境保全型有機農業、エコロジー運動、社会的経済・協同組合論、NGO・NPO論などについて研究。
著書に、『みんな幸せってどんな世界』ほんの木、『食べるってどんなこと?』平凡社、『地球文明ビジョン』日本放送出版協会、『共生時代の食と農』家の光協会など。
共著に『共存学1, 2, 3, 4』弘文堂、『共生社会Ⅰ、Ⅱ』農林統計協会、『ギガトン・ギャップ:気候変動と国際交渉』オルタナ、『持続可能な生活をデザインする』明石書店など。
(特活)「環境・持続社会」研究センター(JACSES)代表理事。(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC)理事、市民セクター政策機構理事など。
http://www.econorium.jp/fur/kaleido.html

https://www.facebook.com/koyu.furusawa

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