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CSRブランディング最前線

第20回:コンプライアンスに魂を入れる!インターナルブランディング

SB-J コラムニスト・細田 悦弘

~ ビジネスと社会課題解決を両立させ、‘らしさ’で競争優位を創り出す!待望の戦略メソッド ~

「CSRでメシが食えるか?」。こんなお悩み相談を受けたことがあります。経営層から「CSRが大事なのはわかるけど、CSRでメシが食えるか?」と言われたそうです。これに対して、私がこれだけは断言してくださいと授けるフレーズは、「今や、CSRをないがしろにしていると、メシが食えなくなりますよ!」です。

社員のブランド意識で推進する「コンプライアンス」

法律さえ守ればよい」「法律に抵触しなければ問題ない」という認識の企業不祥事が、まだまだ後を絶たず、記者会見等の場において、こうしたスタンスを構える経営層も散見されます。

企業に社会の公器としての役割が強く問われる昨今、役員・社員が、「企業理念」や「ミッション」を再認識し、「一人ひとりが自社ブランド」としての自覚と誇りを持って行動することが肝要です。この視点へのアプローチが、インターナルブランディングによる、社員のブランド意識で推進するコンプライアンスとなります。

Gray is Black.

あるオフィスの一コマです。部下からの質問に応える課長がいます。

部下が「課長、これは黒じゃないから、やっていいでしょうか?」と言ったとします。この問いに対して、今日の然るべき課長であれば、「黒じゃないなら、やってもいい」ではなく、「白じゃないなら、やめとけ」と指示を出すことが、まさに明暗を分けます。

近年の企業不祥事は、明白な違法行為そのものが発覚したことに端を発するよりは、時代の社会要請に反した企業姿勢が糾弾される傾向にあります。即「黒」というよりは、「限りなく白に近いグレー」。こうした事象について、「黒じゃないから、大丈夫」と高をくくる企業もあれば、「真っ白じゃないから、やめておこう」と即断する企業もあります。ここに、企業の価値観や組織風土、品格が露呈します。現代は、「グレー イズ ブラック」という認識が企業の身を守ります。

一般的に「コンプライアンス=法令遵守」と捉えられますが、「コンプライアンス≧法令遵守」といった具合に、2つは同心円ではなく、法令遵守はもとより、倫理的に問題がないか、そして社会的に望ましいかというレベルまでを見据えた概念が大切です。

「コンプライアンス」を語源から発想し、「社会の要請・期待に対して、企業がしなやかに対応すること」といった広義の認識でのアプローチが重要です。コンプライアンスとは、「法令や社会のルールを守り、社会正義を堅持し、社会の要請や期待に応え続けていくこと」と捉えていくことが要諦です。

特に、社会の価値観は時代とともに変容し、企業への要請や期待は刻々と変化し厳しさを増しています。この社会の空気感を俊敏に読み取って対応することが基本です。若者ことばを引用すれば、企業の「KY(空気が読めない)」は、不祥事のもと。社会から白い目線を浴びるもとだといえます。CSRによって磨かれる、組織の「社会的感受性(Sensitivity)」は、現代企業必携の資質といえます。

したがって、ブランド意識に基づく「一段高い判断基準」をもって、法令遵守だけでなく、社会からひんしゅくを買わないこと。さらには、「さすが」と一目置かれる存在となることを目指していくことが一歩進んだコンプライアンスといえましょう。社員のブランド意識が高まれば、潜在的なブランドリスクを下げることにもつながります。

誇りと自覚で「当たり前のことを、当たり前にやる組織風土づくり」

こうした背景から、「インターナル(社内)ブランディング」が注目されています。それは、社内に対して、企業哲学・理念に則り、CSR・ブランディングの考え方や自社のブランドを認知・理解、浸透させることにより、あらゆる事業活動や従業員の立ち居振舞いにまで反映させ、社外におけるブランド価値向上に結び付けていくというものです。

自社コード(価値判断基準)に基づき、「当たり前のことを、当たり前にやる組織風土づくり」を目指す「インターナルブランディング」は、時代に適応する、意識改革活動として、経営戦略の観点からも関心が高まっています。社員が、誇りと自覚による「一段高い判断基準」をもってもらうことです。

時節柄、頻繁にコンプライアンスやガバナンスが取り沙汰されていますが、「不祥事を起こさない取り組み」を超えて、「不祥事が起きないような組織風土づくり」の観点が重要です。そのためには、人を24時間見張るような「監視のガバナンス」には限界がありますし、命令で強制的に活動を強いることなどできる時代ではありません。したがって、いかに監視するか、いかにやらせるか、ということよりも、経営層や社員の持つ使命感や倫理観、それに支えられるプライドや情熱に訴えかけ、心の中に自発的な動機付けを埋め込むアプローチがベストだと確信しています。

時に、「うちは、eラーニングをやっているから大丈夫」との声が聞かれますが、下記の観点で吟味してみてください。

人は、「意識」が働かないと行動しない
人は、「知識」がないと正しい判断ができない
知っていても、意識が脆いとやってしまう
意識があっても、知らないとやってしまう


だからこそ、eラーニングは十分活用しつつ、あわせて、コンプライアンスに魂を入れる「インターナルブランディング」が効果を発揮します。この活動は、CSRマインドや価値観を社員の頭と肌感覚にしみ込ませ、意識変革を促すとともに、全社的な組織風土の強化につながります。


☆編集部から参考情報です。

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https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=22031

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細田 悦弘
細田 悦弘 (ほそだ・えつひろ)

中央大学大学院 戦略経営研究科 フェロー / 一般社団法人日本能率協会 主任講師

1982年 キヤノンマーケティングジャパン(株)入社後、営業からマーケティング部門を経て、宣伝部及びブランドマネジメントを担当後、CSR推進部長を経験。現在は、同社・CSR本部に所属しながら、企業や大学等での講演・研修講師・コンサル・アドバイザーとしても活躍中。CSR・ブランディング・コミュニケーション分野において、豊富な経験を持ち、理論や実践手法のわかりやすい解説・指導法に定評がある。

中央大学ビジネススクール 戦略経営アカデミー講師、一般社団法人日本能率協会 主任講師、一般社団法人日本能率協会「新しい経営のあり方研究会」メンバー、経営品質協議会認定セルフアセッサー、土木学会「土木広報大賞」 選定委員、 Sustainable Brands Japan(SB-J) コラムニスト。社内外のブランディング・CSR・サステナビリティのセミナー講師の実績多数。


◎専門分野:サステナビリティ、ブランディング、コミュニケーション、メディア史

◎著書 等: 「選ばれ続ける会社とは―サステナビリティ時代の企業ブランディング」(産業編集センター刊)、「企業ブランディングを実現するCSR」(産業編集センター刊)共著、東洋経済・臨時増刊「CSR特集」(2008.2.20号)日本能率協会「JMAマネジメント」(2013.10月号)、環境会議「CSRコミュニケーション」(2010年秋号)、東洋経済・就職情報誌「GOTO」(2010年度版)、日経ブランディング(2006年12月号) 、 一般社団法人企業研究会「Business Research」(2019年7/8月号)、ウェブサイト「Sustainable Brands Japan」:連載コラム(2016.6~ ) など。

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