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サステナブル・ブランドの作り方

第11回:炎上するCM、しないCM、その違いは? (下)「2つのCMの明暗を分けたものは?」

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SB-J コラムニスト・足立 直樹
企業内の女性管理職の割合、リーダーシップが企業の発信するメッセージに影響する可能性は高い。
(写真クレジット:University of Exeter CCライセンス )

前半「日本とアメリカの子育てはこんなに違う!?」はこちらから

 およそあらゆるビジネスは「問題を解決するために存在している」と言ってよいでしょう。お腹を空かせている人がいるから、レストランがある。自由に移動したり、モノを運んだりしたい人がいるから、車が売れる。人々や社会の問題を解決するから、ビジネスは社会から必要とされるのです。

 オムツだってそうです。赤ちゃんには健やかに育ってほしい。そして、保護者の子育ての苦労を少しでも減らしたい。そのために紙オムツは開発され、大きなビジネスになったのでしょう。

 けれども、子育てが紙オムツの高機能化だけでは解決できない大変な仕事であることは、洋の東西を問わず同じです。便利で快適なオムツができたので、今の親は昔よりだいぶ楽になったのは確かでしょう。毎日、何十枚もの布オムツを洗わなくてもいいのです。

 もちろん、それで子育ての負担がすべて軽くなるわけではありません。それ以外にも、親になったばかりの保護者が苦労する場面はたくさんあるのです。

 そこで「今は大変だけれど、将来はそれが良い思い出になるのだから、もうひと踏ん張り頑張りましょうよ」と言うのか、「子どもは社会の宝物。みんなで育てよう、そういう社会にしよう」と呼びかけるのか。今回のCM騒動においては、そのメッセージが評価の違いを生んだのでしょう。

 誤解のないように言っておきますが、A社はCSRやサステナビリティに関して、とても真面目に取組んでいる企業だと思います。日本国内だけでなく、アジア各国でもそれぞれの地域の事情にあわせた活動をしており、かなり積極的な会社だと言っていいでしょう。

 今回のCMについても、むしろこれは問題提起の意味があったのかもしれません。母親1人で担う育児は「こんなに大変なんだ」ということを、父親をはじめ男性陣や日本社会に伝えようとしたのかもしれません。そして「私たちはお母さんを応援していますよ」と
紙オムツをつくる企業としてエールを送りたかったのだと思います。

 しかし、共感を生むためには「その先」まで、つまり、自分たちはどこを目指しているのか、どうしたらこの現状を変えられると思っているのか、そのためにどのような行動をしているのか、そこまで説明する必要があったのです。

 ところで、そもそも両社のCMがなぜこれほどまで対照的なものになってしまったでしょうか?もちろんそれはCMが作られた社会環境の違いもあるでしょう。しかし、これまたSNSでとても気になる指摘があったので参考までに紹介しておきましょう。

 それは、A社は女性社員比率が17.4%、女性管理職比率は9.2%(いずれも2015年度)なのに対して、P&Gジャパンは女性管理職比率が34%、さらには女性役員比率が47%だというのです。(調べてみると、2017年のいま現在、A社の役員は11名全員男性、執行役員にも女性らしき名前が1人あるかないかでした。)

 もちろんこのデータだけで判断はできませんが「誰の目線で社会問題を見るか」ということは、やはりとても大切なことです。

 いつも繰り返すように「サステナブルな社会を作る・サステナブルなブランドになる」ためには、私たちの社会が抱える問題をきちんと認識し、それに正面から向きあい、どう解決するのか方向性を示し、そして行動をする、これしかないと思うのです。企業が示すその考え方と姿勢に、私たちは共感するものだからです。

 であれば、その問題を一番感じている方々、実際に困っている方々、その視線を持てるかどうかが重要です。一緒になって悩んで、一緒に解決しようとメッセージを発信できるのか。その視線と姿勢こそが、サステナブルになるために必要なことなのです。

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足立 直樹
足立 直樹 (あだち・なおき)

サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー。株式会社レスポンスアビリティ代表取締役。一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ理事・事務局長。東京大学・同大学院で生態学を学び、博士(理学)。国立環境研究所とマレーシア国立森林研究所(FRIM)で熱帯林の研究に従事した後、独立。2006年にレスポンスアビリティを設立し現在に至る。2008年からは企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)事務局長も兼務。

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