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サステナビリティ 新潮流に学ぶ

第3回: 社会的経済フォーラム(カナダ)に参加して

SB-J コラムニスト・古沢 広祐

GSEF2016 初日のオープニング全体会議で、社会的経済に積極的に取り組む市長が壇上に並んだ(2016年9月7日筆者撮影)

前回は昨年の国連サミットで、2030アジェンダ(持続可能な開発目標:SDGs)が採択される様子を紹介しました。その経緯の続きがまだあるのですが、今回はホットなトピックを取りあげます。というのも、カナダのモントリオールで開催された「グローバル社会的経済フォーラム」(9/7~9、GSEF 2016)に参加しましたので、諸潮流の最新動向の1つとして今回紹介したいと思います。

サステナビリティとは、環境・経済・社会の新たな再編をめざす動きなのですが、グローバル市場経済の矛盾に対抗する様ざまな勢力が立ち上がっています。国連と連携して多数の世界的企業が参加する「グローバル・コンパクト」は、メインストリームとして有名な動きですね。

そうした経済の中核を担う大企業の先進的な取り組みばかりでなく、経済規模は小さいのですが、利潤追求と一線を画して社会的課題にダイレクトに取り組む事業体に、NPO(非営利組織)、社会的企業(ソーシャル・ビジネス)、協同組合などがあります。

それは、市場経済の競争原理だけでは成り立ちにくい課題や、行政だけでは十分に取り組めない社会的弱者に手を差し伸べる動きを積極的に展開しています。いわば、「市場経済」(自由主義・競争経済)の一角にソーシャル・エコノミー(社会的経済・連帯経済)という新領域ないし補完的な領域を形成する動きと言ってよいでしょう。

これらの動きは欧米諸国で顕著にみられますが、米国と欧州での差異、欧州内でも北欧、英国、フランス、イタリア、スペイン等で微妙に異なる展開を見せています。そうした社会的経済・連帯経済の取り組みは、国家レベルというより中小都市や自治体レベルで多様な展開を見せています。

従来は個別的かつローカル性が強い動きでしたが、近年、国際的な連携をはかる動きが活発化してきており、その展開の一つとして今回の会合(GSEF 2016)が開催されました。世界62カ国から約1500人の参加がありましたが、今回のテーマは、地方自治体と社会的経済の連携が中心的課題におかれました。「持続可能でインテリジェントな街・都市の連合をめざして」というスローガンを明示したこともあり、国を超えて330の都市・自治体(市長や行政官)の参加がありました。

「環境モデル都市」のプレゼンテーションポスターセッション(2016年9月8日筆者撮影)

現在、世界人口の半分以上が都市に住むようになり、急速な都市拡大によって問題が山積、環境から社会まで諸難題が集約的に現れています。近年は、とくに人口移動(移民・難民を含む)、雇用、居住、交通などが深刻です。詳細な内容にふれる余裕はありませんが、カナダや米国、欧州、中南米、アフリカ、そしてアジアでは韓国や日本からも、持続可能な街・社会づくりの興味深い取り組みが多数報告されました。

一例に、米国のオハイオ州クリーブランド市(人口2百万人)が注目されました。同市は、重工業で栄えたところですが、デトロイトなどと同様に衰退して、治安悪化、都市荒廃が進行していました。

財政難や行政力が衰えるなかで、官民協働・市民参加の都市再開発、各種ソーシャルビジネス、協同組合の動きを活発化させることで、再生エネルギー、緑園地開発、環境関連ビジネスなど多様なサービス産業が芽生え、近年は米国でも最も住みやすい街の一つに挙げられるまでになりました。

モントリオール・ノートルダム大聖堂(立像はモントリオール創始者)旧市街の名所で国際会議場の近辺に位置している(2016年9月6日筆者撮影)

実はこのフォーラムの最初の発祥地は韓国、ソウルでした。韓国はグローバル経済競争の荒波の中で、貧富格差や若者の雇用難など社会的歪が深刻化する中で、いち早く社会的企業や協同組合の可能性に注目し、欧米の取り組みを参考にして法制度を整備しました。

2006年に社会的企業育成法の制定、2012年に協同組合基本法が制定されたのですが、この動きを先導したのが現ソウル市長の朴元淳(パク・ウォンスン)でした。自治体として率先して社会的企業支援の仕組みを整備し、世界的な連携を模索して、2013年にグローバル社会的経済フォーラムを開催したのです(ソウル宣言を採択、http://www.seoulsengen.jp/)。

行動的な方で、2014年にソウル市社会的経済基本条例を制定し、同年の市長選で再選されたことから11月にグローバル社会的経済協議会、設立総会・記念フォーラムを開催(GSEF 2014)、世界十数カ国の組織や自治体、国際機関から約5百人、地元からのべ4千人が参加する盛況な集会となりました。

このソウルからスタートしたGSEFの第2回大会が、今回のGSEF 2016としてモントリオールで開催されたのです。第3回は、2018年にスペインのビルバオ市(バスク地方)で開催されることになりました。

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古沢 広祐
古沢 広祐 (ふるさわ・こうゆう)

國學院大學経済学部(経済ネットワーキング学科)教授。
大阪大学理学部(生物学科)卒業。京都大学大学院農学研究科博士課程(農林経済)研究指導認定、農学博士。
<研究分野・活動>:持続可能社会論、環境社会経済学、総合人間学。
地球環境問題に関連して永続可能な発展と社会経済的な転換について、生活様式(ライフスタイル)、持続可能な生産消費、世界の農業食料問題とグローバリゼーション、環境保全型有機農業、エコロジー運動、社会的経済・協同組合論、NGO・NPO論などについて研究。
著書に、『みんな幸せってどんな世界』ほんの木、『食べるってどんなこと?』平凡社、『地球文明ビジョン』日本放送出版協会、『共生時代の食と農』家の光協会など。
共著に『共存学1, 2, 3, 4』弘文堂、『共生社会Ⅰ、Ⅱ』農林統計協会、『ギガトン・ギャップ:気候変動と国際交渉』オルタナ、『持続可能な生活をデザインする』明石書店など。
(特活)「環境・持続社会」研究センター(JACSES)代表理事。(特活)日本国際ボランティアセンター(JVC)理事、市民セクター政策機構理事など。
http://www.econorium.jp/fur/kaleido.html

https://www.facebook.com/koyu.furusawa

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