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ESG・CSR、大企業は企業価値向上として重視:GPIF調査

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GPIFは4日、東証一部上場企業2052社を対象に今年1月―2月末に行った「機関投資家のスチュワードシップ活動に関するアンケート集計結果」を発表した。回答率は3割で619社が回答した。そのうち4割は、2017年5月のスチュワードシップ・コード改訂以降の機関投資家の変化について好ましいと回答。企業がESG・CSRに取り組む目的については、大型株の企業は「企業価値向上」、小型株の企業は「社会貢献」を重視する傾向があることなどが分かった。(オルタナ編集部=小松遥香)

前2回のアンケート調査はJPX日経インデックス400採用企業を対象に行っていたが、今年からは東証一部上場企業に対象を拡大した。回答した企業の内訳は、大型株の企業が86.1%、中型株が64.1%、小型株が17.7%だった。GPIFは、アンケートの目的について、運用受託機関に対するヒアリングだけでなく事業会社にもヒアリングをすることで全体のレベルアップを図りたいとする。

機関投資家のスチュワードシップ活動に対しては、昨年5月のスチュワードシップ・コード改訂以降の機関投資家の変化について40.4%が好ましい変化があると回答。「変化は起きつつあるが機関投資家の間で二極化しつつある」と答えた割合は13.5%、「とりたてて大きな変化は感じられない」と答えたのは45.6%だった。

「機関投資家に対して具体的な長期ビジョンを示しているか」との問いについては、70.5%が「長期ビジョンを示している」と回答。長期ビジョンの期間については、72%が3-5年程度の中期経営計画期間だった。IRミーティングにおける機関投資家の議論の時間軸については、経営戦略に関しては56.5%が「中長期視点になってきている」と回答した。

「機関投資家のコーポレート・ガバナンス報告書の活用は進んでいるか」との質問には、76.7%が「大きな変化は見られない」と回答。「進んでいると感じる」と答えたのは14.4%。統合報告書の活用進捗についても、73.9%が「大きな変化は見られない」と回答し、「進んでいると感じる」と答えたのは17.5%だった。機関投資家との面談の年間延べ回数の平均は、国内外合わせて183回だった。面談対応者をどのような理由で決めるかについては、回答企業への貢献度・過去の面談の質で選ぶ割合が最も高く、続いて株式保有比率だった。

ESG・CSR活動

ESG・CSR活動における主要テーマ トップ10

IRにおいて自社から情報発信をする際に、非財務情報に関する「ESG」「CSR」「サステナビリティ」「CSV」「SDGs」の用語をどれだけ使っているかとの質問に対しては、最もよく使われている用語が「CSR」、続いて「ESG」「サステナビリティ」「SDGs」「CSV」だった。

ESG・CSR活動の目的については、「企業価値向上とリスク低減効果」と答えた企業が50.9%、「企業価値向上」と答えたのは25.5%、「社会貢献」と答えたのは15.8%だった。さらに、大企業は「企業価値向上」を重視する傾向があり、小型株に分類される企業は「社会貢献」を目的に挙げる傾向にあった。

ESG・CSR活動における主要テーマについては、コーポレートガバナンス(67.4%)が最も多く、続いてダイバーシティ(43%)、気候変動(36.3%)、人権と地域社会(33.8%)、健康と安全(32.5%)、製品サービスの安全(30.5%)、リスクマネジメント(26.7%)、情報開示(21.5%)、サプライチェーン(17.9%)、取締役会構成・評価(14.2%)だった。最も低かったのは、「税の透明性」(0.5%)、紛争鉱物(0.6%)、少数株主保護(0.8%)、不祥事(2.3%)、腐敗防止(3.7%)、森林伐採(5.5%)だった。

SDGsへの取り組み状況については、24%が「知っており、取り組みを始めている」と回答。40%が「知っており、取り組みを検討中」、23%が「知っているが、当面取り組む予定はない」、10%が「聞いたことがあるが、内容はよく知らない」、3%は「聞いたことがない」と回答した。

GPIF

GPIFが選出した3つのESG指数(FTSE Blossom Japan Index、MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指、MSCI 日本株女性活躍指数)の選定について、61.7%が「評価する」と答えている。超大型株と大型株に属する企業では、「ESG指数の運用開始によって、社内でのESGに関する意識、議論、組織体制、活動に変化があった」との回答が7-8割を占めた。ESG指数の選定を機に、「MSCI」「FTSE」と対話や問い合わせを行った企業は25%だった。

GPIFのスチュワードシップ活動全般への取り組みについては、74.1%が評価すると回答。「機関投資家とのミーティングでGPIFの話題がでるか」との問いについては41%があると答えた。GPIFへの期待としては、長期的視点での対話の働きかけ(対運用会社、運用会社を通じた証券会社)、中長期的視点に資する人事・評価などの制度面をふくめた運用会社の変革促進の取り組み、時価総額の小さい企業を含めたESG投資や直接的・間接的なスチュワード活動をあげた企業が多かったという。

今回の調査結果について、GPIFは、中長期的な企業価値向上のために、中長期的な視野に立ったエンゲージメント活動が行われるよう運用受託機関に働きかけると述べている。エンゲージメントについては、財務情報のほか、統合報告書をはじめとしたESG情報の開示が極めて重要であるとした。

小松 遥香

オルタナ編集部。アメリカ、スペインで紛争解決・開発学を学ぶ。趣味は、大相撲観戦と美味しいものを食べること。