石炭火力発電所の新設で健康被害が拡大―NGO警告
国際環境NGOグリーンピース・ジャパンと気候ネットワークは、日本の石炭火力発電所から排出される大気汚染物質の拡散を示す「石炭汚染マップ」をweb上で公開した。国内では今後新たに43基の石炭火力発電所が計画されており、CO2排出量の拡大だけでなく、ぜんそくや肺炎の原因となるPM2.5などの大気汚染物質の拡散が懸念される。グリーンピースらは同発電所の計画における健康影響評価が不十分であり、すべての発電所が稼働すれば、数千万人の健康に悪影響を与えると警笛を鳴らす。(箕輪弥生)
石炭火力発電所による健康影響の分析を報告するラウリ・ミルヴィエルタ グリーンピース上級国際キャンペーナー(中)
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世界では建設・運転の中止が進んでいる石炭火力発電所だが、日本では110基以上が稼働し、今後43基の新設が予定されている。これらの計画が全て実行されると、国内の石炭火力発電所から排出されるCO2は2030年に約3億トンにのぼり、「パリ協定と完全に分離する」(気候ネットワーク平田仁子理事)状況となる。
新設計画は、温暖化を加速させるだけでなく、周辺の住民の健康への影響も懸念される。グリーンピース・ジャパンは計画されている石炭火力発電所から排出される大気汚染物質、特に健康被害との関連性が高い、二酸化窒素(NO2)、二酸化硫黄(SO2)、PM2.5の排出シミュレーションマップ「石炭汚染マップ」を作成し、web上で公開した。
これによると、千葉、兵庫、福島、茨城など関東、東北、瀬戸内のエリアで最も影響が顕著で、計画中の発電所の半径10キロ以内には1200を超える学校・病院が含まれるという。
PM2.5をはじめとした大気汚染物質は肺がん、ぜんそくなどの呼吸器系疾患や心臓血管疾患への影響が高いことが研究で明らかになっている。グリーンピースのラウリ・ミルヴィエルタ大気汚染部門上級キャンペーナーは、40年間の稼働期間で6 万人が早期死亡するリスクがあると分析し、「複数の石炭発電所によって累積される健康影響について影響下の自治体に情報を開示すべきだ」と話した。
国内で計画されている石炭火力発電所の数は世界でも突出しており、ラウリ氏は「新設の継続を続ける日本は世界から孤立」しており、「健康被害のない自然エネに転換するという選択肢を日本は真剣に検討すべきだ」と提言した。
石炭汚染マップ:https://act.greenpeace.org/page/21550/petition/1?_