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不確かな時代に変革をもたらす30の気候変動・社会課題の解決策を紹介

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Image credit: Greg Rakozy

フォーラム・フォー・ザ・フューチャーの新たなキャンペーンでは、来たる2025年の1年間をどう生き、どう働くかを抜本的に見直そうとする個人や組織に向け、役立つ30事例を紹介する。キャンペーンは、サステナビリティの取り組みの最前線ですでに行われている成功事例やイノベーション、それらから学べることに焦点を当てることで、実際にどう変革を起こせばいいのかを学べるようにし、希望を再び抱けるようにすることを目指している。(翻訳・編集=小松はるか)

『持続可能な未来:地球が機能する方法を再考する』は、2035年までに途上国への支援額を官民で少なくとも年間1.3兆ドル(約200兆円)に増やすことで合意した、国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)に合わせて公表された。これにより、低炭素経済への移行や異常気象への適応を支援するための資金とともに、途上国は同年までに、先進国から年間3000億ドル(約46兆円)の気候変動資金を受けとる予定だ。しかし、多くの人が異議を唱えているように、その総額は必要な金額にはほど遠く、COPそのものが有効性や存在意義を問われる事態に直面している。

こうしたなか、英国で1996年に誕生した非営利組織フォーラム・フォー・ザ・フューチャーは、良い変化をもたらす30の参考事例「ブライト・スポッツ(未来を照らす明るい材料)」のうち6事例を公表した。残りについては、2025年の1年間を通し、また2025年11月に開催予定のCOP30に合わせて段階的に公開されるという。

事例の一部を紹介する。

Comunidad y Biodiversidad (COBI 、コミュニティと生物多様性)
メキシコの161のコミュティで小規模な漁業者と連携する非営利組織。健全な海と生活手段を実現するために地域に根ざした解決策を協創する。COBIの市民科学(市民が主体となって行う科学研究)モデルは、歴史的に過小評価されてきた集団を意思決定に巻き込みながら、地元漁師に権限を与え、彼らのレジリエンスを高めていこうとするものだ。

Safi Organics
ケニアで最も急成長している有機肥料製造会社の一つ。同社の肥料は、その地域で手に入るもみ殻などのバイオマス廃棄物を使って製造されている。農家の投資を大幅に削減しながら、2万戸以上の小規模農家の収量を増加させるべく最先端テクノロジーを活用する。

Our Zero Selby
英ノース・ヨークシャーでコミュニティが主導する形で行われている活動。インクルージョンやスキル、仕事、健康、ウェルビーイングの課題に取り組みながら、CO2排出量の削減にも力を入れる。住民の声や希望に基づき、住宅のエネルギー効率を高め、廃棄物を減らし、住民の支出も減らす実用的なアイデアや支援を提供する。

フォーラム・フォー・ザ・フューチャーが毎年行う主力キャンペーン「The Future of Sustainability(サステナビリティの未来)」は、世界はいまどのように、なぜ変化しているのか、未来にどんな影響があるのかを考えるものだ。2024〜2025年の同キャンペーンのテーマは「世界が機能する方法を再考する」。

机上解析や調査を重ね、サステナビリティのこれからについて探求してきたフォーラム・フォー・ザ・フューチャーの20年以上の経験を生かし、変革の6つの特徴と、その特徴に当てはまる30の取り組みを取り上げるという試みだ。

フォーラム・フォー・ザ・フューチャーの最高責任者であるサリー・ユレン博士はこう話す。

「非常に長い間、社会や気候変動の取り組みは、意図は良くても、早急に必要とされている変化、例えば暮らしや仕事での革新的な変化といったものを推進できていませんでした。COP29はいくつかの分野では成果がありましたが、多くの問題を提起しました。しかし、それが気候変動資金であれ、新技術に関する約束であれ、現状の取り組みでは全く不十分であり、十分な速さで推進できていません。この不確かな状況に対し、今回のキャンペーンでは変革が実際にどう生み出されるかを学べる成功事例を紹介しています」

今回のキャンペーンは、フォーラム・フォー・ザ・フューチャーが、米産業機器メーカーのトレイン・テクノロジーズから支援を受け、アースショット賞ロックフェラー・フィランソロピー・アドバイザーズと共に立ち上げたものだ。

アースショット賞の賞・ポートフォリオ部門担当者のクリス・ラージ氏は「イノベーターが環境問題への取り組みの鍵を握っています。スタートアップの創業者であれ、市の職員であれ、NGOであれ、先住民のリーダーであれ、政策立案者であれ、私たちはこうした独創性のあるチェンジメーカーに常に驚かされ、刺激を受けています。私たちの地球を守り、修復するために、そうした人たちを早急に見つけ、調査し、資金を提供し、パートナーになるのが私たち全員の責務です」と話す。

変革に欠かせない6つの特徴とは?

30事例に選ばれているのは、変革につながる以下の6つの特徴のうち、1つ以上を有しているものだ。

(1)社会・経済システムの目標を転換する。
(2)サステナビリティの課題と、それを生み出した過去の不均衡の根本原因を突き止める。
(3)新しいビジネスモデルや統治モデルから新しい製品・サービスに至るまで、共有する課題に異なる視点を取り入れ、物事を新しい方法で行う実験を可能にする、新しいコラボレーション方法を育む。
(4)長きにわたり発展を妨げてきたパワー・ダイナミクス(権力の力学)を再形成する。
(5)規模を拡大し、また他の地域でも5〜10年以内に変化を生み出せる可能性がある。
(6)物事を行う方法を転換するのに必要なスキルや専門性、また主体性を成長・発展させられる。

ロックフェラー・フィランソロピー・アドバイザーズのオルガ・タラソフ氏は「誰もがより早急に、大きな規模で、上手く、大胆に取り組むときです。そうするために、私たちは考察やアイデアを結集させ、前向きなだけでなく、未来を見据えなればなりません」と言う。

「私たちには、ポジティブで持続可能な未来を描き創造するのは贅沢(ぜいたく)ではなく、必要なことだと保証する責任があります。グローバル・マジョリティ(黒人やアジア人、グローバルサウスの先住民などの世界の多数派)の視点、数世紀にわたって受け継がれてきた地域社会の知恵や伝統に根ざした視点を中核に据え、変革の道筋を描く必要があるのです。紹介する事例はそれを可能にするものです。どうなるのかではなく、何ができ、どうすべきかを根本的に再考し、それらに投資するのに事例が役立つでしょう」