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メタやグーグルが取り組む自社施設のサステナビリティ FSC認証材の使用率を拡大

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Forest Stewardship Council
カリフォルニア・シリコンバレーにあるメタのオフィスMPK 21 | Image credit: Meta

企業が自社の施設を新設する際に、自らのサステナビリティ方針に基づき建設を行うことは非常に重要だ。そうすることで環境への負荷を低減するだけでなく、組織の内外に自社の理念や取り組みを伝えることができ、企業価値の創造にもつながる。ここでは大規模な施設建設とサステナビリティ目標の達成に同時に取り組むビッグテック、メタとグーグルのFSC認証材を最大限に活用したオフィス建設を紹介する。2社の建設プロジェクトは2022年FSCリーダーシップ賞を受賞している。

昨年12月に開催されたCOP15(国連生物多様性条約第15回締約国会議)の影響で、生物多様性の損失という重大な問題に注目が集まり、企業や金融機関の計画にも生物多様性の損失を食い止め、回復に向かわせるという「ネイチャー・ポジティブ」の概念が取り入れられるようになっている。世界経済フォーラムが発表した『グローバルリスク報告書2023』では、「生物多様性の損失や生態系の崩壊」が今後10年間に起こりうる世界的に深刻なリスクの第4位に入った。

責任ある管理が行われている健全な森林は、生物多様性を支え、水質を維持し、長期間にわたり二酸化炭素を隔離し、膨大な量の酸素を生み出す役割を果たす。

環境事業を手がけるエコトラスト(オレゴン・ポートランド)とワシントン大学(ワシントン・シアトル)の査読付き調査によると、森林管理協議会(FSC)の基準で管理された持続可能な森林は、気候変動による影響を緩和するために大量の二酸化炭素を蓄積できるという点で重要な役割を果たしていることが分かった。調査では、オレゴン州西部とワシントン州の64地点の100年間にわたる森林管理を数値化した。FSC認証を取得した森林とその木材を使った製品の炭素貯蔵量は認証を取得していない平均的な森林に比べて13〜69%多く、平均すると29%多かった。

製品や消費者と接点を持つ場面でサステナビリティに力を入れる企業が多い中、メタとグーグルの2社のビッグ・テックは、自社の「ネイチャー・ポジティブ」な取り組みの基盤として、大型施設の建設・改装事業に取り組んでいる。

メタはFSC認証材の使用を施設の建設計画に組み込む

MPK 21 | Image credit: Meta

フェイスブックやインスタグラムを運営するメタが世界に所有するオフィスやデータセンターでは、5年以上前からFSC認証材の使用がサステナブル設計・建築の基準に含まれている。メタが所有し建設するデータセンターでは、新たに常設するすべての木材をFSC認証材にすることが建設計画の仕様書に記載されている。2017年の時点で、同社のデータセンターではFSC認証材が平均して94%使われており、面積にすると約157万平方メートルに及ぶ。

これらの目標を達成するために、メタではFSC認証材の使用を建設計画に組み込み、世界のすべての拠点でルールが遵守されるよう設計・建設を手がけるパートナー企業と連携する。リードタイムが長くなったり、コロナ禍などの世界情勢の影響による調達の遅れといった複雑な問題や制限が発生する場合には、基準を緩和する前にあらゆる選択肢を検討するため、同社のサステナビリティ部門がゼネコンや木材供給業者と連携して問題に対処するという。

MPK 21 | Image credit: Meta

同社では2015年、「健康でサステナブルな素材の基準」の一つにFSC認証材の使用を含めた。それ以来、自社の所有する不動産に使用する常設の木材の少なくとも5割にFSC認証材が使われていると推定される。

最近竣工した西海岸にある約4万1000平方メートルの建設事業においても建物の98%にFSC認証材が使用されている。全てのオフィス開発において、サステナビリティ分野の専門家がメタのグローバルデザイン・建設チームを指導し、サポートしている。

しかし、課題もある。世界40カ国に180以上のオフィスを持つメタは、市場でFSC認証材を入手する難しさや価格プレミアムといった課題に直面している。定めたルールを可能な限り遵守する取り組みの中には、FSC認証製品を優先的に使うように地域のプロジェクトチームや木材供給業者を育成することも含まれている。

同社のこうしたサプライヤーを支援する体制によって、木材供給業者などがメタの要求に応じてFSC認証を取得し、全ての資材の加工・流通過程の管理にも取り組む事例が誕生している。建設発注者によるモチベーションの向上や教育は、時として現地の企業に不足していることでもあり、重要な取り組みだ。

メタでシニア・サステナビリティ・プログラム・マネージャーを務めるアムルタ・スダルカル氏は、「これらの成果は当社のサステナビリティ目標にとっても有益であり、現地の市場やサプライチェーンに持続的に良い影響を与えるものです。われわれの購買力を活用し、持続可能な森林管理の基準を満たすよう開発チームに責任を持たせることで、マーケットの変革をさらに促すべく取り組みを続けていきます」と語る。

グーグルも施設建設でサステナビリティを基盤に

グーグルのオフィス「Bay View」 Image credit: Iwan Baan

グーグルのシリコンバレーにある新オフィス「ベイビューキャンパス」「チャールストンイーストキャンパス」の建設でもサステナビリティは基盤となる考え方だ。両オフィスの建設はグーグルが初めてゼロから手掛けた事業で、同社のバリューである「持続可能な建設と運営」「良き隣人になる」「最高の職場をつくる」を体現するものだ。

隣接する2つのキャンパスは、グリーンビルディング認証「LEED v4」のプラチナ認証や、最先端のサステナビリティ基準を掲げる「リビング・ビルディング・チャレンジ(LBC)」のペタル認証(ベイビューではウォーター・ペタル認証、チャールストンイーストではマテリアルズ・ペタル認証)を取得している。こうした認証の取得はプロジェクトに取り組むチームにとって持続可能なデザインや性能を追求する上で強力な支えとなり、さらに建材産業においてサステナビリティを推進する同社のストーリーを伝える信頼性の高いプラットフォームをも提供する。

両オフィスでは当初から、廃棄された資材や健全な化学物質を使った資材を選ぶなどグーグルのサステナビリティ目標を推進する建設素材の使用を優先してきた。サステナブル資材に関する多くの取り組みを通して、デザイナーやエンジニア、建設チームを含むチーム全体が「サステナブルで人間中心の建物をつくる」という共通のビジョンを持つことで、長らく行われてきた建設素材の選択方法を見直すことができるようになった。

Bay View | Image credit: Iwan Baan
Bay View Campus | Image credit: Iwan Baan

サステナビリティ資材に関する主要目標の一つに掲げられているのが、FSC認証を取得した責任ある管理が行われた森林からの木材を可能な限り調達することだ。ベイビューキャンパスに使われている新たな木材の96%以上がFSC認証を取得したもので、サステナブルな建設・運営を行うというグーグルの目標を後押ししながら、健全でバイオフィリックな(自然との結び付きを感じられる)職場環境を提供している。

その一例が、会議室の外側に使われているFSC認証を取得したカバノキの合板だ。この合板は建物内のウェイファインディング(目的地まで分かりやすく案内する仕組み)として機能するだけでなく、木の自然な模様を取り入れることでバイオフィリックな要素を付加する役割を果たす。

建設中のチャールストンイーストでは、一時的に使われる建設資材や永続的に使われる資材の両方にFSC認証材を100%使うことを目指している。LBCのペタル認証の基準に基づいた目標を達成するために、プロジェクトチームは建設が始まった当初からコンクリートの型枠や断熱材などの利用に関して責任ある調達を優先してきた。FSC認証材は建物の設計の大きな特徴だ。構造フレームはFSC認証のCLT(直交集成板)に覆われている。

FSC認証材の調達は世界の森林への負荷を最小限にするだけでなく、これからの数十年間で、建物や自然、人間が調和して共存できる場所をつくるというグーグルのビジョンを推進するものでもある。ベイビューキャンパスとチャールストンイーストキャンパスで進めているサステナビリティ改革は、米国のみならず世界中の拠点にも波及効果をもたらし、各チームがプロジェクトを通してグーグルの野心的なサステナビリティ目標を達成する助けとなっている。