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ブランドが社会とつながる、持続可能な未来へ  「サステナブル・ブランド ジャパン」 提携メディア:SB.com(Sustainable Brands, PBC)

消費者の3人に2人が「環境破壊や気候変動を回避するために消費を半分に減らして構わない」

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カナダの調査・コンサルティング会社グローブスキャンはこのほど、毎年実施している「健康的で持続可能な生活に関する調査」の2022年版を公表した。調査は、日本を含む31の市場(国・地域)の2万9293人を対象に実施。それによると、気候変動への関心は過去最高に高まっており、回答者の68%が「環境破壊や気候変動を回避するために消費を半分に減らしても構わない」という考えに「大いにそう思う」「どちらかといえばそう思う」と、さらに、18歳以下の子どもと暮らす回答者のうち過半数の63% が「子どもたちが環境問題や気候変動を非常に懸念している」と答えた。こうした世帯の回答者は持続可能な暮らしをしたいという強い願望を持ち、実際に大きな変化を起こしている割合が平均を上回った。

2019年から始まった「健康的で持続可能な生活に関する調査」は今年6・7月、オンラインで各国約1000人を対象に行われた。今回の調査には、ブラジルのNPO「Akatu Institute」やイケア、広告代理店「M&C Saatchi Group」、ニューヨーク大学、Visa、プロクター・アンド・ギャンブル、ペプシコ、リーバイ・ストラウス、レキットベンキーザー(薬用石鹸のミューズ、除脱毛ブランドのヴィートなどのブランドを所有)、WWFインターナショナルの協力の下、グローブスキャンが設計した。調査の目的は、世界の消費者の考え方、健康的で持続可能な習慣を実践することを可能にするものは何で、逆にそれを妨げるものは何かを理解することだ。

調査対象の31の市場(国・地域)

物価上昇がサステナブル消費にもたらす影響

物価上昇などの生活費危機は、パーパスを持つ製品・ブランドによりお金を払いたいという消費者の考え方にも影響をおよぼしている。生活費の上昇により、「社会・環境に良い影響をもたらす製品・ブランドによりお金を払いたい」と回答する消費者は減少し、特に欧州でその傾向が高い。

また世界の75%の消費者は、「環境に配慮した製品の価格が昨年よりも高くなった」と回答。これについては急激なインフレを背景に、実際に価格が上昇している。一方で、中国と日本の消費者はあまり影響を受けていないと感じているようで、高くなったと答えた割合は低かった。中国の消費者にいたっては、2021年の調査に比べて、持続可能な製品によりお金を払ってもかまわないと答える数がわずかに増加し、全体的な傾向とは逆行する結果となった。

31の市場のうち23の市場は、生活費の上昇に「大きな影響を受けている」と回答。特に、新興国の回答者は「最も影響を受けている」と感じていることが分かった。持続可能な製品に割増料金を支払える、支払いたいと考える人が減る中、企業・ブランドにとって手頃な価格と入手のしやすさを実現することがますます重要事項になっている。

今回の調査パートナーで、「M&C Saatchi LIFE」の共同創業者トム・ファース氏は、「多くの消費者は、望みながらも実現できていない、より健康的で持続可能なライフスタイルを実現するために企業・ブランドのリーダーシップを必要としている。特に購買力の低い人、若者にその傾向がある」と語る。

「サステナブルな消費行動が増えているという良い変化は起きているものの、どの国においても、サステナブルな消費行動をとりたいという願望と実際の行動とのギャップは依然として広がったままです。サステナブルな消費行動を増やす上で、企業・ブランドにとって重要なことは、消費者が持続可能な暮らしを実践しやすくすることです」(ファース氏)

例年と同様、消費者の間でより健康的で持続可能な生活を送るために行動を変えたいという願望が広がっていることが分かった。一方で、そうした願望と実際の行動とのギャップは根強いままだ。特に、購買力が低い消費者、若い消費者、新興国の消費者の願望と行動とのギャップは大きい。

では、企業・ブランドのマーケティング・コミュニケーションについて、消費者はどう捉えているのだろうか。調査によると、グリーンウォッシュへの警戒が高まる中でも、消費者はサステナビリティに関するマーケティング・コミュニケーションに引き続き関心を持っている。企業のサステナビリティに関するメッセージを聞いたり、読んだりした人の80%が「企業によるコミュニケーションを信頼している」と回答した。さらに、ほとんどの消費者が、「企業・ブランドの環境への配慮が購入の意思決定に重要な役割を果たしている」と回答。この傾向はあらゆる商品カテゴリーにおいて見られたが、特にクリーニング製品やパーソナルケア製品、食品・飲料において顕著だった。

しかし、環境への取り組みに関するメッセージが消費者に十分にリーチしているわけではない。調査によると、「環境への取り組みに関するメッセージを見たり、読んだり、聞いたことが何度かある」と答えた消費者は50%に過ぎなかった。一方で、こうしたメッセージを受け取った消費者は、製品に関する情報を信頼し、購入するなど、前向きな反応を見せていることも分かっている。企業・ブランドには、消費者を導き、より多くのコミュニケーションをとるチャンスがまだ残されていると言える。

調査結果の概要

主な調査結果は以下の通り。

○気候変動や環境問題に関する懸念は高まり続けている。65%の回答者は、気候変動を「非常に深刻」と回答した。一方、調査対象の17の市場で2003年に行った調査で、気候変動を「非常に深刻」と回答したのは48%だった。

○世界の40%の回答者が気候変動を理由に子どもを持たない、もしくは、持たないだろうと回答した。特にそう答えた割合が高かった国はエジプト、韓国、トルコ、香港、インド、タイだった。

○回答者の68%が「環境破壊や気候変動を回避するために消費を半分に減らしても構わない」という考えに対し、「大いにそう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した。特に気候変動を懸念している子どもがいる家庭では85%がそう回答した。

○50%は環境に配慮したライフスタイルに大きく転換したいと答えたが、過去1年に環境への影響を減らすために「大きな変化」を起こしたと回答したのはわずか26%だった。

○2019年から調査を続けてきた23の市場の55%の消費者は、社会や環境を良くすることに取り組む製品やブランドによりお金を払うことに「大いに同意する」「どちらかといえば同意する」と回答。しかし、この数字は2021年と2020年の58%から減少している。大きく減少している国は、オーストラリア、カナダ、ドイツ、インドネシア、イタリア、ナイジェリア、ペルー、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、英国だ。

○今後10年以内にほとんどの人が持続可能な生活を行うようになるだろうと考える人の割合は54%。そうならないと考える人の割合は18%だった。近い将来、持続可能な暮らしを実現できると考える人は、他の人に比べて持続可能な暮らしを送る強い意志を持ち、過去1年に大きく習慣を変えている。調査は、健康的で持続可能な生活が将来のあるべき姿だと考える人が多ければ多いほど、消費者の間で大きな行動変容が起きるだろうと指摘している。