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グッドライフアワード最優秀賞受賞団体の信念/高校生が社会課題に目を向ける意義とは

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SB国際会議2023東京・丸の内

(セッション後半より)入江氏、石井氏、仲地氏、早川氏

Day1 イノベーションオープン

環境に良い活動を続ける団体の信念、そして、高校生が地域の社会課題に目を向けることの意義とは――。イノベーションオープンと題したセッションでは、環境省主催の「グッドライフアワード」の2022年度の最優秀賞に輝いた団体と、サステナブル・ブランド ジャパンが次世代を担う未来のリーダーを育てることを目的に2020年から日本旅行との共催で行っている「SB Student Ambassador ブロック大会」の関係者らが、前半と後半に分かれて登壇し、それぞれの活動のインパクトを語った。(松島香織)

第10回グッドライフアワード環境大臣賞最優秀賞記念プレゼンテーション
「懐かしい未来を里山からつくる『里の家』~風の子、海の子、里山体験~」

パネリスト
加藤久乃・環境省 地域政策課地域循環共生圏推進室 地域政策課地域循環共生圏推進係長
加藤正裕・一般社団法人 里の家 代表理事
(所属・肩書は開催当時)

グッドライフアワードから地域循環共生圏の実現へ

グッドライフアワードは、環境に優しい社会の実現を目指して「環境と社会によい暮らし」に関わる活動や取り組みを評価する、環境省主催の表彰制度だ。前半のセッションには、その第10回、2022年度の環境大臣賞最優秀賞を受賞した、気候変動に対応する人材の育成を掲げる一般社団法人里の家(浜松市)の加藤正裕氏と、環境省の加藤久乃氏とが登壇した。

加藤久乃氏

環境省は、自然や人材など地域ごとに異なる資源が循環し、自立・分散型の社会を形成する「地域循環共生圏」をローカルSDGsと位置づけ、持続可能な循環型社会の実現を推進している。グッドライフアワードは、この地域循環共生圏の認知を広げるプロジェクトの一つで、同省の加藤氏はアワードのキャッチフレーズ「みんなの力で社会は変わる!みんなの力が社会を変える!」を紹介し、「今日はサステナビリティの意識が高い方々が来場されている。来年度はぜひ応募していただき、一緒に地域循環共生圏を実現したい」と呼びかけた。

加藤正裕氏

里の家は、昔ながらの土間やかまどのある築120年の古民家を拠点にしており、里山体験の「風の子」、里海体験の「海の子」などの子ども向け体験プログラムを提供している。代表の加藤氏自身が子どもの頃に体験した「懐かしい風景」を再現し、人による経済・社会活動で失われてしまった自然への回帰を提唱している。プログラムにはこれまで延べ5万人が参加した実績があり、今回のアワードでは自然体験からライフスタイルを考える事業である点が評価された。

加藤氏は、「原体験を通して本来の自分を確立することができる」と活動の信念を語り、「この信念をもとに、継続して子どもたちの体験プログラムを提供してきたことが評価しされたのではないか」と受賞の喜びを表現。一方、「昔ほど自然に触れることが無くなり、地域や家庭内でのつながりなど、大切なものがたくさん失われた。日本では自然環境の変化から社会システムを見直すという、根本的な問題が議論されていない」と危機感をあらわにした。

次世代を支える:SB Student Ambassadorプログラムのインパクト

ファシリテーター
入江遥斗・nest(SB Japan Youth Community)プロデューサー
横浜国立大学 都市科学部/一般社団法人アクトポート 代表理事 
パネリスト
石井智・日本貨物鉄道 経営企画部 グループリーダー
仲地梨星・白鵬女子高等学校 普通科 国際コース
早川千織・日本旅行 教育事業部
(所属・肩書は開催当時)

自治体と共にまちづくりに貢献できるプログラム

早川氏

イノベーションオープンセッションの後半は、2022年度開催「SB Student Ambassador ブロック大会」に参加した高校生らが登壇し、プログラムから得られたサステナビリティの知見や、参加したことでどのような意識や行動の変化が起こったかについて話した。

サステナブル・ブランド ジャパンの次世代育成プログラムには、高校生を対象にした「SB Student Ambassador(SA)」と大学生を対象にした「SB University(SBU)」、教員を対象にした「ESD Teacher’s Camp」がある。そして、SBUの卒業生らを中心に、高校や大学を卒業後も引き続きサステナビリティに関する活動ができるプラットフォームとして2022年には「nest」が発足した。

石井氏

そのnestのプロデューサーを務め、SAではメンターとして高校生の活動をサポートしている横浜国立大学の入江遥斗氏は、SAについて、「高校生のアイデアは自分が見ていてもすごいと思う」「自分の学校では出会えない、他校の生徒と交流できることが魅力ではないか」と語った。

SAは毎年、「SB StudentAmbassador」の選考に向けての事前学習の場として、全国で地域ブロック大会を開催しており、第3回目は9大会に計194校の1253人が参加した。このブロック大会について、日本旅行の早川千織氏は、「各地域の特色にあったテーマを設定しており、自治体と一緒に取り組み、まちづくりに貢献できるプログラムにしている」と紹介。「高校生がリアルに社会課題について議論することで、新たな発想が生まれる」と強調した。

地域ブロック大会に参加した高校生は、そこで得たヒントをもとに地域の社会課題などをテーマに論文を作成し、選考を経て2月のSB国際会議への出場権を得る。国際会議では2日間、さまざまなセッションに触れたあと、「SA全国大会」の場で一堂に介し、それぞれが論文のテーマに選んだ問題について発表する場が与えられる。2023東京・丸の内には15校の58人が参加した。

仲地氏

そのうちの一人、本セッションに登壇した白鵬女子高等学校の仲地梨星氏は、SAの論文のテーマに、トラック等で行われている貨物輸送をCO2排出量が小さい鉄道や船舶に転換する「モーダルシフト」を選んだことを説明した。このテーマは、SAに参加し、友人から聞いて知ったという。プレゼンテーションのためにモーダルシフトを表すロゴマークを考案したのが工夫した点で、仲地氏は「モーダルシフトの認知度を挙げることが必要だと思いマークを考えた。SDGsは、自分の周りにある身近なことから取り組めるものだと理解できた」と続けた。

日本貨物鉄道の石井智氏は、SAを通じて出された仲地氏ら高校生のアイデアに「コンテナを防災に活用とか、自分では出てこない柔軟な考え」と驚く。「物流は一般的に意識してもらいにくいので、高校生のアイデアを参考に当社の認知度高めたい」と話した。

松島 香織 (まつしま・かおり)

サステナブルブランド・ジャパン デスク 記者、編集担当。
アパレルメーカー(販売企画)、建設コンサルタント(河川事業)、自動車メーカー(CSR部署)、精密機器メーカー(IR/広報部署)等を経て、現職。