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パーパスドリブン経営推進における「B Corp」認証という選択肢

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SB国際会議2023東京・丸の内

(左から) 佐藤氏、岡氏、河村氏、吉田氏

Day1 ランチセッション

企業のパーパス志向が高まるなか、その指標として注目を集める国際企業認証「B Corp(ビー・コープ)」。日本でも取得する企業が少しずつ増えているが、情報量が少ないせいか普及にはほど遠い感がある。なぜ普及が進まないのか。またどのような可能性があるのだろうか――。本セッションでは、パーパス策定などを行う広告代理店、認証を支援する認定コンサルタント、実際に認証を取得した企業がB Corpについて討論。理解促進を図った。(いからしひろき)

ファシリテーター
佐藤友亮・博報堂 第五ビジネスデザイン局 第五アカウント部 部長
パネリスト
岡望美・B Corp認証取得支援コンサルタント
河村晃平・クラダシ 取締役執行役員CEO
吉田啓一・博報堂 MDコンサルティング局 マーケットデザインコンサルタント

パーパスが浸透しきれない現実に限界

吉田氏

冒頭、博報堂の吉田啓一氏が、「パーパスがバズワード化している」と発言。クライアントからのパーパス作成依頼は増えているが、一種の流行に乗る形となり、本来の目的が希薄化しているという。吉田氏は、広告代理店としてパーパスの本来のあるべき姿を伝える責務を認識しつつも、「それらが浸透しきれない現実に限界を感じている」と話す。そうした中、アセスメントがあり具体的なゴール設定ができるB Corpは、パーパスを具体的なアクションに落とし込むツールとして機能するのではないかと考えた。

岡氏

そうした吉田氏の問題提起を受け、B Corp認証取得支援コンサルタントの岡望美氏がB Corpについて説明した。B Corpは米国発祥の国際企業認証で、従業員の福利厚生から慈善事業、CSR、サプライチェーンの管理、原材料の調達など、さまざまな要素において、「パフォーマンス」「説明責任」「透明性」などで高い基準を満たす企業を認定するものだ。現在89カ国で6000社以上が取得。日本では20社が取得している。

国際基準のアセスメントを受けることに価値がある

河村氏

クラダシは2014年創業で、フードロス手前の食品をオンライン上でマッチングするECサイトを運営している。B Corpは2022年の6月に取得した。同社CEOの河村晃平氏によれば、B Corpを認識したのは3年前。デザイン会社から取得を勧められ、自社のビジネスモデルや、ミッション・ビジョン・バリューをより世間に浸透させるために応募し、2年もの歳月をかけた。

B Corp取得後の変化ついては、「ぶっちゃけ、そんなに大きな変化はない」と河村氏は冗談交じりに言いつつ、メディアからの取材が増えたり、取得した企業同士で連帯感が生まれたりといった効果は、すぐにあったと打ち明けた。

それに対して、岡氏は「B Corpは旅。プロセスにすごく価値がある」と補足。アセスメントに応えていく中で、ダイバーシティなどの社会課題に対する自社の立ち位置や方向性が明確になるからだ。岡氏の発言に河村氏も同意し、そうした効果が「パーパスドリブン経営を前進させる」と力を込めた。

佐藤氏

ただし河村氏は、認証取得は簡単ではなかったことも明かした。まず、アセスメントに対する人員確保という点だ。クラダシでは5人で対応したが、これは当時の全社員数の2割弱に相当する。また、国際認証であるため、日本の基準や常識が通用しなかったという。特に苦労したのは英語による200に及ぶ設問への対応で、宗教やマイノリティなど日本ではあまり想定されない設問については相談できる相手もおらず、河村氏は「その時、岡さんがいればよかった」と思わず苦笑した。

B Corpの定着が日本で遅れていることについては、吉田氏が「SDGsのように大きなうねりにならないと、日本企業はなかなか重い腰を上げない」という自らの業務で感じた感想を述べると、岡氏は「まずやってみること。国際基準のアセスメントを受けるだけでも価値がある」と応えた。

最後に、ファシリテーターを務めた博報堂の佐藤友亮氏は、「パーパスドリブンを推進するための選択肢の一つとして、B Corpは有効だが、取得して終わりではなくそこから旅が始まる。手段の目的化に至らないことが大事で、むしろその先の旅を楽しめる胆力が必要」とまとめ、セッションは終了した。

いからし ひろき

プロライター。2人の女児の父であることから育児や環境問題、DEIに関心。2023年にライターの労働環境改善やサステナビリティ向上を主目的とする「きいてかく合同会社」を設立、代表を務める。