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スペインの有力ブランドECOALFが日本での事業3周年、ファッションの力でサステナビリティを推進する

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ECOALF創業者のハビエル・ゴジェネーチェ氏(左)と下川氏(3月2日渋谷のイベントにて)

ECOALF(エコアルフ)は、リサイクル繊維でできた衣料品をグローバルで展開しているスペインのファッションブランドだ。漁師とともに海洋ごみを回収するなど、海洋環境の改善にグローバルで取り組んでいる。日本事業は2020年3月から開始し、先日3周年を迎えた。コロナ禍の影響で計画通りに進むことはできなかったが、「この期間があったからサステナビリティを考え理解することができた。ファッションだからこそ消費者にわかりやすく伝えることができ、楽しく取り組んでもらえるはず」と三陽商会事業本部コーポレートブランドビジネス部エコアルフ課長 兼 エコアルフ・ジャパン取締役の下川雅敏氏は語る。(松島香織)

日本事業は当初、全国に約50店舗を展開し、欧州と同様、店舗を拠点としたブランディングを進めていく計画だった。だが、コロナ禍の影響で断念。東京・渋谷の通称キャットストリートにあった店舗も一旦閉店するなど、事業計画を大きく変更せざるを得なかった。だが、店舗を持つことにこだわらず、「まず国内の消費者やファッション業界に向けて、エコアルフというブランドをきちんと知ってもらうことに切り替えた」と下川氏は振り返った。

渋谷スクランブルスクエアにある旗艦店
袖のタグや裏地にはエコアルフのメッセージや使用したペットボトルの量などが明記されている(撮影:編集部)

SNSでのコミュニケーションやデジタル技術を活用した情報発信に手法をシフト。その結果、行政や自治体からの問い合わせが多く来たり、SDGsや環境問題に取り組んでいる企業やサステナビリティに関心のある人、特にZ世代や学生が来店するようになった。現在、東京都内に2店舗と大阪に1店舗、ECサイトでは自主運営のサイトのほか、外部サイトのショップなどで商品展開している。

「第2の地球はないのだから」のメッセージと共に企業・団体と取り組む

エコアルフが取り組んでいる、海洋ごみを回収、分別、製品として再生するプロジェクト「UPCYCLING THE OCEANS(UTO)」には、欧州を中心に現在6000人の漁師が参加。2025年までには1万人の漁師との協業を目指している。先日、日本事業が3周年を迎えたことに合わせて創業者のハビエル・ゴジェネーチェ氏が来日。イベントでは、地球上で捨てられるごみのうち75%が海底にあると説明し、「海のキャパシティは決まっていて、こんなことを続けていったらごみでいっぱいになってしまう」と来場者に訴えた。

日本でも本国同様にUTOや、トークセッションやイベントを通じて消費者と共に環境問題を考えアクションを起こす「ACT NOW!」に取り組んでいる。「ACT NOW!」のクリーンアップ活動にはさまざまな企業・団体からオファーがあり、下川氏は「いわゆる清掃活動なので誰にでもできるのに、不思議に思っていた」という。だが、「ファッションを通じると、ごみ拾いや環境問題に比較的入りやすく楽しくできるのだと気づいた。ファッションの力できっかけづくりができれば」。

こうしたエコアルフの「BECAUSE THERE IS NO PLANET B®”(第2の地球はないのだから)」というメッセージと取り組みは、パナソニック ホールディングスとの共創に至った。まず、天然由来成分の高濃度セルロースファイバーで加工したボタンやタンブラーを同社と共同開発。また生花をアップサイクルしTシャツの染料として活用したり、廃棄ハンガーを再利用したりすることなどに発展した。

また、この春は、環境に配慮したプリンティング技術や適正な在庫管理を実現する3Dデジタル技術を提供するエプソンとの共創を開始。先日のイベントでは、エプソンのプリンターで海洋写真を忠実に再現した美しいタペストリーを展示した。こうした日本の企業との共創はゴジェネーチェ氏も評価しているという。「ファッション以外のフィールドとの連携がとても大事。今後も強めていきたい」と下川氏は意欲的だ。

今後の抱負について下川氏は「この数年で、サステナブルファッションのリーディングカンパニーになってきたと手応えを感じている。ただ、エコアルフの服を着ている人を見かけないことはないといわれているスペインに比べると認知度はまだまだ。ブランドメッセージをきちんと伝え、日本での認知度を上げていきたい」と語った。

(撮影・原啓之)

松島 香織 (まつしま・かおり)

サステナブルブランド・ジャパン デスク 記者、編集担当。
アパレルメーカー(販売企画)、建設コンサルタント(河川事業)、
自動車メーカー(CSR部署)、精密機器メーカー(IR/広報部署)等を経て、現職。