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生物多様性はルールメイキングを日本がけん引できるビジネスチャンス

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SB国際会議2023東京・丸の内

左から、高倉氏、丹羽氏、加藤氏

Day1 ブレイクアウト

生物多様性は、企業経営にどのような影響を与えるのか。昨今、TNFD(自然関連財務開示タスクフォース)、SBTs for Nature(自然に関する科学に基づく目標設定)の両フレームワークを中心に、企業が生物多様性に取り組む意義の定量化とKPI設定に注目が集まっている。14日のSB国際会議2023東京・丸の内では「企業に求められる生物多様性――生態系を再生する」をテーマに、取り組みの現場と経営の両面から議論を展開した。(横田伸治)

ファシリテーター
足立直樹・サステナブル・ブランド国際会議 サステナビリティ・プロデューサー
パネリスト
加藤剛・住友林業 資源環境事業本部/脱炭素事業部 副本部長/部長
高倉葉太・イノカ CEO
丹羽弘善・デロイトトーマツコンサルティング合同会社 Sustainabilityユニット 執行役/パートナー 生物多様性に関する包括的戦略策定サービス担当、モニター デロイト

イノカの高倉氏は「生物多様性は脱炭素に次ぐテーマとして国際的に注目されている」と強調。同社は、飼育が難しく生態の研究が不十分なサンゴに着目し、IoTやAIを駆使して人工的にサンゴの生育環境を水槽内に再現する「環境移送技術」を開発した。サンゴ研究の土台を構築した先に、東アジア・東南アジアでの海洋生物多様性のルールメイキングを日本がけん引できるビジネスチャンスがあると語った。

インドネシアの熱帯泥炭地で事業に取り組む住友林業の加藤氏は、既存の森林をも一つの生態系として保全するため、人為的な植林の影響を最小限に抑える大規模プロジェクトを紹介。森林のみならずオランウータンやテングザルといった動物の多様性も守られているといい、衛星やドローンによる観測技術も開発することで、ほかの地域事業へのコンサルティングビジネスに発展できるとの展望も明かした。

デロイトトーマツコンサルティングの丹羽氏は、日本におけるネイチャーポジティブ経済の市場規模を45兆円程度と推計した。その上で、生物多様性が秘めるインパクトをより示すためのデータ収集や開示のプラットフォームが、ビジネスとして成長する可能性を指摘。さらに「枠組みによって企業経営は変わるが、言われたからやるのではなく、本質的に生物多様性に配慮しつつ持続的に事業を展開しなければならない」と、企業経営者層の意識改革が重要であるとの考えも示した。

ファシリテーターの足立氏は3人それぞれの課題感について質問した。高倉氏は「自分は自然と関係ないと考えている企業がまだ多いこと。関係していたとしても、グローバルスタンダードを日本から作っていこうという考えがもっと浸透すべき」とし、加藤氏も同意したうえで、「現地に住んでいる人や実際の生物多様性を考えず、炭素クレジットを数字合わせに使うことがあってはならない。途上国の側に立ってルールメイキングに寄与したい」。

丹羽氏は「消費者側が(サステナブルな商品を選んだり、その企業を応援したりするように)マインドチェンジしなければ、企業はCSRの一環で取り組むという段階で終わってしまう。『生物多様性を守っていてかっこいい』という価値観を、企業とともに作っていきたい」と話した。

横田伸治(よこた・しんじ)

東京都練馬区出身。東京大学文学部卒業後、毎日新聞社記者、認定NPO法人カタリバを経てフリーライター。若者の居場所づくり・社会参画、まちづくりの領域でも活動中。