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木造・木質建築と森林グランドサイクルによる持続可能な社会の実現

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SB国際会議2023東京・丸の内

Day1 プレナリー  

佐々木正人・竹中工務店 取締役執行役員社長

1610年創業の老舗でありながら、常に最新技術を備えて業界の先頭を走り続ける竹中工務店。近年は最新技術の開発で木造大型建築を可能にし、木の復権に一歩一歩取り組んでいる。視線は山にも向かい、林業活性化、持続可能な森林づくりにも取り組んでいる。

「1610年、織田信長の普請奉行だった竹中藤兵衛正高が徳川の時代になって大工として刀を捨て、神社仏閣の造営を生業として名古屋で創業した」と佐々木氏は話し始めた。なぜ木造に力を入れるのか、のヒントになる竹中工務店のルーツである。「1899年に第14代竹中藤右衛門が神戸に出てきて、近代建築を始めた。それを創立として、本年が創立124年」と続けた。

併せて佐々木氏は「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」という社の理念を紹介。「時代の要請に応える技術を身に付けながら社会に最良の作品をお届けしてきた」と歩みを振り返った。最良の作品例として挙げたのは南極昭和基地や東京タワー、東京ドーム、あべのハルカス。いずれも日本初の技術を形にしたと説明し、同社が取り組む木造大規模建築に話を進めた。

「特に都市部において今、中高層の木造建築に一生懸命取り組んでいる」ことを明らかにし、背景に木造建築への規制緩和があったことを説明。「2000年代に入ってから木造に対するルールが変わり、一定の耐火性能を有する中高層木造建築は可能ということになった。2010年代には公共建築での採用が始まり、今は民間建築でもかなり広がってきた」と解説した。

FOREST GATEWAY CHUO

中高層木造建築に対応するため同社が開発したのが「燃エンウッド」と名付けた耐火性能を持つ木造の柱と梁。佐々木氏は「耐火木造部材は2013年からお客様のプロジェクトへの実装を始めた。現在は3時間耐火性能まで認定しているので、高さ制限なく法律上は何階の建物でも木造建築できる」と述べ、大阪木材仲買会館や千葉県のクリニック、江東区の区立小中学校など、同社が手掛けた木造大規模建築を画像で説明した。力を入れて紹介したのは八王子市の中央大学キャンパスにつくったFOREST GATEWAY CHUO 。自分たちの学び舎を造るために学生たちが多摩産材の伐採まで体験したことを、佐々木氏は「自分たちのキャンパスを自分たちでつくった」と表現した。

続いて佐々木氏は、同社が取り組む森林グランドサイクルを動画で紹介した。参加者に伝わったのは、木に活躍の機会を与え、木に関わる人に敬意を表するという考え方だ。そうやって木を使うことにより、同社は森がまちを支え、まちが森を支えるという循環を作ろうと試みている。佐々木氏は森林への目線を強調、「森の産業創出、あるいは社会として持続可能な森づくりを心がけている」と述べた。

佐々木氏は「日本の豊かな森林資源を街づくりに活用する、木として活用するというのは当然だが、林業を活性化し、地域経済、特に地方の経済を活性化し、好循環を生み出す。そのようにして持続可能な森づくり、サステナブル社会の実現に貢献したい」と力を入れた。(依光隆明)