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サントリー、スコープ3削減へ 世界初の100%リサイクルアルミ缶ビールを実現

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サントリーホールディングスは31日、製品のライフサイクルにおけるスコープ3の削減に向け、リサイクルしたアルミを100%使用した缶入りビールを9月6日から数量限定で販売すると発表した。現状、国内では飲み終わったアルミ缶の9割以上を回収、その7割が再利用されており(うち7割が再びアルミ缶に)、同社でもアルミ缶商品の約50〜60%に再生アルミを一部使用しているが、100%リサイクル素材の“アルミ缶toアルミ缶”商品は今回が初めて。アルミ缶の鋳造や、銅と蓋(ふた)部分の加工を行う、サプライチェーンの上流に位置する企業2社との技術連携によって実現したもので、商用化されたSOT(ステイオンタブ)缶としては世界初という。(廣末智子)

「ザ・プレミアム・モルツCO2削減缶(350ml)」と、「ザ・プレミアム・モルツ〈香る〉エールCO2削減缶(同)」。全国で約3万ケース(約70万本)を通常品と同価格で発売する。

同社は2030年までにいずれも2019年比で自社排出(スコープ1、2)の温室効果ガスを50%、バリューチェーン全体では30%削減する目標を掲げ、自社排出の削減に向けては、CO2排出ゼロ工場を実現するなど、各生産拠点で具体的な方策を実施。一方、サプライヤーの製造・輸送からの排出を指すスコープ3の削減に向けては、2012年には国内の飲料メーカーで初めて、使用済みペットボトルを再度ペットボトルへと再生するボトルtoボトルのリサイクルシステムを、2021年には植物由来原料を100%使用したペットボトルを開発するなど、主にペットボトルの分野で取り組みを進めてきた。

しかし今回、「スコープ3の目標達成には、ペットボトルに次いで使用量の大きいアルミ缶の取り組みが重要」という観点から、2021年の実績で国内消費量約33.1万トンの2割強に当たる約7.2万トン(酒類約5.9万トン、清涼飲料約1.3万トン)を使用しているアルミ缶の100%リサイクル技術の開発に着手。アルミ缶の鋳造・圧延を行うUACJ(東京・千代田)と胴と蓋部分を加工する東洋製罐グループホールディングス(同・品川)との協業で、現状のアルミ缶に使われている、アルミの「地金(じがね)」にリサイクルアルミを組み合わせた素材と比べても蓋の強度といった品質面で遜色のない「100%リサイクルアルミ缶」を実現した。

通常のアルミ缶に比べ、“CO2 60%削減缶”と表記

同社によると、この100%リサイクルアルミ缶を使用することで、通常のアルミ缶に比べて1缶当たり約60%のCO2排出量の削減につながる。その要因としては、これまでの缶に使われていた地金はほぼ100%海外に調達を依存していたことが大きく、この地金を使わない100%リサイクル缶を使用することで、国内におけるアルミ缶toアルミ缶の水平循環が可能になることも視野に入れている。

広報担当者によると、新商品は、ビールを手に取る消費者に「SDGsを自分ごと化して考えてもらうことができるよう」、表に“CO2 60%削減缶”と分かりやすく文字を入れ、環境を意識した木のデザインを採用した。裏面には「世界で初めてリサイクルアルミ100%使用のビール缶に挑戦」と明記している。

同日行われたオンライン会見で、同社執行役員の藤原正明・サステナビリティ経営推進本部副本部長・サプライチェーン本部副本部長は、100%リサイクルアルミ缶について、「サプライチェーンの最上流にある地金の調達が海外に依存していることに着目し、できるだけそれを使わないようにすることで、スコープ3の削減量が上がるよう、3社で協議し実現した」とサプライヤー間の連携・協業の意義を強調。同社としては今後、最終製品化における充填工程での品質管理や流通段階における消費者の理解獲得に力を入れる方針で、「カーボンニュートラルの実現に向け、お客さまや取引先の皆さまとの共創を推進していきたい」と力を込めた。

もっとも、従来のアルミ缶と100%リサイクルアルミ缶とのコストの違いについては「お答えしづらい」とした上で、今後の量産については「お客さまの受け止めなど、全体の伸長をみながら総合的に考えていきたい」とする見通しが示されるにとどまった。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。