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ヤフー、企業版ふるさと納税で地方自治体のカーボンニュートラル推進 第一弾の支援先決まる

Torsakarin

ヤフージャパンは24日、カーボンニュートラルを目指す地方公共団体に対し、「企業版ふるさと納税」の仕組みを活用して支援するプロジェクトの第一弾の支援先に、北海道三笠市や鹿児島県大崎町など8自治体が決定したと発表した。企業版ふるさと納税は、内閣府に地域再生計画の認定を受けた地方公共団体が行う地方創生の取り組みに対して企業が寄付をすると法人関係税の税額が控除される制度で、同社のようにカーボンニュートラルをテーマに支援先を公募する方式で行うのは国内初という。第一弾の寄付総額は計2億4460万円で、記者会見には支援先に決まった各自治体の首長らが出席し、支援金を有効活用して脱炭素に向けた独自の取り組みを加速させる決意をそれぞれに語った。(廣末智子)

同社は今年1月、2023年度までに事業活動で利用する電力の100%再エネ化を実現することを宣言。その一環として、企業版ふるさと納税を活用して脱炭素化を目指す地方公共団体を支援することで、日本国内の脱炭素化の促進を後押しする「Yahoo! JAPAN地域カーボンニュートラル促進プロジェクト」をスタートさせ、今年4月からサイト上で支援先を公募していた。第一弾の支援先に決まったのは北海道三笠市と宮城県、埼玉県、神奈川県平塚市、新潟県、山梨県、三重県尾鷲市、鹿児島県大崎町の4県と3市、1町。

脱炭素へのインパクト、独自性などが決め手に

同社によるとこれまでに約30の応募があり、その中から「脱炭素に対する直接的なインパクトがあるか」「独自性・地域性があるか」「横の展開が可能なモデルとなりうるか」の観点から審査を進め、今回の支援先を決定した。審査は現在も続いており、年度内に追加で支援先が決まることもあるほか、来年度以降も公募を継続する方針という。

第一弾の支援先と事業内容、支援額は次の通り。支援額については「各自治体の希望額をベースに、脱炭素におけるインパクトとのバランスを考慮した上で確定した」としている。

北海道三笠市(石炭採掘跡へのCO2固定、1億円)、宮城県(海岸防災林の適正管理、藻場造成、2700万円)、埼玉県(中小企業向けCO2見える化事業、760万円)、神奈川県平塚市(波力発電の商用化と漁船の電池推進船化、発電所周辺の藻場造成、2400万円)、新潟県(一次産業による温室効果ガスの排出抑制・削減・吸収源対策、400万円)、山梨県(果樹園での土壌炭素固定、1000万円)、三重県尾鷲市(尾鷲ヒノキ市有林の若返り、2600万円)、鹿児島県大崎町(リサイクル率No.1の大崎システムの横展開、4600万円)。

CO2固定・吸収技術などの開発進む 首長らオンライン会見で思い語る

オンライン会見では各自治体の代表者がそれぞれの地域事情やカーボンニュートラルにかける思い、また今回の支援事業の詳細などについてプレゼンテーションを行った。

このうち北海道三笠市からは西城賢策市長が登壇し、大正、昭和と炭鉱の町として発展し、「エネルギーで生きてきた」同市が社会に貢献できる事業として、大学などの研究機関と連携して、石炭と木質バイオマスのガス化を組み合わせた技術によって水素を製造するための技術開発に力を入れていることを報告。その過程で発生するCO2を、今回の支援金1億円を活用して、同市の地中に数多く存在する石炭の採掘によって生じた空洞に注入する実証実験を行うことで、地下岩盤構造を強化し、安定化させる効果的なCO2固定技術の開発につなげ、これを全国に波及させることで「旧炭鉱町が活力を取り戻せるよう、一層の努力を重ねたい」などと話した。

また平塚市の落合克宏市長は2016年から世界に先駆けて“産学公”で実用化ベースとなる波力発電装置の開発に取り組んできた経緯を紹介。今回の支援金2400万円は、現在、海域実証を行っている平塚波力発電所を活用した「電池推進船」を漁業利用する際のメリットや課題を抽出したり、CO2の吸収固定が期待されるアカモクなどの藻を、波の弱い発電所周辺に定着させるための実験費用などに充てる方針だ。「平塚の地で開発された海洋再生可能エネルギーの技術を、気候変動への具体的なアクションとして、世界に貢献したい」と抱負を述べた。

一方、県単位での支援先からは担当部長や課長が登壇。新潟県は水稲作付面積が日本一であることから、地下水位制御システムを用いた水田からのメタンガス等の発生を抑制する技術を確立させるほか、施設栽培における園芸作物への投入エネルギー量を削減する技術や、CO2の新たな吸収源となり得る海藻の簡便な養殖技術などを支援金を使って開発する方針を説明した。

また2009年に全国で初めて「CO2ゼロやまなし」を表明し、ブドウやモモの生産量日本一の山梨県は、土壌にある炭素量を毎年0.4%ずつ増やすことができれば大気中にあるCO2の増加分を相殺し、温暖化を抑制できるという考えに基づく国際的な取り組みである「4パーミルイニシアチブ」に日本の都道府県として初めて参加していることを報告。具体的には果樹園内で剪定枝を炭化・貯留するほか、下草を残存させる「草生栽培」を実践しており、今回の支援金は無煙炭化器の設置などに充てるという。

リサイクル率日本一、鹿児島県大崎町 資源循環へ「世界の未来つくる町になりたい」

一般社団法人大崎町SDGs推進協議会

最後に、住民による27品目の分別により、焼却炉を使わずに廃棄物の80%以上を再資源化し、資源リサイクル率日本一を13回達成している鹿児島県大崎町からは、世界のモデルとなる循環型社会の構築に着手しており、既にインドネシアへの技術展開を行っていることが紹介された。

支援金は「混ぜればごみ、分ければ資源」をスローガンとする“大崎システム”による温室効果ガス排出量の数値化を図るとともに、複数エリアで同システムを展開していくためのプログラム開発などに充てると言い、東靖弘町長が「リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ、寄付を活用させていただき世界の課題解決に取り組んでいきたい」と力強く締めくくった。

企業版ふるさと納税制度は地方創生を活性化する狙いから、「地方創生応援税制」として2016年度にスタート。企業が寄付しやすいよう、2020年度税制改革により、税の軽減額が寄付額の最大6割から9割に拡大された。2019年度の全体の寄付額は1327件の33.8億円だった。

廣末智子(ひろすえ・ともこ)

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーに。サステナビリティを通して、さまざまな現場の当事者の思いを発信中。