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SDGs五輪の調達基準は「極めて不十分」 : WWFやFoEが指摘

「SDGs五輪」を掲げる2020年東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京オリ・パラ)。大会で使用する資材や、選手村などの会場で提供する物品やサービスに共通して適用する基準や運用方法として持続可能性に配慮した「調達コード」を策定しているが、WWFやFoEなどはその内容が「極めて不十分」と指摘する。東京オリ・パラの調達にどのようなリスクがあるのか、開催まで1年を切った今、関連団体にその評価を聞いた。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

パーム油の調達コード

環境NGOのFoE Japanの満田氏は、パーム油の調達コードについて評価できる点を「極めて不十分なものではあるが、それでもパーム油の生産における、熱帯林破壊、先住民族の権利、労働問題について言及しており、持続可能なパーム油の調達を求めていること」と説明した。

パーム油生産によるプランテーションの拡大は、東南アジアにおける熱帯林減少の最大の要因だ。保護価値の高い森林のみならず、そのほかの森林や泥炭の減少もプランテーション開発によって生じさせてはならない、ということがすでに国際的な認識となっているという。

「この調達コードでは『農園の開発・管理において、生態系が保全され、また、泥炭地や天然林を含む環境上重要な地域が適切に保全されていること』と極めてあいまいな書き方になっている。熱帯林を大規模に開発しても、いくらでも『適切に保全している』と回答できるような内容」(満田氏)

さらに最大の問題は、ISPO、MSPOを、RSPOとともに認めてしまっていることだという。

「ISPO、MSPOは、政府が主導する認証で、合法性は保証されても熱帯林や泥炭地の破壊、先住民族の権利侵害、労働問題などに歯止めがかけられるかについては不十分。RSPO 以外のパーム油を許容する以上、熱帯林・泥炭地の破壊や労働問題に寄与することは避けられないと考える」(満田氏)

水産物の調達コード

WWF 自然保護室 水産グループは東京オリ・パラの水産物の調達コードに対し、「実効性の担保について、対象の水産資源の適切な管理のみならず、生産に関しての生態系保全の面で、極めて不十分な内容」と指摘する。

水産物の調達コードの「原則」の部分では、資源の保全や生態系へ配慮することが明記されている。しかし実態は「形式的なものに過ぎない」という。WWFによればポイントは以下の3点。

・「資源管理計画(漁業)」「漁場改善計画(養殖業)」が導入され、行政機関に確認されていれば認証などの取得は不必要とされているが、行政機関が具体的にどのような基準を満たしたものを認めるのかについて明確に定められていない。水産資源管理が不十分なだけでなく、生産に伴う生態系保全の担保ができていない水産物が認められてしまう可能性が高い。その場合、国産水産物の9割が該当することになる。

国内水産業の資源管理が不十分なことを前提とし、昨年改正が決まった漁業法では、新たな水産資源管理の考え方が盛り込まれている。しかし前段にある「資源管理計画(漁業)」「漁場改善計画(養殖業)」は、現状(漁業法改正前)のものだ。「これらに基づいて生産された水産物が、持続可能性を担保したものと認められてしまうことになる」(WWF)

透明性等に問題が残る認証制度も持続可能なものと認められている。

水産物の調達コードに絶滅危惧種についての言及がなく、結果的に絶滅危惧種が提供される可能性もある。

WWFはこの基準では「管理体制が不十分であるにもかかわらず、国産であればほとんどが『持続可能な水産物』として提供されてしまう」と指摘。クロマグロ、ウナギなどの絶滅危惧種が調達されることで海外から批判を浴びることが考えられるほか、IUU漁業(違法漁業)由来の水産物が提供される可能性もあるという。

木材・紙の調達コード

木材の調達コードは2016年6月という早い段階で策定され、今年1月に内容が改訂された。そのため、NPO/NGOからの評価が比較的高い基準になっている。木材・紙のどちらの調達基準も、持続可能性の観点として「合法性、中長期的な計画・方針に基づく管理経営、生態系の保全、先住民族や地域住民の権利の配慮、労働者の安全対策」が含まれ、これらを満たすことが求められている点が評価できるとFSCジャパンは説明する。

また、FSC認証などの認証を取得した資材や紙について調達基準を満たしたものとして認めているが、紙に関しては「CoC認証 (加工流通過程の管理認証)が連続している」ことが求められており、流通過程の持続可能性への担保が必要になっている。一方で、木材ではNGO団体から「合法性、社秋的・環境的責任を保証できない」と指摘されるPEFC認証も認めていて、信頼性には懸念が残る。

さらに、輸入や製造の段階まで認証材である確認が取れていても、流通段階でCoC認証が途切れてしまっている場合、調達基準の運用上はCoC認証が途切れる直前まで認証品として流通していればよいとされている。「CoC認証がない場合でも、適切な分別管理や入出荷記録等の保管がなされることが必要」との記載もあるが、「この確認には第三者機関による公平・中立な判断が必要と考えられ、このままでは不十分ではないか」とFSCジャパンは疑問を呈す。

WWFは「オリンピックはそのためだけでなく、その後の国内外のイベントや通常の取り組みの見本となるもの」と話す。調達動向に注視しつつ、消費者が消費行動を振り返り選択を見直す機会にも、東京オリ・パラはなるのかもしれない。

沖本 啓一(おきもと・けいいち)

Sustainable Brands Japan 編集局。フリーランスで活動後、持続可能性というテーマに出会い地に足を着ける。好きな食べ物は鯖の味噌煮。