![]() 馬力と馬方の技術だけで木材を運ぶ馬搬
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山を傷めず、小回りがきく馬を使った木材の集材方法「馬搬(ばはん)」が注目されている。馬搬をテーマにしたドキュメンタリー映画が公開されたり、馬搬を普及する活動も活発だ。岡村製作所は日本の森を健全にする活動の一環としてこうした馬搬に注目。C.W.二コル・アファンの森財団(長野県信濃町)と協業し、杉の間伐材と馬搬を活用して製作した家具を開発、販売している。同社はものづくりや森づくりを通じ、同財団が行う馬搬の復活、普及を後押しする。
馬搬は、昭和中期までは盛んに行われていた林業の集材手段だったが、重機の普及により技術を持った馬方(うまかた)が国内で数人というところまで減っていた。しかし、岩手県遠野市で若手の継承者が馬搬振興会を設立し、各地で馬搬技術の指導などを行い、研修生が増えるなど復活の兆しが出ている。今年3月には馬搬をテーマにしたドキュメンタリー映画「里馬の森から」も公開され各地で上映されている。
馬搬は、作業道を作る必要もなく、化石燃料を使わず木を山から下ろすことができる。環境配慮型の小規模林業や急峻な日本の山では利点が発揮しやすく、馬ふんが肥料になるなど循環型の林業、農業に寄与する。イギリスではチャールズ皇太子を筆頭に馬搬の復興活動が盛んで、馬搬技術を競うコンテストも開催されているほどだ。
岡村製作所は生物多様性を守る活動「ACORN(エイコーン)」活動の一環として、これらの馬搬を復活させる活動を応援し普及啓発するために、2013年からホースロギングファニチャーを販売している。馬搬を取り入れた森林再生を実践しているC.W.ニコルアファンの森財団とのコラボレーションで作られたスツールやテーブル類で、アファンの森財団が管理する森で間伐し、馬で搬出した杉の木を使っている。第1弾の「KURA」に続くホースロギング家具 「trot table」は価格も抑え普及型として販売している。
同財団は「アファンホースプロジェクト」を2015年7月にスタート。長野県での馬搬を普及させるとともに、馬搬家具販売も含め、馬と人のパートナーシップを復活させることにより、林業、農業などさまざまな中山間地の問題を解決したいとしている。
岡村製作所広報室の犬塚悦司室長は馬搬復活を応援することで「自然に寄り添う暮らしに馬が役に立ち、日本の山間地が抱えている問題へのソリューションに貢献できる」と話す。
同社では宮城県東松島市でアファンの森財団が推進する馬搬を活用した「復興の森づくり」や「森の学校」づくりにも賛同し、協賛企業として支援するほか、森の学校づくりの委員会へ社員も参加するなど結び付きを強めている。
箕輪 弥生 (みのわ・やよい)
環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。
東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。 著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。 http://gogreen.hippy.jp/