• 公開日:2025.07.23
食と映画をサステナビリティの起点に FOOD MADE GOOD 映画祭 
  • 山口 笑愛

持続可能な食の未来について映画を通して考えるきっかけを提供するイベント「FOOD MADE GOOD  映画祭」(主催:日本サステイナブル・レストラン協会)。第3回目が7月10日に開催され、カンヌ国際映画祭2021でドキュメンタリー映画賞にノミネートされた「アニマル ぼくたちと動物のこと」が上映された。映画に登場するのは、気候変動問題に取り組む16歳の若者2人。気候変動と種の絶滅への解決策を探るため、彼らが世界を巡る旅に出る様子を捉えたドキュメンタリー映画だ。

会場となったレストラン「とれたて魚と野菜の小料理 KIGI」(東京・永田町)に集まった約30人は、食事とともに、映画の内容と自身の経験を重ね合わせながら、サステナビリティに対する思いを共有した。 
 

次世代を担う2人が、未来のための旅へ 

日本サステイナブル・レストラン協会は、英国のSustainable Restaurant Association(SRA)と連携して日本で立ち上げられた、フードサービス業界のサステナビリティ推進を支援する団体だ。セミナーやアワード、オンラインプラットフォームを通じて、飲食業界に関係する人々がサステナビリティについて知識を深め、消費者に啓発するサポートを行っている。数ある取り組みの一つ、「FOOD MADE GOOD 映画祭」では、サステナビリティと食に関する映画が各回1本上映される。上映後にはトークセッションとネットワーキングの時間が設けられ、主催者や参加者同士が映画に対する感想やサステナビリティへの思いについて意見を共有できる場となっている。 

今回上映された映画「アニマル ぼくたちと動物のこと」は、ベラとヴィプランという2人のティーンエイジャーたちを追ったドキュメンタリー作品だ。彼らは動物保護と気候変動問題に取り組む中、映画監督で活動家のシリル・ディオンに後押しされ、「より良い未来のための解決策」を見つけるために世界を巡る。 

映画は、生物多様性の危機的減少や、「50年後に人類は存在していないかもしれない」という予測を知り、怒りと絶望に直面する2人の様子から始まる。インドの海岸に広がる「ゴミの山」や、質問を受け付けない欧州の議員補佐官など厳しい現実を突き付けられる2人。だが、チンパンジーの研究で知られるジェーン・グドールや、生物の共存を目指す生物学者と出会い、次第に希望と新たな熱意を抱いていく。終盤で、「動物たちは、守るべき宇宙で唯一の美」と表され、自然界での人間の立ち位置を考えるきっかけとなる作品になっている。 

映画から振り返る、自身の道のりと日本の持続可能性 

トークセッションの様子

上映後のトークセッションで、ファシリテーターを務めた一般社団法人NEWHERO代表の高島太士氏は、パネリストらに印象に残った場面を質問。Innovation Design サステナブルデザイン室長の表秀明氏は、パリでのシーンで登場したジェーン・グドール氏の「経験や知識がないと行動に移せない」という言葉に共感したという。

1人の農家との出会いからフードロスについて勉強し始めたという表氏は、同じくパネリストで一般社団法人サステイナブル・レストラン協会(SRAジャパン)の下田屋毅氏との接点を「フードロスを掘り下げていった先に出会いがあった」と説明。そこから環境、調達、社会へと徐々に視野を広げていったという。「知識が増えることで見える世界が広がっていく。いただいた知識を単なる情報として消費せず、どう行動に移せるかを今後も大切にしていきたい」と熱意を語った。 

また、「この映画から何を持ち帰ったか」と尋ねられた一般社団法人サステナブル・ラベル協会代表理事の山口真奈美氏は、「西洋と日本の価値観の違いが表れた映画だった」と表現。「映画は『人間が動物を支配する』という視点を問うところからストーリーが構成されているが、日本には八百万(やおよろず)の神という価値観がすでに存在する。日本の価値観からスタートするならば、物語は違うものになるのではないか」と考察した。またさらに視野を広げ、「サステナビリティと聞くと『欧州が~』などと言われがち。だが、日本の動物の関わり方などの価値観から、サステナビリティを推進する役割を担えるのでは」と、持続可能性における日本の役割について期待を寄せた。 

「問い」を持つ人を増やすために 

トークセッションの最後に、「なぜ映画祭という取り組みを行うのか」と問われた下田屋氏は、「この活動をサステナビリティの『起点』にしたいから」と表現。「ここで学ぶサステナビリティのさまざまな観点を生かし、『どの飲食店を選択するか?』など、サステナブルな食を意識的に選んだり、問いを持つ人を増やしたい。サステナビリティを問われた飲食店は、そこにあるニーズや新たな経験を知ることができる。その気づきから働きかけが広がっていく」と、人々の交流から得る新たな気づきの場を提供する熱意と希望を示した。 

映画や主催者の発言の中で終始一貫していたのは、「知識や問いを次のアクションに」というメッセージだ。上映会をきっかけに知見を共有し、つながりを広げる場は、次なるアクションや気づきを生む希望の「起点」となりそうだ。 

written by

山口 笑愛(やまぐち・えな)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局 インターン

ミネルバ大学在籍中。ユースコミュニティ「nest」に参加したのがきっかけで、高校1年生からSBに関わる。今はファッションと教育を主軸に、商品制作、メディア、イベント企画を通して発信活動中。

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