• 公開日:2023.04.18
ネスレとMTGが本業で目指すウェルビーイングな社会
  • 岩﨑 唱

(左から) 嘉納氏、亀岡氏、奥氏

Day1 ブレイクアウト

サステナビリティを軸にしたSDGsへの取り組みと生活の豊かさや幸福度を測るウェルビーイングは、企業においてどうあるべきなのかーー。本セッションには、グローバル企業であるネスレ日本と、名古屋のベンチャー企業で健康機器や美容器具を製造・販売するMTGが登壇。両社とも生活者でもある社員の生活の質を高め、幸せを追求することで、企業として社会に認められ存続できるのだと論じた。ネスレ日本 執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長の嘉納未來氏は「当社の重要な価値観である『敬意(Respect)』がスローガンの根底にある。社員、消費者、生産者、社会や地球まで、あらゆるステークホルダーに対して価値を提供し社会課題を解決することで、私たち自身も存続することできる」と強調した。(岩﨑 唱)

ファシリテーター
岡山慶子・朝日エル 会長
パネリスト
嘉納未來・ネスレ日本 執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長
亀岡 徹・MTG 社長室 SDGs推進部 部長
奥 正廣・日本創造学会評議員(元理事長・会長)/東京工科大学名誉教授

食の持つ力で生活の質を高め、社会課題を解決する

嘉納氏

最初に、ネスレ日本の嘉納未來氏は、コーポレートスローガンの「Good Food, Good Life」を紹介。「粉ミルクは栄養不足による乳児の死亡を減少させるため。インスタントコーヒーは、ブラジルでコーヒー豆が大豊作となり価格が暴落したことから農民が困窮し、ブラジル政府の要請により生まれた。当社は食が持つ力や可能性により社会課題を解決しようとしている」とスローガンに込められた思いを説明した。

嘉納氏は、「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高める」というパーパスを実現するため、「消費者」「社員とビジネスパートナー、生産者」「地球」の3つの注力分野を挙げ、「この分野で私たちは生活の質を高め、幸せになるということを考えている」と述べた。さらに「当社の『Think Globally, Act Locally』という考え方をもとに各国の文化や食習慣を尊重してきたことが、企業として存在し続けている理由だと思う」と締めくくった。

まず自分が幸せになることで、社会を幸せにする

亀岡氏

次に1996年に愛知県で創業し、健康、美容、衛生分野で事業展開をしているMTGの亀岡徹氏が、企業理念「一人ひかる 皆ひかる 何もかもひかる」を紹介した。「『一人』とは、社員を指し、『皆』がお客様や株主・ビジネスパートナー、『何もかも』は、社会や地球を指していてウェルビーイングと親和性、共通性がある」と説明。この理念を支える三本柱が 「ひかりフィロソフィ」「世界中の人々のバイタルライフを実現するという事業ビジョン」「全員経営を実現するためのグループ経営方式」だ。

「ひかりフィロソフィ」には、社員一人ひとりが心・物ともに豊かになり、感謝の気持ちを忘れず、挑戦する気持ちを大切にして、世界中の人に必要とされる会社にしようと書かれているという。「それを社員だけでなく経営層も日々の経営判断における指標にしている」と述べた。また企業としてウェルビーイングを考えたとき、「正しい価値観を企業が持つこと。その価値観を社員みんなが考え、理解・共有し実践すること。それを事業に反映させ利益を上げていくこと」と述べ、「この3つがセットになって初めてサステナブルな発展が実現する」と力を込めた。

日本流のウェルビーイングとSDGsの両立

岡山氏
奥氏

日本創造学会の奥正廣氏はウェルビーイングについて、「アリストテレスが唱えたユーダイモニア(Eudaimonia)という概念に近く、日本では『生きがい』と訳される。生きがいを感じるには、自分の心の中から出て来た創造性や健康、喜びなど、内発的動機付けが必要」だと説明した。奥氏によると、SDGsは外発的動機付けになるという。

ファシリテーターの岡山慶子氏は「ネスレとMTGでは業種も規模も違うが、どちらも社員のウェルビーイングをとても大切にしている。個人のウェルビーイングと企業のSDGsのゴール達成がイコールなものになり、それが文化として育っていけば素晴らしいと思う」「SDGsの成長(Development)という言葉をどう考えるかにもよるが、江戸時代の文化のエッセンスを入れた『日本流サステナブルウェルビーイング』の実践により、ウェルビーイングとSDGsの両立は可能かもしれない」と述べセッションを終えた。

written by

岩﨑 唱(いわさき・となお)

コピーライター、准木材コーディネーター

東京都豊島区生まれ、日本大学理工学部電気工学科卒。いくつかの広告代理店、広告制作会社で自動車、IT関連機器、通信事業者などの広告企画制作に携わり、1995年に独立しフリーランスに。「緑の雇用」事業の広告PRに携わったことを契機に森林、林業に関心を抱き、2011年から21018年まで森林整備のNPO活動にも参画。森林を健全にし、林業・木材業を持続産業化するには、木材のサプライチェーン(川上から川下まで)のコーディネイトが重要と考えている。

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