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  • 公開日:2022.03.23
  • 最終更新日: 2025.03.02
キリン、生茶の容器など刷新 ケミカルリサイクル技術確立へ
  • 廣末 智子

キリングループは23日、旗艦ブランド「生茶」の中味と容器、パッケージデザインを刷新すると発表した。ラベルの面積を従来より小さくする「ラベル短尺化」を進め、同商品で約40%、年間約180トンのプラスチック使用量の削減につなげる。また再生ペット樹脂を100%使用した「R100ペットボトル」を自動販売機専用の商品に導入するほか、ドラッグストアとの連携による使用済みペットボトル容器回収の実証実験も開始する。国内ではメカニカルリサイクル(物理的再生法)が主流だが、同社はケミカルリサイクル(化学的再生法)を組み込んだ技術開発を目指す姿勢を明確にした。(廣末智子)

リニューアルするのは「生茶」と「生茶 ほうじ煎茶」の525mlと600ml入り商品で、これまでは飲み口の約1センチ下から底までを覆っていたラベルを約半分の長さにした新パッケージを採用。同時にこれまでは円筒型だったボトルを角形ボトルとすることで、商品を店舗に納入する際などの積載効率を高める(新商品は4月26日から全国販売)。

また2021年から生茶での導入を拡大してきた「R100ペットボトル」を、新たに自動販売機専用の555ml入り商品にも採り入れ、年内に順次拡大する。

さらにスーパーやドラッグストアなどで販売しているラベルレス商品についてもラベルレス商品であることがより分かりやすいよう、6本入りパックの紙製包材の長さをこれまでの約半分に短尺化する。

ラベルレス商品については、「午後の紅茶」(500ml、2L)と「ファイア」ブランド(600ml)にも拡大。5月24日からEC限定で販売する。両ラベルレス商品の発売により、年間約4.5トンのプラスチック使用量の削減につながる見込みという。

リサイクル実証実験 ウエルシアとも「面による効率化重視」

一方、使用済みペットボトルのリサイクルについて同社は昨年7月からローソンの店頭に回収機を設置し、回収に協力してくれた消費者にポイントを還元する実証実験を行っているが、新たにドラッグストアのウエルシアと連携し、6月から埼玉県内の約190店舗で取り組みを開始。持ち込まれたボトルはウエルシアが物流センターまで運び、リサイクラーによる中間処理を経てキリンが「R100ペットボトル」に再商品化するスキーム。ウエルシアだけでなく、その他のドラッグストアやスーパーにも呼びかけて共同回収するなど、「面による効率化」を重視したリサイクルモデルの確立を目指す。

さらにプラスチックの使用量削減に向けた新たな取り組みとして、自動販売機の正面に並ぶ商品サンプルを、今月からプラスチック使用量の少ないカード型の商品サンプルへと切り替えている。これにより従来の商品サンプルで使用していた年間プラスチック量を約60%削減できる見込みで、将来的にはPET樹脂を素材とするカードにすることで、PETケミカルリサイクルによる再利用も想定しているという。

プラスチック資源循環の鍵はケミカルリサイクル

PETケミカルリサイクルは、廃ペットボトルなどをPETの分子レベルにまで分解し、精製したものを再びPETに合成する技術。同社はこれを「プラスチック資源の循環に向けた鍵となる」と位置付け、2019年に策定した「国内のペットボトルにおけるリサイクル樹脂の割合を2027年までに50%に、2050年には100%にする」という目標の達成に向け、現在、三菱ケミカル社や静岡大学などと複数の共同プロジェクトを通じて実用化に向けた研究開発を進めている最中だ。

この日開かれたオンライン会見ではその進捗状況について、使用済みペットボトルの化学分解処理を行うパートナー企業の選定段階に入っていることを大久保辰則・キリンホールディングスR&D本部パッケージイノベーション研究所主務が報告。「リサイクル量を拡大していくには、ペットボトルを循環させ続けるボトルtoボトルの取り組みだけでなく、シートやトレーなどPET素材全体の循環利用を目指す必要がある。ケミカルリサイクルの強みは繰り返し使っても品質が劣化しにくい。コスト面などが課題だが、オープンイノベーションを取り入れながら、品質、経済性、環境調和性を両立できる技術を磨いていきたい」などと述べ、ケミカルリサイクルを組み込んだ技術開発を目指す姿勢を強調した。

来月施行されるプラスチック新法に関しては、飲料用のペットボトルに対する環境配慮設計の基準が現段階では示されていないことから、それが明らかになり次第、早急に対応する方針。

written by

廣末 智子(ひろすえ・ともこ)

サステナブル・ブランド ジャパン編集局  デスク・記者

地方紙の記者として21年間、地域の生活に根差した取材活動を行う。2011年に退職し、フリーを経て、2022年より現職。サステナビリティを通して、さまざまな現場の思いを発信中。

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