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  • 公開日:2018.08.10
  • 最終更新日: 2025.03.02
オーガニックを学校給食に-自治体、企業も取り組み
  • 環境ライター・箕輪 弥生

ビオ・マーケットは学校給食に根菜類を中心に有機野菜を導入

有機農産物の学校給食への導入は今まで限られたものだったが、自治体や企業の取り組みで少しずつ広がっている。有機野菜の宅配事業を行うビオ・マーケット(大阪府豊中市)は大阪府の2市で、昨年1年間に5.3トンを超える有機野菜を学校給食に導入、千葉県いすみ市は昨年11月から市内すべての小中学校で学校給食に地元産有機米を取り入れた。愛媛県今治市は早くから地産地消と食農教育を進める自治体として全国から視察が絶えない。(箕輪弥生)

京阪神地域を中心に30年以上有機農産物の宅配事業を行うビオ・マーケットは、ここ10年、学校給食への有機野菜の利用を推進している。昨年度は大阪府の茨木市、吹田市の約80の小学校に、合計5.3トンを超える有機野菜を導入した。ここ4年で30%導入量が増えるなど少しずつだが拡大している。

日本では給食のメニューや材料購入などを全国の学校給食会が中心となって決めているが、主に価格の問題などにより有機農産物の導入が本格的に進んでいるとは言えない。一方、フランスやイタリアでは学校給食にオーガニック食材を利用することが国から推奨され積極的に導入が進む。

「やはり単価の問題と行政の後押しが弱いことが一番ネックとなっている」とビオ・マーケットの業販事業部 石田篤営業部長は日本で導入が伸び悩む理由を分析する。それでも「子供たちが給食で有機野菜を食べ、オーガニックの利点を学び、その経験を家庭で話すことが有機農産物の広がりにつながるはず」と石田部長は期待する。

給食を通じて地域の有機農業を活性化

学校給食を通じて地域の有機農業を育て、地産地消と学校給食とを一体化させた取り組みを30年以上も推進してきた先進的地域に愛媛県今治市がある。今治市は地元産の農産物を給食用素材として利用し、有機野菜の割合も年々高めている。給食用パンや大豆も給食への供給を契機に国産小麦や大豆の生産を始め、今ではその加工品が一般に販売されるなどマーケットを形成するまでになっている。

今治市は市内の飲食店の残渣や残飯を堆肥化して畑に還元し、学校給食の食材などの有機栽培を行う試みも進める。
千葉県いすみ市も「自然と共生する里づくり」を市の方針として掲げ、2013年から有機米の栽培に力を入れる。15年から有機米を学校給食にも一部導入していたが、2017年11月からは市内の小中学校の給食米の全量を地元産の有機米でまかなう。

どちらの地域でも、給食に地元の有機農産物が使われることで、給食費が外に流出せず地域で循環し、有機農業の活性化に寄与している。加えて、子供たちへの食農教育を給食を通じて行うことで、将来の地域の生産者、消費者の獲得につなげたい意向だ。

written by

箕輪 弥生 (みのわ・やよい)

環境ライター・ジャーナリスト、NPO法人「そらべあ基金」理事。

東京の下町生まれ、立教大学卒。広告代理店を経てマーケティングプランナーとして独立。その後、持続可能なビジネスや社会の仕組み、生態系への関心がつのり環境分野へシフト。自然エネルギーや循環型ライフスタイルなどを中心に、幅広く環境関連の記事や書籍の執筆、編集を行う。 著書に「地球のために今日から始めるエコシフト15」(文化出版局)「エネルギーシフトに向けて 節電・省エネの知恵123」「環境生活のススメ」(飛鳥新社)「LOHASで行こう!」(ソニーマガジンズ)ほか。自身も雨水や太陽熱、自然素材を使ったエコハウスに住む。JFEJ(日本環境ジャーナリストの会)会員。 http://gogreen.hippy.jp/

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