• 下田屋 毅
  • コラム
  • 公開日:2018.07.03
  • 最終更新日: 2025.03.02
東京オリンピック・パラリンピックをサーキュラー・ゲームに
  • 下田屋 毅

東京オリンピック・パラリンピックまであと2年と迫ってきた。東京オリンピック・パラリンピック(以下東京大会)がサステナビリティについて取り組むべき課題の中に「サーキュラー・エコノミー」の要素を取り入れていく考え方がある。

英国や欧州では、公共調達や民間調達で使用されているのは、サーキュラー・エコノミーのアプローチである。

英国の環境コンサルティング会社「グローバル・リソース」のディレクターで、元WRAPの共同参画部長であり、ロンドン大会2012の外部アドバイザーであったマービン・ジョーンズ博士は、「大会でサーキュラー・エコノミーを実現するにはサーキュラー型の考え方をする必要がある。サーキュラーな製品にはサーキュラーな顧客サーキュラーな顧客が必要となる。サーキュラー型の調達を行えばサプライチェーンの質の向上につながる。」と述べる。

ジョーンズ博士は、「サステナビリティ全体を見ると廃棄物は一部でしかないがとても重要な一部で東京大会前には何も存在せず東京大会後も何も残らない状態にしなければならない。ロンドン大会の組織委員会は大会の終わった3ヶ月後に解散したがそれまでに使用されたもの全てが処理されていなければならなかったしまた観客にとっても優しい方法でなければならなかった。」と述べる。

ジョーンズ博士はまた、「従来のやり方は直線的なアプローチで材料を調達して製造して流通させ利用して捨てるというもの。もし世界中の全員が西洋の消費レベルと同じ消費レベルをすれば地球の5倍の資源が必要となる。我々の地球は一つしかないので我々は使い終わったものをもう一度製造の過程に取り入れるようなループを作らなければならない。」と述べ、サーキュラー型の大会を行うように提言する。

ロンドン大会では、使うものはどこから来て、どう使われ、使われた後にどうなるのかという3つの点が考慮されたという。サーキュラー型の大会運営は、企業に取っても国に取っても、経済的に有益な制度となるという。

また、オリンピックの調達をする上で忘れてはいけないのは、インプットがあって初めてアウトプットがあるということ。ロンドン大会の組織委員会で実施した項目の中に、素材のインプットをコントロールしたことが挙げられる。それはアウトプットにつながり、廃棄物となるからだ。

マービン・ジョーンズ博士(撮影 下田屋 毅)

ロンドン大会では、廃棄物は次の①リサイクル可能なもの、②食品など堆肥化可能なもの、③リサイクルできないもの、の3つに分類された。環境影響の視点では、③ではなく、①と②に分類されるものをできるだけ使用するのが良いとされる。またロンドン大会では、サプライヤーの仕様として、サプライヤーが提供した商品のパッケージは、そのサプライヤーが大会後に回収する責任とした。

さらにロンドン大会では、サーキュラー型のサステナビリティ調達を取り入れる上で、4つの主な目標を取り入れた。①環境への悪影響を最小限にすること。②資源の需要を減らすこと。③サプライチェーン上の社会的インパクトを減らすこと。④契約条件がフェアかどうか。

ジョーンズ博士は、「東京大会で使用されるものの中で、再利用・リサイクルできないのであれば使用するべきでない。重要なのはゴミ処理業者からのステークホルダーとしてのアドバイスである。」と述べる。それは業者が、何がリサイクル可能で、何が不可能かを理解しており、それら業者がリサイクル処理できるかどうかが大きなポイントの1つだからだ。

東京大会は過去の大会よりも、より多くの人々が様々な形で視聴することになり注目が集まる。東京大会は、非常に大きな世界的イベントであり、政府、企業、市民が変わることのできる大きなチャンスである。

ロンドン大会は廃棄物ゼロを目指し達成したが、東京大会はロンドン大会の8年後でもあり、東京大会に求められているのは、その進化系であるサーキュラー・エコノミーの要素を入れたサーキュラー・ゲームだ。

サステナビリティの大会運営については次のパリ大会は非常に積極的であり、日本は期待されていないという話も聞く。日本はリサイクルなど先進的に取り組んできたという自負があるはずで、それができると思っている。日本企業が本気を出せばできないことはない。東京大会で是非サーキュラー型の大会運営を目指し達成に向けて進んで欲しい。

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下田屋 毅(しもたや・たけし)

サステイナビジョン代表取締役 一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。大手重工メーカー工場管理部にて人事・労務・総務・労働安全衛生などを担当。環境ビジネス新規事業立ち上げ後、渡英。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。

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