• 公開日:2018.01.09
世界初のエシカル養殖ブリ認証、宮崎の生産者が取得
  • 瀬戸内千代

黒瀬水産いけす ©黒瀬水産

ニッスイグループの黒瀬水産(宮崎県串間市、山瀬茂継社長)が、ブリの養殖業者として初めてASC認証を取得した。持続可能な養殖業の証となるASCの認証基準は魚種ごとに関係者が協議して定めており、ブリの基準は2016年10月に設定した。黒瀬水産は2017年12月に認証を取得し、同社のいけすでは、数カ月後の出荷に向けて世界初のASCブリが育っている。(瀬戸内千代)

ASC認証は、養殖魚の脱走や餌資源の乱獲を防ぎ、いけすで発生した病気や水質を適切に管理し、環境負荷を極力抑えた上で、労働者の健康と安全や地域社会にも配慮を怠らないエコかつエシカルな生産者に与えられる。

日本初の取得例は「南三陸 戸倉っこかき」を生産している宮城県漁業協同組合志津川支所戸倉事務所で、ブリ養殖大手の黒瀬水産は2例目。世界では500カ所以上の養殖場が取得している。

世界の養殖ブリの約9割は日本が生産している。2010年にオランダで発足したASC(水産養殖管理協議会)のブリ・スギ類基準の策定会合は海外で開かれていたが、2013年からWWFジャパンが日本に誘致。国内ブリ生産5団体らの参加を得て、より現場に即したブリ基準が2016年に完成した。

日本の養殖業にとって、ブリやカンパチなどブリ類の養殖は、全生産量の約6割を占める一大産業である。海洋環境や沿岸コミュニティーのためにも、輸出や東京五輪のためにも、国内のブリ養殖がサステナブルな国際基準に適合している価値は大きい。

とはいえ、「ASC基準を満たすことは、日本の生産者にとって決して容易ではないチャレンジ」とWWFジャパンの山内愛子海洋グループ長が言う通り、現状では適合のための労力とコストが課題となる養殖場が多いため、それを積極的に支える社会がなければ取得件数は伸びにくい。

WWFジャパン水産プロジェクト担当の前川聡氏は、日本のブリ養殖業を持続可能にしていくためには、「生産者だけでは困難なことも多い。飼料・水産医薬品メーカーや研究・行政機関など多くの関係者の協力に加え、マーケット側の受け入れ態勢や消費者側の認知も必要だ」と述べた。

written by

瀬戸内千代(せとうち・ちよ)

海洋ジャーナリスト。雑誌「オルタナ」編集委員、ウェブマガジン「greenz」シニアライター。

1997年筑波大学生物学類卒、理科実験器具メーカーを経て、2007年に環境ライターとして独立。自治体環境局メールマガジン、行政の自然エネルギーポータルサイトの取材記事など担当。2015年、東京都市大学環境学部編著「BLUE EARTH COLLEGE ようこそ、「地球経済大学」へ。」(東急エージェンシー)の編集に協力。

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