トランプ米大統領が「メリークリスマス(Merry Christmas)」と公式に挨拶していることに対し、議論が起こっている。米国内では近年、多様性に配慮し、「ハッピーホリデイズ(Happy Holidays)」を使うことが主流になっていた。クリスマスを機に多様性と環境配慮について考えたい。(オルタナ編集部=吉田広子)
![]() ホリデーシーズンには多様性や環境配慮にも考慮していきたい
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トランプ米大統領は選挙戦の最中から、「メリークリスマス」の挨拶を復活させることを明言してきた。実際に、大統領に就任した2017年は各地で「メリークリスマス」と発言している。
ジョージ・W・ブッシュ元大統領は2004年から、2009年に就任したオバマ前大統領は、「メリークリスマス」の代わりに、キリスト教以外の宗教や文化の多様性に配慮し、「ハッピーホリデイズ」を使用してきた。
これは、人種や宗教、職業、性別、障がいの有無などの状況に基づき、政治的に正しい言葉を使うという「ポリティカル・コレクトネス」の一環だ。政治家だけではなく、一般の挨拶や店頭などでも「ハッピーホリデイズ」「ホリデーギフト」「ホリデーセール」が使われることが多い。日本では、「看護師」や「フライトアテンダント」、「障がい者」といった言葉がポリティカル・コレクトネスにあたる。
米国では、11月の第4週木曜日の感謝祭(Thanksgiving Day)から1月初旬までが「ホリデーシーズン」だ。この時期はクリスマス以外にも、ユダヤ教の祝日である「ハヌカ」(Hanukkah)や、アフリカン・アメリカンの文化を祝う「クワンザ」(Kwanzaa)などが続く。こうした背景もあり、「ハッピーホリデイズ」が使用されてきた。
一方で、ピュー研究所の調査によると、どちらの言い方でも気にしないと答えた人は52%に上り、「ハッピーホリデイズ(またはseason’s greeting:年末年始のご挨拶)」を支持する15%を上回っている。
クリスマスツリーの環境負荷は
クリスマスを盛り上げる装飾の一つにクリスマスツリーがある。米国や欧州では、本物の木が使われることが多いが、そのほとんどがすぐに捨てられ、毎年新たに買い替えられている。購入者数は米国と欧州で1億人弱と推計されている。
英自然保護団体ウッドランド・トラストは、生の木を購入するのであれば、できれば根がついたものを購入し、翌年も使用することを推奨している。管理する庭がない場合は、クリスマスツリーをレンタルするか、地元産やFSC(森林管理協議会)認証のツリーを購入することをすすめている。
人工的なツリーか生の木のどちらが良いか、議論が分かれるところだが、同団体は、PVC(ポリ塩化ビニル)製のツリーは20年使えば、本物の木を毎年購入するよりも、環境負荷が低いとしている。環境に配慮した素材であれば、生の木よりも環境負荷が低いとしている。
トナカイが絶滅危惧種に
クリスマスといえば、サンタクロースのそりを引っ張るトナカイが連想されるが、実は絶滅の危機に瀕している。
2016年6月、国際自然保護連合(IUCN)が公表した「レッドリスト」で、トナカイは危急種(絶滅危惧II類)に分類された。IUCNによると、3世代(約21-27年)前に480万頭と推定されたが、2015年には289万頭に減少した。その原因の一つとして地球温暖化が挙げられている。
北極圏では温暖化の影響が大きく、トナカイがエサを取れない状況になっている。冬は雪の下の苔などを食べるが、雪ではなく雨が降ることで、地表が氷に覆われてしまうからだ。フィンランドでは、温暖化の影響で蚊が増え、トナカイの大量死を引き起こしたという報告もある。
IUCNは地球温暖化のほか、交通機関やリゾートの開発など、人間の活動が生息環境に悪影響を与えていることも指摘している。
吉田 広子(よしだ・ひろこ)
株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナ副編集長
大学卒業後、ロータリー財団国際親善奨学生として米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。2007年10月に株式会社オルタナに入社、2011年から現職。 「オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業、自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ、障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。