![]() ルーツのオフィスで。ブレント・フリーマンCEO(後列右)ほか、スタッフは生き生きと仕事をしている
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米国だけで3万を超えるソーシャル・ブランドが存在するといわれ、マーケットは400億ドル(約4兆円)規模、年15%も成長している。そんな中、2010年秋に立ち上がったのがソーシャル・ブランドのためのポータルオンラインストア「ROOZT(ルーツ)」だ。(ロサンゼルス=寺町幸枝)
ルーツはデザイン性や品質だけでなく、会社運営や生産背景に至るまで厳しいチェックを行ったうえでブランドを選定している。
ルーツの基準は、「人間性」「地域性」「環境性」「エシカル(倫理性)」の4点。「人間性」は、世界的な目線でも大きなインパクトを与えている活動を示し、コミュニティーの活性化などに貢献する活動は「地域性」として重要視している。
単純に「環境性」と言っても、社内で使用するインク類を全てソイインクにするなど、ビジネス上の意思決定をする際に環境を意識した行動を取っているかどうかを判断材料としている。エシカルは、フェアトレードなどを指す。
![]() オフィスのショールームには、ルーツが取り扱うソーシャル・ブランドのサンプルがディスプレイされている
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「社会貢献=セクシー」に
創設者のブレント・フリーマンCEOは、「これまでのソーシャル・ブランドのイメージとかっこ良さやセクシーさは必ずしもイコールではなかった。私たちの仕事は、多くの人が憧れる製品でありながら、社会にインパクトを与えているブランドを紹介し、彼らのビジネスを支えるオンラインプラットフォームを作ること。
『かっこ良さと社会貢献を一緒に取り戻そう』というコンセプトは、この思いを体現したキャッチフレーズ」と説明する。
ルーツのターゲットは、まさにミレニアル世代の25歳から40歳の男女。常にかっこ良い、自分らしいパーソナルなものを求め、オンラインでの買い物にも抵抗がない。立ち上げから3年で、取り扱いブランドは25から300ブランドにまで増えた。現在も月25から50の新ブランドを投入し、月次100%オーバーで遂行しているという。向こう12カ月で、数億円の売上計上を見込む。
人気製品は、女性にはOnzieやLVRをはじめとしたヨガパンツとジュエリー。男性向けでは、腕時計やキャンプ用ハンモックが人気だという。
さらに、ルーツ自身のCSRとして「ワン・メンバー、ワン・ミール」を掲げ、会員が一人増えるたびに、米国内で飢餓に苦しむ人々を支援する組織「フィーディング・アメリカ」に1食分を寄付する活動を行っている。すでに10万食以上の寄付を行った。
「教育こそが社会を良くする第一歩」と考えるフリーマンCEOを中心に、ザ・ネットワーク・フォー・ティーチング・エンタープレナーシップ(NFTE)と共同で、ロサンゼルス中心部に住む低所得家庭の高校生に、ソーシャル・ビジネスの起業に関する講義や指導を行っている。
「靴ブランドのTOMSが認知を広げたワン・フォー・ワンモデルは、その構造そのものよりも、高デザイン、高品質の製品を提供しながら、社会貢献することは可能であることを人々に知らしめたことにある」とフリーマンCEOは語る。
ソーシャル・ブランドの広がりによって、ルーツがアマゾン並みに成長するのもそう遠い未来ではなさそうだ。
寺町 幸枝(てらまち・ゆきえ)
Funtrapの名で、2005年よりロサンゼルスにて取材執筆やコーディネート活動をした後2013年に帰国。現在国内はもとより、米国、台湾についての情報を発信中。昨年より蔦屋書店のT-SITE LIFESTYLE MAGAZINEをはじめ、カルチャー媒体で定期出稿している。またオルタナ本誌では、創刊号以来主に「世界のソーシャルビジネス」の米国編の執筆を担当。得意分野は主にソーシャルビジネス、ファッション、食文化、カルチャー全般。慶應義塾大学卒。Global Press理事。