• 公開日:2014.12.16
  • 最終更新日: 2025.03.21
39号 世界のソーシャル・ビジネス(米国) 貧困層向け食料支援、地産池消を促す
    • 谷口 輝世子

    米国では肥満に悩む人が少なくない。低所得層の方が、カロリーが高く栄養価の低い食品を摂取する傾向があることも複数の調査で指摘されてきた。そこで、低所得世帯に食料費を補助する補助的栄養支援プログラムSNAP(旧フードスタンプ)を活用して、健康的な食材を得られるように支援する動きが活発になっている。(米デトロイト=谷口輝世子)

    SNAPはミシガン州内でブリッジカードと呼ばれている。ブリッジカード使用可能のサイン(米国ミシガン州・デトロイト)

    2013年のギャラップ社の調査によると、米国で肥満の状態になっている人は27.7%に達している。SNAPとは、日本の生活保護と似た役割を持つ公的扶助で、食料品購入の支払いに「金券」として使用できる。ただし、タバコやビールといった嗜好品は対象外だ。

    2013年のSNAP利用者は約4700万人で米国民の6人に1人にあたる。州によって違いがあるが、例えば、4人家族で月収が2千ドル(約24万円)以下のケースでは、世帯あたり月に600ドル(約7万円)程度が支給される。

    SNAPは、通常はスーパーマーケットや一部のファストフード店で使用する。これをファーマーズマーケットと称される近隣農家による直売市でも使用可能にした。米農務省が小売店だけでなく、直売市にもSNAP取扱いのライセンスを与えるようになったからだ。

    低所得者層に新鮮な農作物を購入してもらうと同時に農家の売り上げもサポートできる。ファストフードで5ドル(約600円)分の食事をするよりも、同じ金額で地域の新鮮な農作物を購入する方が、健康にも家計にもやさしい。

    ミシガン州デトロイト市内の直売市でもこのプログラムを実施。近隣農家が販売する新鮮な野菜をSNAPで購入できるようになった。

    新鮮な農作物が並ぶ直売市(米国ミシガン州・デトロイト)

    同州内のいくつかの直売市では、6月から10月にかけて民間の非営利団体が提供する「ダブル・アップ・フード・バックス」というサービスも同時に受けることができる。このサービスは、州内で栽培された農作物に限り、SNAP金券の2倍の金額分まで買い物をすることができるというものだ。サービス開始から5年でのべ20万人以上の家族が利用。2013年度の提携農家はおよそ1千件。

    直売市では、このプログラムの利用を促す看板とともに、各売り場では州内の農作物であることが分かるようなタグ付けなど工夫。ある女性は「たくさん購入して瓶詰めにしています」と話していた。

    「ダブル・アップ・フード・バックス」は直売市だけでなく、ミシガン州のいくつかの地域のスーパーマーケットとの提携も開始した。

    「ダブル・アップ・フード・バンクス」に資金を提供しているのは、地域の財団や銀行など。州内でお金が循環することも目指している。行政と連動した非営利団体のアイデアと活動は、米国内の地産地消のひとつの形として定着しつつあるようだ。

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    written by

    谷口 輝世子(たにぐち・きよこ)

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