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  • 公開日:2014.12.16
  • 最終更新日: 2025.03.21
39号 世界のソーシャル・ビジネス(イタリア) トウモロコシの芯アフリカの電力に
    • 田口 理穂

    北イタリアのモデナ大学で、トウモロコシの芯を燃料とする発電の研究が進んでいる。アフリカの多くの国では主食として食べられているトウモロコシだが、その実もかすも無駄なく活用しようという取り組みだ。2015年中にカメルーンでの稼働を目指す。(独ハノーファー=田口理穂)

    燃料となるトウモロコシの芯

    「日照時間が長いアフリカではソーラーパネルの利用が盛んだが、別の電力源も利用できることを証明したい」

    こう語るのは、エンジニア研究室のジュリオ・アレシーナ博士だ。アレシーナ博士は、自然エネルギーについて研究していたが、アフリカでトウモロコシの芯の山を見て発電への利用を思い付いた。

    トウモロコシはアフリカで主食としてよく食べられており、残った芯はゴミとして廃棄される。それを燃料にしようという試みだ。サハラ砂漠以南での年間消費量は4300万トンにも上る(2007年・FAOSTATより)。トウモロコシが、食べ物と電力として一度に利用できれば画期的である。

    トウモロコシの芯をただ燃やすのではなく、酸素を加えて燃焼させ、発生したバイオガスでモーターを回し、発電する。発電容量は20キロワットだ。同博士は、トウモロコシの芯以外にも、薪や木片、ペレットを使った発電にも取り組み、非電化地域の電力供給を目指す。

    カメルーンでは、必要電力の20%しか供給されていないという。このプロジェクトは、EUの補助金を受け、設備を同国に持参して、2015年中に稼動させる予定だ。まず学校や市庁舎に優先的に電力供給し、余剰分は食料生産現場や工場、街灯に使う。

    アレシーナ博士は「もし飴がひとつしかなければ僕はポケットに入れて、ほかの人に取られないようにする。けれど、飴がこの部屋いっぱいにあるとしたら、みんなに分ける。エネルギーも同じで、たくさんあれば独り占めする必要はない」と話す。

    アレシーナ博士は、無限にある太陽光や風力の利用を促し、豊かな社会にしたいと考えている。

    発電装置の前にてアレシーナ博士(右)と、視察に訪れたドイツのライプニツ・ハノーファー大学のフランツ・レンツ教授

    脱原発進むイタリア

    イタリアに原子力発電所はない。チェルノブイリ原発事故の翌年の1987年、国民投票で脱原発を決め、稼動していた5基を順次閉鎖した。時は流れ、原発再開の機運が高まったが、そのころ福島原発事故が起こった。2011年6月、原発の賛否を問う国民投票が行われたところ、9割以上が反対した。

    2013年イタリアの電力自給率は約87%で、自国発電のうち7%を太陽光発電でまかなうなど、約3割を自然エネルギーで調達。原発大国フランスなど他国から電力を輸入していると揶揄されるが、国民が原発反対の意を表し、実践する意義は大きい。

    最近は自然エネルギーの固定価格での買い取り制(FIT制)により、海外からの投資も多いという。自然エネルギーによる電力供給だけでなく、断熱や省エネ行動の推進など多角的なアプローチで、原発なしの供給体系を実践している。

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    written by

    田口 理穂(たぐち・りほ)

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