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  • 公開日:2015.03.30
  • 最終更新日: 2025.03.21
40号 世界のソーシャル・ビジネス(日本) 南三陸で生まれたおしゃれな「手すき紙」
    • 疋田 祥世

    タオルの製造はあえてメーカーに依頼。品質保証と施設の負担減を目指した

    東日本大震災から4年。復興特需が減少を見せる今、被災地の福祉作業所が新規事業を立ち上げ、賃金向上と地域復興を目指す事例が増えている。なかでも宮城県南三陸町の生活介護事業所「のぞみ福祉作業所」が製作する手すき紙「NOZOMI PAPER(ノゾミペーパー)」は高品質とデザイン性で異彩を放つ。(疋田祥世)

    宮城県南三陸町は津波による壊滅的な被害を受けた地域。「のぞみ福祉作業所」も建物ごと波に飲まれ、2人が命を落とした。だが、利用者の居場所確保が第一と職員らが尽力し、2011年5月からは従来とは違う農作業を再開した。

    しかし、当時の状況下、主要活動であった下請け作業は皆無。そんなときに、仙台市手をつなぐ育成会(仙台市)から「紙すき」と「ステンシルキット」、翌年には東京の世田谷ライオンズクラブから紙すき機械一式が寄贈された。

    その後、紙好き交流センター麦の会(大阪府交野市)から技術指導を受け、「手すきハガキ」作りがはじまった。以降、材料となる紙パックは、地域住民や全国の支援者から提供されている。

    「ノゾミペーパー」は、この紙すき商品が生まれる物語に着目したデザイナー前川雄一氏、障がい者のアート支援を行う特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパン(東京・千代田)によるブランディングのもとで誕生。ペーパーアイテムブランド「ノゾミペーパーラボ」が誕生した。

    手すきの風合いを最大限に生かすため、型をイラストやロゴに合わせて特注。活版印刷を施し、品質を際立たせた。チリから南三陸町に寄贈されたモアイ像をモチーフとした「モアイ君」は、利用者の描いたイラストを起用したもので、施設のシンボルとなった。

    震災以後の活動を紐解き、アートとデザインの力で人々の心にささる価値を構築した結果、商品は全国各地で好評を得て、利用者の生きがいと自信へとつながった。

    将来は「きりこはがき」を売る店舗マップを作るといった構想もある

    施設のブランディングへ

    手すき紙のタグがついた「モアイ君タオル」も製作し、月間300本以上を売り上げた。ペーパーアイテムを含む全商品は南三陸さんさん商店街やウェブサイトのほか、全国各地のイベントなどで取り扱う。2013年度の全製品の総売上げは460万円で、前年度の約3.3倍。利用者の1カ月の工賃は、震災前の4千円から7千円にアップした。

    2015年からは前川氏と改めて契約し、施設全体のブランディングにも着手。施設に集う人々の魅力を生かした紙すき工房「ノゾミペーパーファクトリー」として新たな一歩を踏み出した。

    畠山光浩所長は「支援によるつながりに突き動かされて自分たちにできることを続けてきた。これから地域と協働し、全国から寄せられた支援への感謝を表していきたい」と意気込む。

    南三陸きりこプロジェクトとのコラボレーション商品も開発。地域伝統の神紙「きりこ」をモチーフに生かした各商店の「きりこはがき」を製作・販売することで地域活性化につなげる方針だ。

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    疋田 祥世

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