![]() 高額寄付調達に成功した「オソ・ストロング」や「サム・ストロング」など、ブースターを通じて資金調達に成功したトップ6
|
米国マサチューセッツ州ニュートンに本社を置くBooster(ブースター)は、メッセージやキャンペーンロゴの入ったTシャツを販売することで、NPOのクラウドファンディングを行うというユニークなプラットフォームを構築している。ブースターは、オンラインでオリジナルTシャツの制作と販売を行うCustomInk社が2013年8月に始めた取り組み。すでに総額2千万ドル(約23億円)を超える寄付の調達に成功している。(寺町幸枝)
アンドリュー・モスCEO率いるブースターは、個人やNPOの資金調達に役立つクラウドファンディングのプラットフォームを提供する。
同社のサイトを通じて、常時6千を超えるファンドレイジングを目的としたキャンペーンが立ち上がり、月間100万ドル(約1億2千万円)を超える資金調達が達成されているという。
その特徴は、何と言っても「Tシャツ」という分かりやすい商品を利用し、可視化できるメッセージやキャンペーンロゴを用いて寄付を募ることができる点だろう。
ブースターが提供する「オリジナルTシャツ」は、まさに一石二鳥プロジェクト。オーガナイザーは、独自のメッセージやロゴをネット上でデザインし、ストーリーを添えてネット公開する。
オリジナルTシャツの販売を通じて、キャンペーンの「資金調達」を行う。その後、販売したTシャツは、口コミというマーケティングにおける重要な「販促ツール」に変身するのだ。
さらに、ファンドレイジングにかかわる一連の活動を、サイト内で可能にしているため、オーガナイザーはワンストップショップとして同サイトを利用できる。この利便性こそが支持される大きな理由だ。
![]() CEOのアンドリュー・モスは、ソーシャル・コマースのパイオニアとして業界では知る人ぞ知る存在
|
このようにしてブースターを通じて立ち上がったキャンペーンは、家族の医療費負担を募るキャンペーンや、動物愛護、学校の教育費サポートや災害援助と多岐にわたる。
例えば、カントリーシンガーのジェシー・テイラー氏は昨年、ワシントン州オソ市の地滑り災害の被災者家族のサポートキャンペーンとして、「オソ・ストロング」を展開。3千枚を超えるTシャツを販売し、約5万2千ドル(約625万円)の寄付集めに成功した。
また、ルイジアナ州在住のガンと闘う2歳の少年サム・ロウトンくんとその家族を支えるための「サム・ストロング」キャンペーンは、約4千枚のTシャツ販売を通じて、寄付総額は5万5260ドル(約660万円)に上った。
PRディレクターのパトリック・ラフター氏いわく「現在Tシャツの配送サービスは米国内のみの展開だが、海外からも同様のサービスを求める声が高まりつつある。パンパシフィック並びにヨーロッパを中心に、近い将来ブースターのサービスを展開予定だ」と語ってくれた。
メッセージやスピリットの込められたTシャツをともに着ることで、多くの共感が得られるのも事実。非常にソーシャルビジネスらしいサービスを提供するブースターの今後の発展が楽しみだ。
寺町 幸枝(てらまち・ゆきえ)
Funtrapの名で、2005年よりロサンゼルスにて取材執筆やコーディネート活動をした後2013年に帰国。現在国内はもとより、米国、台湾についての情報を発信中。昨年より蔦屋書店のT-SITE LIFESTYLE MAGAZINEをはじめ、カルチャー媒体で定期出稿している。またオルタナ本誌では、創刊号以来主に「世界のソーシャルビジネス」の米国編の執筆を担当。得意分野は主にソーシャルビジネス、ファッション、食文化、カルチャー全般。慶應義塾大学卒。Global Press理事。