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  • 公開日:2015.09.30
  • 最終更新日: 2025.03.21
42号 世界のソーシャル・ビジネス(日本) 弱視でも使いやすい白黒反転手帳
    • 遠藤 一

    2016年版の試作品。A5サイズで黒い紙に白色やパステルカラーのペンで書き込むことができる

    弱視などの視覚障がい者や老眼の人は、白い紙ではまぶしすぎるなど暗所で文字を読むのが困難なことがある。アーチャレジー(横浜市)はそんな視覚に困難を持つ人のための白黒反転手帳「TONE REVERSAL DIARY」を開発した。書きやすく見やすいように黒い紙に白色やパステルカラーのペンで書き込むことができ、罫線や日付は通常より太めの白で印刷されている。(遠藤一)

    アーチャレジー代表の安藤将大さん(21)は先天性の視神経の障がい「朝顔症候群」を持つ東京工科大学4年生。先端技術ビジネスの学部に入ると「こんなにある技術が障がい者に還元されない。もっと私たち自身が使いやすい方向を作れないか」と思い、2015年2月に起業した。

    弱視の人たちの間では「白黒反転した文字は見やすい」のは常識だ。安藤さんは言う。「手帳によるスケジュール管理は社会人として必須。でも視覚障がい者にとって、使いやすいものが無かった」

    2月に試作を作ると、老眼の人からも「この手帳のほうが見やすい」という声が出て、視覚障がい者以外にもニーズがあると感じた。翌月には、4月はじまりの2015年版を300部テストマーケティングで発売した。オンラインのほか、福祉法人や福祉展での販売が中心だ。

    デザインは共同経営者の浅野絵菜さん(22)が担当。浅野さんは芸術関連が得意で、後天性の「網膜色素変性症」を持ち、暗い所では見づらい。外部に頼むより、当事者自身がデザインした方が、より使いやすい手帳になると考えた。

    「手帳は常に持ち歩くもの。見やすいと同時に、持っていて『いいな』と思えることが大事。例えばフォントはあまり凝ると読みにくいが、ゴシック文字だとおしゃれでなくつまらない。両立に試行錯誤した」(安藤さん)

    工学系に強く先天性障がいの安藤さん(右)と、芸術センスがあり後天性の浅野さんでタッグを組む

    休日がひと目で分かる

    視覚障がい者として、何の情報がほしいか考えた時に「休日が分かること」を重視した。年間のカレンダーのページは細く、多くのユーザーは数字まで見えない。そこで休日の部分を白抜きにして、パッと見で分かるようにした。

    マンスリーのページは、視覚障がい者と晴眼者の両方が使いやすいよう、TODOリストのボックス線を自分で書き、サイズを変えられるようにした。

    日本では黒い紙や白いインクの需要が少なくコストがかかる。量を刷って営業をかけるリスクを負えず、今年はクラウドファンディングでスタートし、1千部の資金を募った。

    2016年版は、A5サイズで価格は白ペンとのセット販売で2千円前後を予定、単品のみもある。

    「老人ホームなどでもニーズ調査をし、老眼など『隠れ視覚障がい者』にも広げていきたい。メガネストアなどにも置いてもらえれば。糸口が見えれば2017年版では万単位で販売したい」(安藤さん)

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    written by

    遠藤 一(えんどう・はじめ)

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