• 公開日:2016.03.30
  • 最終更新日: 2025.03.21
44号 特集 5年後からの復興支援、企業・NPOの協働「第2ステージ」へ

    宮城県石巻市牡鹿半島狐崎浜。震災後に再開した定置網漁船が朝焼けに光る(写真=福地波宇郎)

    東日本大震災から5年が経った。多くの企業が被災地に入り、NGO/NPOとの協働で多くの社会的課題解決に取り組んだ。一方で、支援活動が長期化するなかで、支援ニーズも多様になり、再出発を余儀なくされる事例も少なくない。企業やNPOは「傷んだ地域」をどこまで再生できるのか。その成果を待っているのは東北だけではない。(副編集長・吉田広子、編集部・佐藤理来、斉藤円華、松島香織、写真:福地波宇郎)

    「復興を実感」21%だけ

    「船は戻ってきたけれど、今はとにかく人手が足りない。収入は、まだ震災前の6割程度だ」宮城県石巻市でワカメ養殖を営む60代の漁師が語る。被災沿岸部では町を高台造成しているが、住めるようになるまでまだ時間がかかる。その間に、仙台など都市部への人口流出が進み、過疎高齢化がさらに加速した。

    震災後、東北に魅せられたボランティアには移住した人もいる。千葉県に住む大学4年生の伊藤穣さんは漁業体験のボランティアに通う中でその仕事ぶりに感銘を受け、石巻の漁師が個人経営する会社に新卒就職を決めた。「宮城の美味しいもの、それを作っている人に感動して、同年代の若者にも知らせたくなった。石巻で働くことで復興の手助けになれば」

    だが、全体的にはボランティアの数は減少し、報道も減っている。「毎年3月は取材がいっぱいくるけど、11日を過ぎるとぱったり静かになるよ」。取材中、漁師から受けた一言が心に突き刺さる。

    「3・11」から5年が経過した今もなお仮設住宅で暮らす被災者は、福島・宮城・岩手の3県で約6万人、避難者は全国で約18万人もいる。仮設住宅で発生した孤独死は、5年間で200件を超えた。

    東日本大震災では、阪神・淡路大震災と比べて、仮設住宅からの移転が進んでいない。阪神・淡路では、震災後約5年で仮設住宅入居者はほとんどいなくなったが、東北3県では、いまだピーク時の6割以上が仮設住宅に住んでいる。

    福島民報社と福島テレビの県民世論調査(2016年3月5日実施)によると、福島県内で「復興を実感している」との回答は21.8%にとどまった。「県内の現状が国民に正しく理解されていると思うか」に対しては、「理解されている」の6.1%を大幅に上回り、「理解されていない」が73・2%に上った。

    NHKが岩手・宮城・福島の3県の被災者や原発事故の避難者を対象に行ったアンケートでも、復興状況について「想定よりも遅れている」、または「進んでいる実感が持てない」という回答が8割に上った。「復興が進んでいるという実感が持てない」という回答は岩手・宮城では18%だったのに対して、福島では50%と3倍近い。

    「東北の復興は進んでいるのか」「いまでも支援は必要なのか」。他地域は東北の現状を十分に理解しているとは言いがたい。

    (一部転載)

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