![]() オール・グッド社は「フェアトレード・アワーズ2014」で世界で最も公平な取り引きを行っていると表彰された
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私たちにすっかりお馴染みの炭酸飲料コーラは、世界中で毎日約19億本も飲まれている人気商品だ。しかし近年、含有糖分の多さが批判されているのも事実。そんな中、2012年にニュージーランドで産声をあげた「カルマ・コーラ」は生産者にも、環境にも、消費者にも配慮し、愛飲者が増えている。
(ニュープリマス=クローディアー真理)
コーラの主原料とされるコーラの原産地シエラレオネ共和国。西アフリカ西部に位置する同国は、2002年に終結した10年以上にわたる内戦と、2014年に流行ったエボラ出血熱の影響で、人々の生活は苦しい。
コーラの実を収入に結び付けたいが、大手飲料メーカーのコーラ飲料にはコーラの実は使われておらず、地元民が伝統的に食料や薬、儀式に用いる程度で、需要は頭打ち。価格も仲買人の言うなりだ。大きな市場で売ろうにも、整備不足の道路を運ぶのは難しく、途中にある検問所通過の際の支払いで利益は消える。
![]() オール・グッド社のサイモン・コーリーさん、クリス・モリソンさん、マット・モリソンさん(左から)
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コーラの実の発見者ながら、何の益もないシエラレオネの人々の支援に乗り出したのが、ニュージーランドのオール・グッド社だ。有機バナナの輸入で成功を収めた同社の飲料の原材料は、すべてフェアトレードかつオーガニックだ。
同社は、フェアトレード運動の中心人物として有名な英国のアルバート・タッカーさんや国際NGOを通じ、ティワイ地方にあるボーマ村とパートナーを組んだ。
ボーマ村との取り引きは、インフラの整備のみならず、フェアトレードとオーガニック栽培の枠組み作りから始まった。そして、長期にわたる安定かつ適正な価格でのコーラの実の取り引きと、サステナブルな村の構築を望む村人の意向を着実に実行するため、同社はカルマ・コーラ・ファウンデーションを創設。村の自立を目指し、「村民こそが、村に何が必要かを知っている」という基本理念に則り、運営している。
4年前のカルマ・コーラ発売以来、実の代金と、1本売れるごとに5NZセント(約4円)、合わせて7万5千米ドル(約826万円)が村と周辺のコミュニティーに還元された。それを基に、村内の橋の建築、女子60人の就学、小学校教師の配置、エイズ教育のための演劇グループの支援、12の農場の再建、種子銀行の設置、エボラ出血熱のための医療品の入手などが実現した。
今年はゲストハウスを建設し、収入増加を図り、学校用家具の修理、村外に出て取り引きをする者の交通手段の確保などを目指す。
「カルマ」という名が示す通り、コーラが売れれば、村の再興に一歩近づき、コーラの実を継続的にオール・グッド社に供給できる。コーラは消費者の喉を健康的に潤し、満足した消費者はまたカルマ・コーラを買う-という訳だ。最近、日本でも入手できるようになったカルマ・コーラ。私たちもそのサイクルの一員となり、ボーマ村を助けることができる。
クローディアー真理
ニュージーランド在住ジャーナリスト。環境、ソーシャル・ビジネス/イノベーションや起業を含めたビジネス、教育、テクノロジー、ボランティア、先住民マオリ、LGBTなどが得意かつ主な執筆分野。日本では約8年間にわたり、編集者として多くの海外取材をこなす。1998年にニュージーランドに移住。以後、地元日本語誌2誌の編集・制作などの職務を経て、現在に至る。Global Press所属。