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  • 公開日:2016.07.29
  • 最終更新日: 2025.03.21
45号 特集 木と紙のリスクはグレーゾーンにあり
    • 栗田 路子

    世界の5大木材産出国のひとつインドネシア。かつて、伐採される木材の9割は違法だった (C)European Union-CIFOR Jan van der Ploeg2015

    世界の違法伐採木材は木材貿易の10─30%を占め、その取引額は最大年間16兆円に達するという。各国政府は違法伐採の法的規制を強め、日本でも遅ればせながら今年5月にクリーンウッド法が成立したが、残念ながら強制力はない。ブラック(完全な違法)な木材ではないから使うというスタンスでは、日本企業は大きな事業リスクを抱えることになる。(副編集長・吉田広子、編集委員・斉藤円華、編集部・辻陽一郎、小松遥香、寺町幸枝、ブリュッセル=栗田路子)

    日本の取り組み不十分

    「日本は、違法伐採が疑われるマレーシア・サラワク産合板の55%を輸入する最大の輸入国だ」-。

    2016年3月末、NGO熱帯林行動ネットワーク(JATAN、東京・新宿)やオーストラリアの環境NGO「マーケット・フォー・チェンジ」が記者会見を開き、批判した。

    サラワク産合板は、日本の商社などを通じて国内に流通し、その多くはコンクリート型枠(コンクリートパネル)やフローリングの基材に使用されている。

    JATANは、「サラワクに残されている熱帯天然林は、当初のわずか5%に過ぎない。サラワクの伐採は、森林に暮らしや生計、文化、食料を依存している先住民に負の影響を与えている」と報告している。

    サラワク州の人口235万人のうち、半分が先住民だ。環境問題調査会社のグローバル・ウィットネス社(本社・英国)によると、先住民コミュニティーはこれまで、サラワク州政府や企業を相手に、先住民族の土地に対する慣習権違反の訴えを200件以上起こしてきたという。

    地球・人間環境フォーラム(東京・台東)の坂本有希企画調査部長は、「意図的であれ、無意識であれ、人権侵害に『加担』していることに変わりはない」と言い切る。

    マレーシア・サラワク州では、熱帯雨林が伐採され、プランテーションの開発が進められている(提供:熱帯雨林行動ネットワーク)
    • 木材ロンダリングも横行

    だが、この問題は大手メディアではあまり報道されなかった。日本人の関心も高いとは言えない。

    そもそも「違法伐採木材」とは何か。どんな問題をはらんでいるのか。

    林野庁の定義では、「各国政府から正規の許可を受けていない伐採(許可された量・サイズ以外の伐採を含む)、伐採禁止地域における伐採、伐採が禁止されている樹種の伐採など、それぞれの国の法令に違反して伐採された木材」としている。

    インターポール(国際刑事警察機構)とUNEP(国連環境計画)が2016年6月に公表した報告書によると、違法伐採木材は木材貿易の10│30%を占め、その取引額は年間500億ドル(約5兆3500億円)-1520億ドル(約16兆3千億円)に上る。

    同報告書では、「違法なものを合法に見せかける『木材ロンダリング』の方法は進化し、より高度に隠いん蔽ぺいされている。近年、多国間にまたがる組織的犯罪が増えている」と指摘する。

    違法伐採が多いとされているのは、主に東南アジア、ブラジル、アフリカ、ロシアなどだ。特に、マレーシア・サラワク州(ボルネオ島北西部)は、世界で最も森林減少率が高い地域の一つで、先住民の人権侵害や熱帯雨林の違法伐採が続いている。

    サラワク州では、マレーシア政府が管理するライセンス制度で森林伐採を規制している。伐採許可を保有するのは、主にマレーシアの木材大手6社、サムリン、シンヤン、リンブナン・ヒジャウ、タ・アン、WTK、KTSだ。

    だが、組織的な汚職や制度の脆弱さから、森林保全地域での伐採や地元住民の土地を奪う破壊的な伐採など、「違法伐採」が横行している。

    (一部掲載)

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    written by

    栗田 路子(くりた・みちこ)

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