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  • 公開日:2017.04.04
  • 最終更新日: 2025.03.21
ペットフード大手、違法捕獲の魚の原料使用を中止
    • クローディアー真理

    インドネシア沖の公海でのトランスシップメント。母船を中央に、両脇に冷蔵船が横付けしている (C)Shannon Service/Greenpeace

    ネスレと、マース(本社・米バージニア州マクリーン)は、ペットフード商品の原料となる水産物のうち、違法な方法で捕獲された水産物の使用を中止した。特に、収穫魚を冷蔵船に積み替え、母船は操業を続ける「トランスシップメント」漁法による魚を対象にしている。同漁法は魚の乱獲を招くとして内外から批判が高まっており、両社は今後とも、水産物のサプライチェーンの可視化を進めていく。(クローディアー 真理)

    3月中旬、トランスシップメントにより捕獲された水産物の使用を、ネスレは即時完全中止、マースは供給元が問題を解決するまで一時見合わせ、改善が見られない場合は中止に移行すると発表した。

    トランスシップメントとは、荷卸しした貨物を他の船舶に積み替えて別の目的地に輸送することだ。港湾局の目が届かない海上でのトランスシップメントは、多くの問題をはらんでいる。

    冷蔵船が漁獲を回収し燃料や食料を補給するため、母船の長期操業が可能になり、乱獲を招く可能性がある。漁船ではない冷蔵船は、IUU(違法・無報告・無規制)漁業を取り締まる漁獲証明制度を免れ、違法捕獲された魚を市場に流入することができる。また母船では、人身売買で連れてこられた乗組員が強制労働を強いられ、薬物、銃器、野生生物などの不正取引が行われているという。

    ネスレ ピュリナペットケアの、ジョン・スコットサステナビリティ部門責任者は、「今回の全面使用中止は、過去7年間、グリーンピースと共に進めてきた、原料の水産物に対する責任ある調達方針強化の一環」と話す。マースペットケアの、イザベル・アエルヴェットグローバル・サステナビリティ部門責任者も、「トランスシップメントは即時解決すべき。当社製品のサプライチェーン上で、環境破壊と人権侵害があってはならない」と言う。

    2月下旬には、世界の商業漁業情報のウェブサイト、グローバル・フィッシング・ウォッチが、トランスシップメントに関する世界初の報告を公表した。2012~2016年において5,000以上の活動が行われたことを明らかにしている。

    written by

    クローディアー真理

    ニュージーランド在住ジャーナリスト。環境、ソーシャル・ビジネス/イノベーションや起業を含めたビジネス、教育、テクノロジー、ボランティア、先住民マオリ、LGBTなどが得意かつ主な執筆分野。日本では約8年間にわたり、編集者として多くの海外取材をこなす。1998年にニュージーランドに移住。以後、地元日本語誌2誌の編集・制作などの職務を経て、現在に至る。Global Press所属。

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