![]() 中小企業等での残業削減が焦点となっている Image credit:Howard Lake
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東京商工リサーチ(TSR、東京・千代田)は長時間労働に関する調査を実施した。93.8%の企業で残業があるものの、79.7%が残業削減に努めていることが分かった。だが、中小企業等は「残業削減に努めていない」との回答が14.0%と大企業と比べ2倍の高さで、人手不足や納期の問題が大きく浮かび上がっている。17日には、残業時間の上限を単月で100時間未満とすることに政労使が合意したが、今後中小企業等での長時間労働改善に焦点が当たりそうだ。(辻 陽一郎)
調査は2月14日から24日、TSRがインターネットによるアンケートを実施し、1万2519社から有効回答があった。資本金1億円以上を大企業、1億円未満を中小企業等と定義している。
残業の有無について、「恒常的にある」と「時々ある」と回答した企業は合わせて93.8%。残業がある理由には、「取引先への納期や発注量に対応するため」が 37.6%、「仕事量に対して人手が不足している」が24.7%と続いた。
一方、残業時間を減らす努力をしているかという問いに「いいえ」と回答した企業は、「納期・期日の問題などもあり、個々の企業努力ではどうしようもない」や「中小零細企業は社員が絶対的に少なく、簡単には改善できない」など、人手不足に関連する理由をあげる傾向が見られた。
TSR情報本部の原田三寛担当は「中小企業等は昔ながらの商慣習で、納期に高く答えたい気持ちがある。大企業が残業時間を削減すると、そのしわ寄せは中小企業等に及んでしまう」と話した。
少子高齢化によって労働人口の減少が懸念される中、人手不足を抱える中小企業等では残業削減を自社努力だけで解決することは難しい。原田担当は「長時間労働は自分の会社だけ削減できれば良いという訳ではない。受発注の工程にゆとりをもたせるなど、サプライチェーン全体で削減できる仕組みを目指していく必要がある」と述べた。
辻 陽一郎 (つじ・よういちろう)
オルタナ特約記者、NPO新聞代表。フリーライターとして、NPO・NGOやボランティア、ソーシャルベンチャー、企業のCSRなどを中心に取材。