![]() 渋谷区で行われたLGBTのイベント「東京レインボープライド」 Image credit: Natsuki Kimura
|
同性のパートナーを配偶者として認めるように、社内規定を改定する企業が増えている。大手IT企業に多く、12月にはミクシィが同性パートナーにも配偶者と同様の福利厚生制度を適用することを発表した。7月には楽天、10月にソフトバンクが同様に社内規定を改定。昨年末からは渋谷区や世田谷区が同性パートナーシップ証明書の交付を始めている。福利厚生に限らず、企業にはここにきてLGBT社員に配慮する取り組みが求められている。(辻 陽一郎)
日本の法律で認められた配偶者には、多くの企業が福利厚生の制度として慶弔休暇などを認めている。結婚したときや、配偶者・配偶者の父母が亡くなったときには休暇をとることができるなど、さまざまな制度を活用できる。こうした制度を同性のパートナーにも適用するという方針がIT企業などで広がっている。
ミクシィでは12月から配偶者を同性のパートナーを配偶者として定義するように規定を改定。基準を満たせば慶弔休暇や祝い金・見舞金、育児・介護休業などの制度利用を可能とした。
同社の菊池翔平広報担当は「さまざまな背景を持つ社員が増えてきたことで、多様性や個性などを尊重した働きやすい環境整備が必要になった」と述べる。改定後、すでに制度を利用した社員もいる。同社では、就業規則に「性の多様性を尊重する」ことを明文化し、社員が働きやすい環境作りを目指す。
10月には、ソフトバンクも同様に同性パートナーに対する社内規定を改定。同社はレズビアン・ゲイの映画祭「レインボー・リール東京」へ協賛するなど、以前からLGBTを支援する取り組みを実施してきた。携帯電話の家族割引においては、同性パートナーでも適用される基準となっている。同住所であれば申請ができるというLGBTフレンドリーな枠組みだ。昨年からNTTドコモも家族割引の適用範囲を拡大して、「地方自治体等が発行する同性とのパートナーシップを証明する書類」があれば申請可能とした。
楽天も7月、配偶者の定義に同性パートナーを含める改定を行なった。同社ではダイバーシティ推進課を設け、外国人やLGBTへの取り組みを行っている。また、社員を対象とするものだけでなく、各サービス利用客を対象とする改定も行った。楽天カードにおいては、家族カードの対象に同性パートナーを含めるように定義を広げた。LGBTの象徴であるレインボーカラーのカード発行も始めている。
日本企業のLGBT配慮への取り組みは大手企業を中心として広がっているが、まだ取り組む企業数は多くない。日本アイ・ビー・エムや虹色ダイバーシティなどが中心となる「work with Pride」が10月に発表したLGBTなどの性的マイノリティに関する企業の取り組みを評価する「PRIDE指標」に応募したのは82の企業・団体だ。
楽天がベストプラクティスとして、オフィスの全フロアに性に関わらず利用できる多目的トイレを設置の事例などが評価されるなど、大手企業の先進事例が目立つ。今後、先行事例を参考とした多角的な取り組みが求められると共に、LGBT配慮に取り組む企業の底上げも重要な課題だ。
LGBTを支える動きとして、制度やトイレの設置などハード面を整えることだけでなく、偏見を変えていくためにも社内でイベントを開くといった試みも大切だ。最近では当事者ではなく、理解や支援を示す人を指す「アライ(Ally)」を加えて「LGBTA」と言うように、アライを増やしていくことは誰もが働きやすい環境に近づく一歩となる。
辻 陽一郎 (つじ・よういちろう)
オルタナ特約記者、NPO新聞代表。フリーライターとして、NPO・NGOやボランティア、ソーシャルベンチャー、企業のCSRなどを中心に取材。