展示会場には多くの作家・クリエイターが足を運んだ
|
日本画、人形、仏壇、食器、家具、楽器といった伝統工芸には、動物の皮革や骨髄からつくる膠やウルシノキから採取する漆といった素材が欠かせない。しかし、和膠の生産は途絶え、工場で加工されるゼラチンが用いられるようになった。国内で使用される漆の98%は中国からの輸入に頼っている。綿花に至っては100%が輸入品である。経済的な素材で代替され「本物」が入手できない現状に、伝統の担い手たちは強い危機感を覚えている。
「NEXT100年」プロジェクトは、地域・素材ごとにNPOの設立や支援者のネットワークづくり、後継者の育成といった取組を実施してきたが、工芸をノスタルジーで保存するのではなく次世代に繋ぐためには、さらなる価値観の転換が必要と考え、ナカダイの参加を要望した。
ナカダイは1日60トンの産業廃棄物を受け入れ、99.4%のリサイクル率を実現している廃棄物処理業者だ。その特徴の一つは、廃棄物を徹底的に分別して紹介する「マテリアルライブラリー」にある。さまざまな企業担当者がそこに訪れ、素材としての魅力が再発見されることにより、オフィス家具の製作やイベントブースの装飾など、産廃処理業の中だけでは生むことが困難だったビジネスが次々と登場した。
「廃棄物を魅力的な素材として伝えることで、業界の垣根を越えた新しい事業を生んでいくことが、6年ほど前から我々のビジネスのコアになっています。同じように、伝統工芸の魅力をもっと分かりやすく伝えていけば、現代の産業と繋げていくことができるでしょう」(中台常務)
報告会では、害獣の狩猟による膠づくりとジビエ料理レストランのコラボなどの試みが紹介された。今後、ナカダイが本格的に関わりビジネスマッチングを進めていく。
written by
瀬戸 義章(せと・よしあき)