• 公開日:2016.10.14
障がい者の法定雇用率達成は31%――エン・ジャパン調査
    • 辻 陽一郎

    企業には障がい者の積極的な雇用が求められている

    人材採用大手のエン・ジャパンは民間企業223社に調査を行い、障がい者の法定雇用率2.0%を達成している企業は31%にとどまっていると発表した。50人以上社員がいる民間企業では、全社員の内2.0%以上の割合で障がい者を雇用することが義務づけられている。同調査結果では、雇用が進まない理由として、障がい者に適した仕事がないことや適した設備が未整備であることなどの点を挙げている。

    障がい者の法定雇用率を定める「障害者雇用率制度」は、障がい者も適性にあった雇用を保障するために導入された。障がい者雇用率が義務化された1976年以来、雇用は少しずつ増加してきた。2013年には法定雇用率が1.8%から2.0%となり、企業には一層の雇用が求められているが、依然として法定雇用率達成企業は3割ほどと停滞している。

    エン・ジャパンが毎年行う「障がい者雇用実態調査」によると2015年度に法定雇用率2.0%を達成した企業は32%だが、2016年度は31%とほぼ横ばい。雇用が増加しない理由について、雇用率未達成企業の77%が「障がい者に適した仕事があるか」、41%が「設備・施設・機器など安全面の配慮」と挙げている。

    同社の松田美生広報担当は「企業は、障がい者の安全に配慮した設備を新たに設けるための予算を課題と感じている」と言う。実際、身体障がい者や知的障がい者を雇用する場合、設備の改善や新設が必要となることが多い。国は未達成企業から納付金を徴収し、助成金や達成企業へ報酬金を支給することで雇用を促進している。

    設備などハードの面の改善に加えて、松田広報担当は「企業の担当者が関心の高い情報は、健常者社員の障がいへの理解度を高めることや障がいに関する社員への情報共有」と話す。

    4月からは「障害者差別解消法」が始まり、行政機関や民間企業には障がいを理由とした不当なサービスを行わないといった、合理的配慮が求められるようになった。2018年からは身体障がい者、知的障がい者に加え精神障がい者の雇用も障害者雇用率制度の対象となる。障がい者の雇用を促進するためには、ハードを整備することだけでなく、社員の障がい者理解を拡大するというソフトの面での取り組みが一層必要となってくる。

    written by

    辻 陽一郎 (つじ・よういちろう)

    オルタナ特約記者、NPO新聞代表。フリーライターとして、NPO・NGOやボランティア、ソーシャルベンチャー、企業のCSRなどを中心に取材。

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