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繊維再生技術を持つ米エバニューはリーバイス・ストラウスと共に世界で初めて廃棄コットンを再利用してジーンズを製造する。Image credit: Evrnu
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ファッション業界では、年間に膨大な量の衣料品や生地が廃棄される。米国では年間約1000万トン、EUでは300万トンにのぼる。廃棄生地の活用に乗り出すデザイナーや企業が増えているのは当然のことのように思える。(翻訳編集:小松遥香)
ヨーロッパの取り組み
ヨーロッパでは、すでに「Trash-2-Cash」(ゴミをお金に変える)という廃棄生地問題への取り組みが始まっている。参加しているのは、ヨーロッパ各国のデザイナーやデザイン・リサーチャー、科学者、原料供給者だ。実際に、衣料品関連の企業や大学など19団体が協力して、使用済みの生地の繊維を利用した高品質製品の製造技術に投資をしている。
Trash-2-Cashが目指すのは「廃棄処理の過程を利用したリサイクル方法」のデザインで、生地の循環型経済を実現できるかどうかの重要な挑戦と言える。
アールト大学とパートナーシップを結び、繊維の再生技術を開発しているフィンランド技術研究センターのハーリン博士は「必要とされなくなった生地を新製品用の原料に変えるということは、ヨーロッパの繊維製造業・貿易に革命を起こすということだ」と話した。
2015年に始まったTrash-2-Cashの取り組みは2018年まで継続予定だ。これはEUの大規模な研究やイノベーションを促進する「Horizon2020計画」の一環で、循環型経済への取り組み支援として890万ユーロの総予算額のうち790万ユーロはEUが資金提供している。欧州の衣服行動計画では、2019年3月までに年間9万トン以上の廃棄衣類を再利用する予定だ。
米エバニューとリーバイス・ストラウスの取り組み
米シアトルに拠点を置くエバニュー社は、廃棄された生地を再生繊維に変える再生技術を開発している。5月初め、同社はリーバイス・ストラウスと共に第1号のジーンズ試作品を完成させた。世界初の廃棄コットンから作ったジーンズだ。
今回、試験的につくられたリーバイス511は5枚ほどの廃棄Tシャツからできた。
リーバイス・ストラウスのグローバル製品イノベーションを率いるディリンジャー氏は「この試作品はアパレル業界にとって大きな一歩だ。再生利用することで、ジーンズ1本に必要なコットンを育てるのに、必要な水の98%は減らせる。もちろん、まだ始まったばかりだが、この技術は間違いなく地球の負荷を大幅に減らす手助けになるだろう」と話した。
リーバイス・ストラウスのライフ・サイクル・アセスメントによると、コットンの生産過程で必要な水の量はジーンズ1本のライフサイクルで使用される量の68%を占めている。
「再生繊維を開発しながら節水に取り組むことは、アパレル業界のウォーター・フットプリントを大幅に減らすことにもつながる」と続けた。
エバニューの創始者ステイシー・フリン氏は「ファッション業界がコットンを使わなくなることはない。エバニューは、既存のマーケットと新たなマーケット両方の需要に合わせて、資源を有効活用していけるだろう」と話した。
「新たな市場が拡大するにつれ、我々もその需要に合わせるために技術をさらに発達させなければならない。ここに未加工原料再生の大きな可能性がある。アパレル業界は2025年には今の2倍の市場規模になると予想される。現在の資源抽出率から考えると、将来的な需要を満たすことは不可能だ。つまり、資源を効率よく管理するという新しい技術には大いなる可能性がある。大事なのはバランスなのだ」と同氏は続けた。
2016年5月現在、エバニューの他にこの技術を研究している企業はいないが、イギリスやフィンランド、スウェーデンにも似た技術を持つ企業がある。例えば、ストックホルムに本拠地を置くスタートアップ企業のリ・ニューセルは、ジーンズやTシャツなどをビスコースやリヨセルなどの繊維に使用されるパルプに再生する技術を持っている。
リーバイス・ストラウスはエバニューと協働して、2020年までに再生繊維商品を生産するための設備を整える予定だ。同社は今年4月、アップサイクルを得意とする伊企業アクアフィルと廃棄繊維をからできたナイロンを使用した男性用ジーンズを発表している。