日本 コーポレートガバナンス・コード導入から1年
サステナビリティー関連項目の見直しが必須 NGO報告
サンフランシスコに本部を持つ米国の国際NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)は最新のレポートで、日本企業が提出しているコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の報告書について、各ステークホルダーに対するサステナビリティーの達成状況に関する説明が不十分だと指摘した。
評価レポートには、「現在の制度上、多くの企業がサステナビリティーとステークホルダーへの責務の遵守について納得できる報告内容を提出できていない。さらに、報告書を読んでいると、サステナビリティーとステークホルダーへの責務を本質的に理解しているのかという疑問さえ浮かぶ」と厳しい言葉が並ぶ。
日本のコーポレートガバナンス・コードの適用は2015年6月に始まった。ちょうど1年が経過した6月、RANは熱帯林を取り扱う製紙会社や商社、その取引先金融機関など10社が提出したコーポレートガバナンス・コード報告書の評価を公表した。どの企業もESG(環境・社会・ガバナンス)リスクの情報開示を十分に行っていないことから、RANは株主に対して注意喚起している。
プレスリリースでは「企業が環境・社会的リスクを公表しないということは、ブランド価値の低下や供給停止、訴訟など不測の事態につながる可能性があり、結果として株主のリスクが高まる」と訴えている。
評価レポートによると、日本の上場企業のESGに関する諸問題への取り組みは進んでいない。事実、どの企業もESG対策を報告してはいるが、記載内容は企業によって様々だ。さらに、熱帯林の破壊につながる可能性がある商品のESGリスク対策も総じて不十分と言える。熱帯林の伐採などにより現実的に起きている問題の深刻さを考えると、紙パルプや木材、ヤシ油産業企業が提出している報告書は見直すべき点が多々ある。
今回レポートに掲載されている10社はコーポレートガバナンス・コードを遵守していると言いながらも、重大なESGリスクから目を背けている。10社のなかには、現地コミュニティーと係争中の企業もある。評価レポートは、現状のコーポレートガバナンス・コードでは、日本の上場企業のサステナビリティーへの取り組みが信用できるのか否か分からないと締めくくっている。
またRANは、金融庁に対しては基本原則の記載内容の改善点を示し、東京証券取引所には企業の報告内容の明確化・義務化を提案している。企業には、熱帯雨林の破壊につながる商品部門の対策を強化し、ESGリスク要因の解決に取り組むよう主張している。
こうした根本的な問題が解決されるまでは、金融庁が各企業の報告書を積極的に監視・検証するべきだとも提言している。安定した経営を行い、取引先と良好な関係を築きながらESGに関する諸問題を解決していくには、正確な報告と情報開示が重要になる。
評価レポートで取り上げられた10社は、日本を代表する企業と考えてもいいだろう。しかし、今回のレポートで、上場企業が積極的かつ持続可能なESG対策を自発的に行い、さらに株主が企業の抱えるリスクを不備なく正確に把握できるようになるまでには、改善すべき課題が多くあることが分かった。