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  • 公開日:2016.04.28
  • 最終更新日: 2025.03.21
飲食店と給食の廃棄物をバイオガスに
    • 羽生 のり子

    (C)Moulinot Compost & Biogaz

    フランスで、飲食店や学校給食から出る残飯や野菜の皮などの有機廃棄物をバイオガスとコンポストにする事業が始まっている。パリのレストラン経営者が2013年、新会社をパリ近郊に設立し、現在はパリ市内の120軒の飲食店や市内の学校から残飯が届くようになった。2015年の新会社の売上高は35万ユーロ(1ユーロ=約126円)に達し、この事業の先駆者として国内で注目される存在になった。

    パリ市2区でレストランを経営するステファン・マルティネスさんは、以前からレストランから出る食べ物の屑や残飯の無駄が気になっていた。それを減らすため、2013年11月に、新会社ムリノ・コンポスト&ビオガズをパリ郊外に設立した。目的は、パリ市内の給食、病院食、レストランから有機性廃棄物を引き取り、メタン発酵させてバイオガスを得、コンポストも作るというものだ。

    2014年はパリ市2区の学校給食に加え、全仏ホテル飲食店組合と提携し、80軒から有機性廃棄物を引き取った。現在は、パリ市の学校給食の一部と4軒の国立病院の病院食のほか、高級レストランからファストフード店まで、計120軒の廃棄物を引き受けている。これらの団体や飲食店は1トン当たり約300ユーロをムリノ社に払い、収集してもらう。

    お金を払ってまで収集してもらう理由は、有機性廃棄物を有効利用するために、大量に有機性廃棄物を出す団体や店にゴミの選別を義務付ける法律が2012年に発効したからだ。ゴミ出しに許可される有機性廃棄物の量は年々減り、2012年には1軒につき年間120トンだったが、2016年には10トンになった。つまり、残りはリサイクルしなければならないということだ。

    2015年12月にパリで行われたCOP21では、会場から出る有機性廃棄物を回収した。マルティネスさんは、「有機性廃棄物の分別はフランスではまだ進んでいない。うちはパイオニアだ」と胸を張る。実際に電気にするのは別の提携会社で、ムリノ社は電気の販売には関わっていない。コンポストはこれまで試験段階だったが、有機農業に使える認証を取得し、2017年から都市近郊で農業を行う市民団体や農家に販売するという。

    同社は、輸送エネルギーの消費を抑えるため、小型トラックで市内から集めた廃棄物を中間貯蔵所に貯めた後、まとめて輸送したり、セーヌ川を使って船で運送したりするという工夫も行っている。

    written by

    羽生 のり子(はにゅう・のりこ)

    環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。

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