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フランスの園芸用品チェーン大手「ボタニック(Botanic)」は2008年に農薬と化学肥料の販売を止め、市民からの支持を広げている。オーガニックに力を入れ、家庭菜園用オーガニックのイチゴの苗などを独自に商品化したほか、オーガニック食品専門の売り場もある。シニアと身体障がい者の雇用や男女比同率も実現、雇用面でも同国で高い評価を得ている。
園芸はフランスで絶大な人気のある趣味の一つだ。フランス人の9割が庭、テラス、窓際などの園芸スペースを持っている。数ある園芸用品店の中で、いち早く持続的発展を打ち出したのがボタニック(本社:オート・サヴォワ県アルシャン町)だ。
1977年に、スイスに近いサヴォワ地方で設立され、95年に社名をボタニックに変更した。2002年に創立者の一人クロード・ブランシェ氏の息子、リュック・ブランシェ氏が社長に就任してから、特に持続的発展に力を入れるようになった。
2008年に、農薬と化学肥料を全店から撤廃するという画期的な政策を打ち出し、今に至っている。農薬の代わりに、殺虫効果のあるイラクサの浸出液、除虫菊とナタネ油を合わせたものなど、有機農業で許可されている植物由来の除草、殺虫、殺菌効果のある製品を販売している。化学肥料の代わりには、植物、動物、鉱物由来の天然素材を元にした、やはり有機農業で使える製品を置いている。
毎年春にフランス全土で開催される、農薬の害と、農薬の代わりになる方法についての情報を与える「無農薬週間」イベントの時に、家庭にある古い農薬を回収し、持ち込んだ人一人当たりに5ユーロ(1ユーロ=約126円)の商品券を渡すという、農薬の廃品回収も行っている。同社独自のイベントで、2014年から15年の5年間で20トンを回収した。
有機栽培の植物や種苗にも力を入れている。有機のイチゴやハーブの苗はゴミになるプラスチックの鉢入りではなく、土が鉢の形に固められた状態で売られている。2007年に設けられた有機食品と化粧品、天然素材の洗剤などの有機市場コーナーは、通常の有機食品店と変わらない豊富な品揃えだ。
ボタニックは、全仏に66店をフランチャイズで展開し、売り上げ3億2千万ユーロ。2200人の従業員は男女同比率で、シニアと身体障がい者の雇用を積極的に進め、社会における企業責任を果たす努力をしている。
羽生 のり子(はにゅう・のりこ)
環境、エコロジー、農業、食物、健康、美術、文化遺産を主な分野とするジャーナリスト。1991年からフランス在住。環境ジャーナリスト協会、自然とエコロジーのジャーナリスト・作家協会、文化遺産ジャーナリスト協会(いずれもフランス)の会員。共著「世界の田園回帰」(2017年、農文協)。