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  • 公開日:2016.02.03
  • 最終更新日: 2025.03.21
安さだけで電気を選んでよいのだろうか

    英語で You are what you eat. という言い回しがある。米国でダイエットの先生もよく使う通り、「あなたはあなたが食べたものでできている」という意味だが、もう一つの解釈もできる。(森 摂)

    つまり、どんな食材でどんな食事を作り、あるいは食べ物を買い、どのように食べるのかがその人の生き方や考え方を表し、それは他人に見られている、という意味合いだ。
    今年4月の電力自由化が近付いてきたが、実は「電気を選ぶ」ことも、食を選ぶことと同じなのだ。

    いまテレビでは盛んに電気料金の安さを訴えるCMが増えてきた。もちろん価格もサービス選択において重要な要素だ。ただ、その電気はどう作られているのか、だれから買うのか、その結果、私たちは社会をどう変えていきたいのかーーも同時に問われている。

    一つの答えは、自然エネルギー(グリーン電力、再生可能エネルギーとほぼ同義)だ。多くの世論調査では、原発の再稼働に反対・慎重な割合は今でもおおむね6割を超えている。であるならば、電気のなかでも自然エネルギーを優先的に買うことで、自らの意見を経済社会に反映できるのだ。

    さらには、できるだけ地元の電気を買うことで「エネルギーの地産地消」が期待でき、顔が見える発電会社から買うことによって発電者との意思の疎通が図れる。単なる電気代が、地域を動かす「志金」になる可能性を秘めているのだ。
    日本の自然エネルギーが全発電量に占める割合はまだ4%台(自然エネルギー白書)。30%を超えたとされるドイツなどに大きく後れを取っている。
    参考記事:「ドイツ、再エネ8割でも電力供給は安定」

    電気を選べるのは企業も同じだ。イケア、アップル、グーグル、マイクロソフトなどのグローバル企業は相次いで、使用電力の全てを自然エネルギーにすると宣言している。自然エネ100%を目指す企業組織「RE100」も結成され、ネスレ、ユニリーバ、SAPなど50社が参加している。

    米ハワイ州は2045年までに自然エネルギー100%を目指す新たな法律が成立した。州の発電事業者は2020年までに30%、2040年までに70%、2045年までに100%に電力を再エネから供給することが義務付けられた。

    昨年12月のCOP21でも、さらなる低炭素社会を目指すための道筋として自然エネルギーの活用が明確に位置付けられた。
    日本政府もエネルギー基本計画で「自然エネルギーのシェア13.5%(2020年)、約20%(2030年)」という目標を掲げましたが、原発政策との関係から、必ずしも自然エネルギー推進になっていないとの疑念がぬぐえない。

    オルタナ29号の第一特集「エネルギーと民主主義」(2012年6月発売)では、阿部守一・長野県知事が「自然エネルギーで『地域の自立』を」と題して、エネルギーの自立・分散による地域振興を訴えた。

    金子勝・慶應義塾大学経済学部教授も「中央集権はエネルギーから変わる」と題して、エネルギー構造の「創造的破壊」が地方と新産業に活力を与えるとの見方を示した。

    エネルギーと民主主義は深い関係にある。どの電力会社を選ぶかは、民主主義における、皆さんの「一票」でもある。最後にもう一度だけ問いかけたい。「安さだけで電気を選んでよいのでしょうか」。

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