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他社連携と生活者の巻き込みで実現へ――凸版印刷が本気で取り組むサーキュラー・エコノミー

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サステナブル・ブランド ジャパン編集局
(左から)大隅氏、高野氏、石井氏

1900年に創業した凸版印刷は、印刷テクノロジーを応用し「情報コミュニケーション」「生活・産業」「エレクトロニクス」の3つの事業をコラボレーションさせながら事業展開している。「Digital & Sustainable Transformation」を掲げ、DXとSXを掛け合わせて世界の未来づくりを支えるため、自らの突破力で社会に新たな価値を作り出していくことに取り組む「社会的価値創造企業」を目指す。

2019年に発表した「TOPPAN SDGs STATEMENT」では、「ふれあい豊かでサステナブルなくらし」をテーマにSDGsを経営戦略に統合。その中で「環境(サステナブルな地球環境)」「まち(安全安心で豊かなまちづくり)」「ひと(心と身体の豊かさと人のエンパワーメント)」を社会の重点的事業活動として設定し、環境分野ではサーキュラー・エコノミーの実現を大きな柱と位置付けている。

「点」に留まらず「線」として活動、さらに「面」としての活動へ

凸版印刷が推進するサーキュラー・エコノミーの実現とは、廃棄物や汚染などを極力発生させない製品・サービスを設計し、原材料や製品はその価値をできるだけ高く保ったまま循環させること、そして環境負荷と人々のウェルビーイング・経済成長をデカップリング(分離)させ、環境・社会・経済の両立を目指すことだ。

凸版印刷セミナー資料より転載
大隅氏

サーキュラー・エコノミーの実現でキーワードのひとつとなるのが「リサイクル」。凸版印刷は、リサイクルしやすい設計・製造、リサイクル材の製品活用による需要創出、資源循環をデータ化・可視化するトレーサビリティ、電子チラシサービス「Shufoo!」などによる生活者コミュニケーション、といったノウハウを持ち、サプライチェーンの各領域で価値を提供できるポテンシャルがある。生活・産業事業本部パッケージソリューション事業部サステナブルパッケージングセンター部長の大隅理奈子氏は、「当社が各事業で蓄積してきた技術・ノウハウや、当社事業の重要な要素でもある多くのパートナーとの接点をうまく組み合わせて、サーキュラー・エコノミー実現に向けた課題解決に挑戦していきたい」と話す。

高野氏

サーキュラー・エコノミーを推進するうえで見えてきたのは、業界内の連携や生活者へのアプローチをこれまで以上に強化する必要があることだった。そこで凸版印刷は、自社の活動を個別の製品・サービスの提供という「点」に留まらず、サプライチェーンを結び付けた「線」としての活動、さらに生活者をも巻き込み循環のループを完成させる「面」としての活動につなげたいと考えている。「サプライチェーン全体、他業種の企業、そして何より生活者を含めて取り組むことが必要です」と事業開発本部事業開発統括センター部長の高野裕子氏は力を込める。

凸版印刷セミナー資料より転載

パッケージ回収の実証実験で社内連携が進む

凸版印刷は、2022年9月から11月までイトーヨーカ堂の都内6店舗で、また同年10月から12月までは浦和レッズと協働しさいたま市内の4カ所で、使用済みのシャンプーや洗剤などの日用品詰め替えパッケージの回収をする「サステナブルGO!GO!プロジェクト™」を実施。専用の回収ボックスに小型サイネージを搭載し、ゲームによる取り組みへの興味喚起、参加率向上を促した。さらに「リアルDATAサイネージ®」により、参加者の立ち寄り数・滞在時間などのデータを取得し、店舗ごとの傾向も調査した。

※店頭での利用に適したさまざまなサイネージに搭載したカメラと顔認識技術を用いて来店者をトラッキング。年代など来店者の属性や、来店者数、滞在時間といった店頭での購買行動をデータ化し、取得したデータは独自開発のビューワーで検索・整理ができる。

情報コミュニケーション事業本部マーケティング事業部エクスペリエンスデザイン本部の石井冬萌実氏は、実証実験の結果について、「インセンティブでLINEポイントを付けたりしましたが、それだけではなく、消費者が環境配慮活動にとても関心があることがわかりました」と話した。

凸版印刷セミナー資料より転載
凸版印刷セミナー資料より転載

広告には動物のキャラクターを用いて、取り組みの気軽さを表現。また浦和レッズとの取り組みでは、回収ボックスをチームカラーの赤にするなど、デザインにも工夫を施した。結果、イトーヨーカ堂の店舗では合計72.6kg、浦和レッズとの取り組みでは20.9kgのパッケージを回収。ポイントがあるほうが、ない場合と比べて回収数が重量比で2.4倍になったという。またLINEを用いた分析では、アカウント数(参加者)の8割以上が女性であり、その中でも30代以上の女性が約8割を占めることがわかった。

石井氏

石井氏は、「やや回収数は当初の見込みより下回る結果となりましたが、実施期間中は増加傾向にあり、継続的な実施により、流通店舗における店頭回収は現在のスキームで目標値を達成できると思います」と取り組みに手応えを感じている。

この実証実験では、環境配慮型の包材設計・製造を担っている生活・産業事業本部が関わった軟包装材(詰め替えパッケージ)を扱い、生活者への告知やインセンティブ、店舗での行動把握、回収スキーム構築などを情報コミュニケーション事業本部が担った。また回収されたパッケージは、水平リサイクルに課題が多いプラスチック多層フィルムのマテリアルリサイクル技術開発のフィルム化テストに活用された。これらは、プラスチックのリサイクル・再商品化を実現する技術開発や社内の情報ハブの役割を担う事業開発本部が担当した。

これまでの事業は各部署内で業務が完結することが多かったが、サーキュラー・エコノミー実現のために社内での連携が進んだという。「今回の実証実験は未だ通過点ではありますが、各部門がそれぞれの強みを活かし、主体的かつオープンに活動が出来たことは、社内での大きな成果となりました」と高野氏は振り返った。

サーキュラー・エコノミー実現に向けたさまざまな課題について議論

凸版印刷は22日に、取り組みのさらなる連携や波及を目指し、サーキュラー・エコノミー実現に向けたさまざまな課題を検討・議論するSXセミナー「つなぐ力・むすぶ力~サーキュラー・エコノミー実現に向けての『連携』のあり方~」をオンラインで開催した。「連携」や「生活者の巻き込み」といった問題を提起し、循環経済パートナーシップ(J4CE)事務局/公益財団法人地球環境戦略研究機関 持続可能な消費と生産領域 上席客員研究員の西山徹氏とライオン サステナビリティ推進部の中川敦仁氏が登壇した。

3Rから循環経済への移行では「環境配慮設計」の考え方が大事

凸版印刷セミナー資料より転載

西山氏は「サーキュラー・エコノミーを取り巻く内外動向」と題して、日本の3Rの歴史についてふれ、3Rから循環経済への移行では「環境配慮設計」の考え方が非常に大事だと強調。またEUと日本の循環経済政策を比較し、「EUは経済政策が中心で雇用などが重視されているが、日本の3Rは廃棄物処理政策の延長上にあり、リサイクルが重視されてきた」と分析した。

『お互い様』の精神で協働促進を

凸版印刷セミナー資料より転載

ライオンの中川氏は、自社におけるプラスチック資源循環の考え方と、同業他社間の協働などについて紹介した。同社は昨年5月に「ライオングループ プラスチック環境宣言」を策定。5つの項目を設定したが、「その中でも『生活者との協働』がもっとも大事」だと強調する。また中川氏は、「社会課題の解決は個社では難しい。『お互い様』の精神で協働し、全体を見ることで解決が進むのではないか」と結んだ。

プレイヤーをつなぐ役割を担いサーキュラー・エコノミー実現に寄与したい

凸版印刷セミナー資料より転載

続いて高野氏が、循環経済の実現には、ステイクホルダー間に見られる種々の「分断」を解決していく必要があること、また生活者の自分事化や行動変容などの啓発が必要であることを説明。そして、「当社は多様な製品とサービスを事業としており、各サプライチェーンに価値の提供が可能。サーキュラー・エコノミーとの親和性が非常に高く、プレイヤーをつなぐ役割を担い実現に寄与したい」と決意を表明した。

これを受けて西村氏は、「凸版印刷は、素材からデジタルコンテンツまで、非常に幅広い業態だと認識した。社内の連携で生み出せる要素が多くあるはず。新しいアイデアで推進してほしい」。

中川氏は、「資源循環を『輪』として考えると、凸版印刷はコンバーター(製品設計)であり、さまざまな資源循環の輪に関わっていける稀有な存在。こちらの輪でできたイノベーションを別な輪に共有する役割を担ってほしい」とそれぞれ、凸版印刷の取り組みに期待を込めてエールを送った。

(撮影・原啓之)